ウミトロンとENEOSが業務提携し、ブルーカーボン事業に乗り出す、そんなニュースが報じられた。

ウミトロンは、これまで水産養殖において、テクノロジーを活用したさまざまな取り組みを手掛けてきたベンチャーだ。

そして次は、海藻類の養殖を対象としたテクノロジーの開発に着手し、ENEOSと共にブルーカーボン事業に参入するようだ。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

ブルーカーボンとは?

ブルーカーボンをご存知だろうか。海中に生息する海藻類などが海水に溶け込んだCO2を取り込んだ結果、海藻類に固定、貯留されたCO2のことを言う。

またブルーカーボンという用語は、このような海藻類がCO2を固定、貯留すること、仕組みのことを呼ぶケースもある。

下の図がとてもわかりやすい。空気中のCO2を海水を通じて、アマモ、ガラモ、コンブなどの海藻類が取りこんでくれるので、CO2の削減になり、また海藻類から光合成プロセスによりO2も放出してくれるのだ。

ブルーカーボンは、海中のなかだけではなく、マングローブなど浅瀬に生息している植物に対しても使われる用語のようだ。

  • ブルーカーボン

    ブルーカーボン(出典:ENEOS、ウミトロン)

余談だが、ブルーカーボンとはこのように海の中の海藻類に対する用語であるが、一方で、空気中の植物に対しては、グリーンカーボンという用語を使う。ブルーカーボンはグリーンカーボンと比べて、最大で40倍の速さで炭素を貯蔵するというから驚きだ。

ウミトロンとENEOSのブルーカーボン事業とは?

石油事業で知らないかたは皆無であろうENEOSは、すでにブルーカーボン事業に参入している。

そのため、これまでの取り組みにおいて、ブルーカーボン領域の独自のノウハウやブルーカーボンのクレジット化についての強みを持っている。

一方で、ウミトロンは、水産養殖において、IoT、AIなどのテクノロジーを活用して斬新な取り組みを手掛けてきた日本が誇るベンチャー。

これまで培ってきたノウハウや強みをブルーカーボン事業に活かそうというのだ。例えば、衛星データを活用した水産養殖向け海洋モニタリングサービス「UMITRON PULSE」の活用が考えられると言う。

この「UMITRON PULSE」による長期データを活用することで、ブルーカーボン生態系の1つである海藻類の生育適正域の算出に利用することができるのだ。

  • 水産養殖向け海洋データサービス「UMITRON PULSE」のデータ

    水産養殖向け海洋データサービス「UMITRON PULSE」のデータ(出典:ウミトロン)

ウミトロンは、ENEOSから同社が先行研究してきたブルーカーボン領域でのノウハウの共有や、ブルーカーボンのクレジット化のサポートなどを得ることで、共同事業に取り組んでいくという。

いかがだっただろうか。ウミトロンは、水産養殖のみならず、この養殖事業で培い、開発したテクノロジーを使ってカーボンニュートラル事業に参入する。

日本の多くの企業が悩んでいる新規事業の開発、参入に関して、お手本、参考にしたい事例ではないだろうか。

そんな視点でもわたしはこのニュースを拝見している。今後のウミトロンのブルーカーボン事業に注目していきたい。