「Fintech」が既存の金融機関を脅かし、さまざまなFintechベンチャーの登場や、関連銘柄に多額の投資が集まる以前から、私たちとお金の関係が常に様変わりを続けてきたことは皆様もお気付きのことでしょう。

1998年のPayPalの登場以降、多彩な特徴を持つ決済システムの登場が相次ぎ、多くの人や企業がクレジットカードを利用したり、オンライン上で決済ができるようになりました。近年では、現在の一般消費者をめぐる決済の領域では、個人間決済やフリマアプリといったモバイルCtoC領域のサービスが流行し、話題となっています。

その他にも実店舗やECサイト向けに簡単かつ超低コストでオンライン決済システムを提供するサービスが登場するなど、企業と消費者、または消費者どうしをつなぐ決済サービスが、消費者とお金の関係をより密接なものとしています。

クラウドやモバイルの登場で、一般の消費者が「決済」というものに触れる頻度が増え、より強く認識し始めた一方、実はみなさんの多くが一日の大半を過ごしているオフィスでは、まさに逆方向の進化が始まっていることはご存じでしょうか?

テクノロジーが企業のお金にまつわる業務を目に見えないところで日々代行し、企業に所属する人々が、「お金のやりとり」に接する頻度が日に日に少なくなっているのです。

お金のやり取りが意識されない世界とは?

もちろん、金銭のやり取りや商取引そのものがなくなるわけではありません。これは、売掛代金の徴収や入金確認作業、代金の支払いといった経理・会計分野の実務の担い手が、人間からテクノロジーへと移行し、人間は最終的に出力された結果のみを確認すればこと足りるということを指しています。

世の中のテクノロジーのトレンドがクラウド・モバイルから次のフェーズへと移行するにつれ、実際に経理・会計システムの導入をお手伝いする際にいただくご要望も、「業務管理」から「業務のオートメーション化」へと変わってきていることを感じています。

その中でも、AI・ロボティクスの分野は、企業間のお金のやり取りを仲介する新たな存在として注目を集めています。特にオフィスワークにおいては、その企業独自の業務管理プロセスを学習し、非定型的な業務も代行可能なロボットが近年注目を集めており、早くも自社に取り入れる先進的な企業も現れ始めています。

オフィスワークに生じる変化~ex)代金回収業務~

では実際に企業のお金にまつわる分野でどのような変化が生じるのでしょうか?企業のキャッシュフローを大きく左右する代金回収業務を例にご説明してまいります。

<売掛金回収業務のイメージ>

手作業による代金回収業務

ここでは、特にシステムの活用を前提としない手作業での業務プロセスをご紹介します。主に経理部と営業部(事務担当者)の連携によって成り立っており、企業によって独自色の強い属人化しやすい部分でもあります。

まず、顧客データベースにある情報をもとに今月の請求金額分を計算し、請求書を作成します。作成次第、プリントアウトし郵送します。企業によってマチマチですが、請求書の作成は営業担当自ら行っており、貴重な外回りの時間を削って事務作業に充てているケースが多く見られます。

そして経理は、取引先からの振り込みを待って、銀行入金明細書を手に、PCの画面に映し出されたエクセルと入金を突き合せ、チェックします。経理のご担当者なら特に共感いただけるポイントだと思いますが、中堅規模の企業ともなると、数千項目にものぼるリストを目視で入金確認作業を行わなければなりません。経理業務のうち、入金確認だけで月末に数日費やすことがザラである上、見落としなどミスが出やすい作業でもあるため、対策として、他の経理担当者とダブルチェックを行う企業も見受けられます。

期日切れの未入金が見つかれば、営業担当に連絡しメールや電話にて入金催促をさせます。営業担当者の心境として、取引先との気まずいやり取りは可能な限り回避したいもの。面倒な作業に加え、こうした嫌なお願いばかりしてくる経理部の人間に対してネガティブなイメージを持ってしまうことも少なくありません。上記で述べた作業が毎月繰り返されるのですが、多くの取引先を抱える企業になると、代金徴収だけで専任の担当者を置くケースもあり、たくさんの人の工数を割いている業務プロセスであると言えます。

AI・ロボティクスによってオートメーション化された代金回収業務

2014年に発表された、「イギリスにおける1/3の仕事は次の20年で自動化されるリスクに晒されている」というオックスフォード大学とデロイト社の調査は国内でも話題になりました。(引用:One-third of jobs in the UK at risk from automation)売掛金回収業務についても、同様にAIなどのテクノロジーによって業務が自動化される時代の到来が予想されています。

例えば、請求書などはすべて電子化され、期日になると自動で取引先の元へ送信されます。また、AIによる自動審査の元、企業間の取引においても信用取引が主流になり、取引先からの入金を待つことも、期限切れ未入金の催促のメールや電話をすることもありません。そして、多くの時間をかけていた入金の確認の作業はロボットが99%以上の高い精度で代行。日次の売上や入金の結果はきれいに仕訳、整理され、リアルタイムで全関係者に共有されています。

ここまで、企業間プロセスの代金回収から入金確認の部分を例に、二つのケースを比較してみました。全てが手作業だった前者に比べ、後者では企業のお金のやり取りに人間が介在することはまったくありません。

企業間のお金のやり取りはシステムがバーチャルで処理し、企業は資金繰りの心配から切り離され、経理担当者が日頃資金繰りに頭を悩ませることもなくなるでしょう。

そして、上記で述べた後者のケースの7割近くは現存するサービスで既に実現されている事でもあります。簡単な記帳作業の大部分はクラウド会計システムが自動化しつつあり、そして、バーチャルなロボット(Digital Labor)がオフィスワークを代行する、RPA(Robotic Process Automation)と呼ばれる新たな概念をもつシステムが国内でも積極的に取り入れられ、ルーティンワークを大幅に削減することに成功しています。

代金回収業務は、営業部とコミュニケーションを取りながら、1円の間違いも許されない会計と密接に関わるストレスフルな業務である上、郵送の封入作業など人手のかかる作業の多いとても退屈なルーチンワークの連続であることから、企業内部におけるシステムを活用した業務効率化の動きが活発になっています。

次回以降は、このような世界を可能にするオフィスワークでもちいられるAI・ロボティクス領域RPAと、その取り組みについてご紹介します。

Cloud Payment マーケティング部

田端佑也

株式会社Cloud Paymentに新卒で入社後、継続請求管理ロボット「経理のミカタ」のブランディングやコンテンツライティングなど、マーケティング領域を担当する。現在では、経理のミカタに加え、オンライン決済サービスを含めた全社的なマーケティング、広報、経営企画にも携わる。