企業経営を成功させるには、お金の流れを把握することが不可欠です。会社によっては、帳簿や試算表の作成を税理士・会計士事務所に任せきりというケースもあるかもしれませんが、経営の舵取りを誤らないためにはやはり社内で会計データを作成・管理しておくべきでしょう。

そこで本連載では、帳簿を作成したことがない経営者/経理担当者に対して力添えをすべく、会計ソフトを使って会計実務を進める方法について解説していきます。

3ヶ月間有効な無料体験版が提供されている「財務応援Lite」を使用し、実際の操作手順も示していきますので、皆さんもご自身のパソコン上で試しながら、学習を進めてみてください。

20年前の会計ソフトは……

パソコン上で動作する会計ソフトができてから、20年以上の歳月が経っています。最近では、オフィス業務にパソコンは不可欠ですが、その先陣を切ったのが会計ソフトと言っても過言ではないでしょう。中小・零細企業の会計は税理士が帳簿を作成しているケースも多く、以前の会計ソフトは税理士事務所用のシステムとしての認識が強かったと聞きます。

私が起業後、初めて会計ソフトを導入したのは、およそ20年前「AS400」というオフコンのシステムでした。導入費用は1000万円程度だったのを覚えています。現在のパソコンの会計ソフトは、20年前の1000万円システムよりも、(当然ですが)はるかに高い機能と操作性を持っていて、そのなかでも、エプソンの「財務応援Lite」は低価格(標準価格31,290円)ながら、多機能で操作性に優れ、最も評価の高い会計ソフトの1つです。税理士など、会計のプロからも認められている点は大きな特徴と言えるでしょう。

導入前のチェックポイント(1) - 処理能力

まずは、会計ソフトを導入する際にチェックすべき箇所について触れておきましょう。

最初は処理能力です。財務応援LiteのWebサイトを見ると、以下のような表が掲載されています。

財務応援Liteの処理能力(財務応援Liteのホームページより)

年間仕訳数999,999件、勘定科目数617科目、金額11桁、部門数10、仕訳入力月数16ケ月(通常12ケ月、決算月、翌期3ケ月)ですから、中小・零細企業では十分と言えるでしょう。

さらに出力帳表には、仕訳帳や元帳、試算表等の主要簿/決算書は当然ですが、売掛金・買掛金集計表、資金繰り管理、手形管理、経営分析、部門管理、予算管理など、さまざまなものが用意されています。また、仕訳データの一括変換や仕訳テキストデータの取込、Excel連動など、運用上非常に便利な機能も搭載されています。

加えて、導入の容易性(初めて会計ソフトを導入する方や、他のソフトから移行する方にとっての)も大きな特徴として挙げられます。

導入前のチェックポイント(2) - 業種別テンプレート

もう1つ、会計ソフトを導入する際にチェックしなければならないのが、勘定科目とそのコード体系です。

会計ソフトの導入には、他のソフトから移行するケースもありますが、こちらの場合、過去の会計データのことを考えると、勘定科目はできるだけ同じ科目を継続したいものです。また、入力者の立場からは、せっかく覚えたコード体系が変わって、入力業務が煩雑になるのではないかという懸念が生じます。

さらに、会計で使用する勘定科目には、業種によって特殊な科目が多くある点も頭に入れておかなければなりません。普段その科目を利用している方にとっては特殊でもなく、ごくごく普通の科目ですが、新規に導入する会計ソフトにその科目が用意されているとは限らないのです。

「財務応援Lite」では、業種別テンプレートとして、次の8業種の科目が用意されています。

  • 不動産業
  • 建設業(簡易)
  • 生保
  • 損保業
  • 農業
  • ホテル/旅館業
  • 理容/美容業
  • 診療所/クリニック

それぞれの業種で設定される勘定科目(一部のみ)を見てみましょう。

不動産業 家賃預り勘定、預り権利金、保険預り勘定、仲介手数料収入、管理手数料収入、補修工事収入、更新手数料収入、不動産売上高、補修工事費、支払仲介手数料
建設業 完成工事未収入金、工事未払金、未成工事受入金、前受金、完成工事補償引当金、完成工事高、兼業事業売上高、完成工事値引高、期末未成工事支出金、期末未成工事(未成振替)
生保・損保代理連 普通預金(生保)、普通預金(損保)、保険預り勘定(生保)、保険預り勘定(損保)、保険代理店収入(生保)、保険代理店収入(損保)、仕入高
農業 売上高、水稲売上、燃料費、肥料費、稲苗費、農薬・衛生費、リース料、外注費、素蓄費、飼料費
ホテル・旅館業 クレジット、補助券、クーポン、奉仕料、入湯税、燃料費、クリーニング費、興業費、花代、清掃料
理容・美容業 レンタル売上、レンタル仕入高、社員教育費、サービス費、衛生費、清掃委託費
診療所・クリニック 保険未収金、医薬品、診療材料、社保窓口収入、国保窓口収入、社保請求収入、国保請求収入、医療消耗品費、衛生管理費、医業外収益、医療費減免額

これらの業種別勘定科目は、財務応援Lite導入後の初期設定でテンプレートを適用させて、すぐに利用することができます。また新規導入時の設定では、業種・処理期間などの簡単な基本情報を入力するだけで、伝票の入力業務がスタートできます。

勘定科目などの項目や残高の設定処理は、結構面倒で時間がかかるものです。財務応援Liteでは入力開始後でも追加・修正が可能なので、導入時の作業は時間をかけずに初期設定のままで済ませ、とりあえず「どんどん使ってみる」というように利用できます。

次回は、実際にインストールしながら導入の流れを見ていきましょう。