2022年2月4日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と東京大学の大気海洋研究所、水産研究・教育機構らの研究グループは、魚の眼球からその魚が稚魚のころからどのように生活してきたのかという生態を解読する方法を開発したと発表した。
この方法は、眼球に水晶体を持つすべての海洋生物に対して適用可能な方法であり、今後の海洋生態学に大きな発展をもたらすかもしれないという、そんなすごいニュースだ。今回はそんな話題について紹介したいと思う。
魚の眼球から生活史を解読する方法とは?
JAMSTEC、東京大学らの研究グループが発見した、魚の眼球にある水晶体からその魚が辿ってきた生態を解析できることができる方法とはどのような方法だろうか。
実は、魚の目の水晶体は、木の年輪と同じようにその魚の生活史を記録しているという。魚が卵の中にいるときからこの水晶体の形成は開始されていて、その水晶体には、餌から得られる「フェニルアラニン」というアミノ酸がまるで玉ねぎの皮のように層状に成長しながら時系列に形成されていくというのだ。
眼球の水晶体は、新陳代謝がないため、このフェニルアラニンは、水晶体の層状に残っていくのだ。水晶体の中心部ほど古いものになっているという。
JAMSTECが、魚の水晶体のフェニルアラニンを剥ぎ、剥いだフェニルアラニンを解析することで生活史を解読する方法を解説した動画を公開しているのでぜひご覧いただきたい。 余談だが、眼球の水晶体は、驚くほど玉ねぎそっくりな構造している。
研究グループは、マサバの眼球の水晶体のフェニルアラニンの窒素同位体比を分析し、分布海域や採餌履歴を推定することに成功。
これにより、稚魚期は窒素同位体比の低い亜熱帯海域である伊豆半島沖付近で過ごし、成長と共に窒素同位体比の高い亜寒帯海域の三陸沖方面へ移動してきたというマサバの典型的な回遊行動を確認することができたという。
いかがだっただろうか。
海洋生物の生態は、陸上生物と比較して、まだ十分に解明されているわけではない。
魚をはじめとする海洋生物は、広大な海洋を3次元的にそして、長距離移動するため、観察が難しく、近年、GPSなどをの装置を魚に取り付けてバイオロギングする方法があるが、これらの方法は装置を装着できる魚のサイズやバッテリーの寿命などに制限があるいうデメリットがある。
今回の方法は、このような外部装置に依存せずとも海洋生物の生態を解明することができる点にメリットがあるのだ。そして、魚のみならず、水晶体を持つすべての海洋生物に適用可能な手法であり、海洋生態学に大きな発展をもたらすかもしれないすごい手法なのだ。