「Fintech」という言葉で連想されるサービスの一つに、個人向けの資産管理や投資領域において、ロボットアドバイザーが人間のコンシェルジュに代わってユーザーをサポートしてくれるアプリケーションがあるでしょう。
BtoBの取引やバックオフィスの現場においても同様、人とお金の関わり方を変えるFintechとして、ロボティクスを活用した取り組みが進んでいます。生産性の向上や人材難に対するソリューションとして、定型的な作業を中心に、人に代わって業務を行うロボットが注目を集めています。
こうしたバックオフィス分野における新しい業務自動化の取り組みは、ロボティック・プロセス・オートメーション、通称「RPA」と呼ばれており、専門的な知識を要する上、企業内部においてとりわけ人手不足に陥りがちな経理業務を自動化する取り組みにおいて活用が進んでいます。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは?
RPAとは、定型的な作業に加え、これまで人間のみが可能とされいていた高度な作業を一部代替する、業務自動化ソフトウェアを指します。 主に生産ラインで人間の肉体作業の効率化を目的とした物理装置としてのロボットと区別するため、人間の知的労働を補完するバーチャルな存在として仮想知的労働者(Digital Labor)とも呼ばれています。
RPAはプログラミングを必要とせず、情報入力やAI・認知技術を用いて業務のオートメーション化を実現するため、低コストで業務の標準化や集約化を推し進めることが可能です。24時間365日働く圧倒的なコストメリットを背景に、RPAを導入した企業の内部では、リソースの再配分が進められています。
RPAはお金にまつわる業務をどう支えるのか?
現在のRPAは、過度な期待に対し概念先行の状態にあると言われています。一方で、正確性とスピードを武器に、下記の企業のお金にまつわる業務の自動化に効果を発揮すると考えられています。
- 繰り返し発生する請求などの定型業務
- 課金管理などミスが大きな損失につながる作業
- 複数の作業員が必要とされている消込などの業務
- その他データ入力など単純作業
RPAの導入を検討している企業への調査では、主に属人的な手作業によるミスの削減や、業務オペレーションの構築に関する事項がトップに来ていることがわかります。
RPAに期待するメリット 出典:"INSIGHTS FROM EARLY BPO ADOPTERS OF ROBOTIC PROCESS AUTOMATION" Phil Fersht Charles Sutherland Feb 12, 2015 |
その他にも、圧倒的なコストメリットは無視できません。 RPAのコストは正社員の人件費の10%、アウトソーシングした場合に比べてもおよそ3分の1になることが明らかになっています。
以上のことから、正確性とスピードが求められる企業の経理分野において、低コストを背景に実作業を担う形でRPAが浸透していくことでしょう。
また、近い将来、RPAに搭載されるAIが高度化し、RPAへの搭載が進んでいくと、企業ごとに異なる業務オペレーションを自律的に学習し、より幅広い領域でオートメーション化を推進していくと考えられています。RPAは最終的に、定型的な作業の代替にとどまらず、業務フローの分析、改善、業務オペレーション設計のアシストまで、自動化可能な分野を広げていくことが予想されています。
RPAで変わる経理担当者の役割
企業内部のコスト構造が大きく変化した今、企業のお金を扱う担当者の役割にさらなる変化が生じています。
これまでにも、経理担当者の役割は、会計ソフトをはじめとした業務管理システム、近年ではクラウドサービス登場によって変化を続けてきました。私たちは、さらなる変化に直面した経理担当者が、今後情報システムの領域へスライドしていくとみています。
具体的には、記帳作業といったキーパンチャーとしての役割をロボットへと移行していくことを自ら推進しつつ、ロボットから出力された正確なデータから、下記のように経営の意思決定に深く関与していくことが求められているのです。
- 管理会計の導入により企業の意思決定へ参画
- 節税対策のプランを組み立て
- 税務リスクの判断を行う、キャッシュ・フローの最適化
- BIツールの導入による経営の見える化
今後はさらに、RPAを含めた業務オートメーション化を推進する立場となっていくでしょう。ベンチャー企業などでは、既にCFO(最高財務管理責任者)がCIO(最高情報責任者)を兼務する例が見られ始めています。
次回はRPAについて、より具体的にどのようなサービスが存在するのか、ご紹介してまいります。
Cloud Payment マーケティング部
田端佑也
株式会社Cloud Paymentに新卒で入社後、継続請求管理ロボット「経理のミカタ」のブランディングやコンテンツライティングなど、マーケティング領域を担当する。現在では、経理のミカタに加え、オンライン決済サービスを含めた全社的なマーケティング、広報、経営企画にも携わる。