病院で感じたタブレットPCの可能性

知人はiPadを購入して以来、PCの電源を入れなくなったと言います。サイトの閲覧、メールチェック、動画再生など、iPadで事足り、その感覚的な操作性の高さから、従来のPCの操作が煩わしく感じるというわけで。

私もiPadに興味はあります。母が脳梗塞で入院した病室にあった1人1台用意されたテレビ兼PCはタッチパネルで操作するもので、今後の高齢化社会にタブレットPCが広げる可能性を感じています。

そこで、オンラインのApple Storeをチェックしてみました。無線LAN接続だけのWi-Fi 16GBモデルで4万8,800円。「どうせなら最大容量の64GBに」とすると6万8,800円。そう言えば、MacBook Airの新型は11インチで8万8,800円。でもプロセッサは1.4GHzで、使用中のMacBookよりもスペックが低い。さらに、「どうせならProの17インチ」となると19万8,000円。冷やかしにiMacもチェックしてみると、クアッドコアの27インチが17万8,000円。

「いやいや、iPadとiMacはそもそもコンセプトも用途も異なるもの」と、iPadのページに戻ると10インチ弱のその画面が貧弱に見え、私が下した決断は日本人のお家芸である「先送り」でした。

意外な場所で"iPad"を発見

iPadとMacを比較したのは、「仕事」の道具としての値踏みです。独立して商売が安定してきた頃の話です。毎週少しずつパーツを揃えていく付録雑誌「週刊リアルロボット」を定期購読し、遅々として完成しないロボットに溜息をつきつつも意地になり最終刊まで揃え、総額は10万円を超えました。

すると、全巻「コンプリート」した達成感が製作する興味を奪い、3分の2以上が袋も破かれることなく廃棄された過去から、私は「趣味」での物品購入に臆病です。また、チョロQサイズのラジコン「ラジQ」や手のひらサイズのラジコンヘリコプター(2台)も買ったその日に少し遊んだだけで、押し入れの肥やしになりました。

どうやら私には、「仕事」の道具に使えないものは手に入れた途端、飽きてしまう習性があるようです。

正月、親戚周りの帰りに寄ったパチンコ屋の景品コーナーに"iPad"を発見しました。よく見ると、Androidを搭載した類似品で、パッケージには「インターネット」「Wi-Fi通信」「液晶画面縦・横向き自由自在」とあります。目玉商品に位置付けられており、5台限定で交換玉数は1台2,500玉。玉を借りてそのまま交換すると1玉4円の貸し出しで1万円。ココロは動きましたが、飽きっぽい性格を自覚しており、衝動買いはしないと店を後にします。

パチンコ屋の景品として飾られていたAndroid搭載タブレットPCのパッケージ

いざ、戦いの「海」へ

一度下した決断を振り返るのは、別れた彼女にいつまでも未練を覚える男の女々しさです。ネットでチェックすると、パチンコ屋の"iPad"の実売価格は1万2,800円でした。1万円ならお得です。よい言い訳ができました。

そして翌日、「出陣」しました。パチンコ屋に来る客がiPadに興味があるわけがないとタカを括っていたのですが、景品置き場に残るはあと1台。焦りから鼓動が早くなり、「新台」と札が欠けられている「新海物語 with アグネス・ラム」に座ります。

亀の図柄で大当たりし、確変をゲットしました。確変とは次回の大当たりが約束された状態で、継続することも多く、私はその昔「CR花満開」で27連チャン(連続大当たり)を経験したことがあります。次の大当たりは「鮫」で、確変は終了、いつもなら悔しいところですが、私の狙いは"iPad"です。大当たりが終了すると、すぐに出玉を集計して景品カウンターに小走りします。

「展示品のみになりますが」

恐縮そうに説明するカウンターの女性に笑顔でこたえて、めでたく"iPad"ゲットです。

お得と言えばお得でしたが……

念願叶って手に入れた"iPad"に電源を入れます。すると「機動戦士ガンダム」に登場したホビーロボット「ハロ」を上下半分に切り、おざなりなボディを装着したAndroidのキャラクターが登場します。

電源投入後、姿を現したAndroidのキャラクター。嫌な予感がする

コレジャナイロボに比肩するキャラの緩さに悪寒が走ります。コレジャナイロボとは、「欲しかったのはこれじない」をコンセプトとする、昭和時代によく見かけた偽物おもちゃのパロディ商品です。

充電を待つのももどかしく、電源コードを挿したまま操作します。まずブラウザからはYouTubeを見ることができません。インターネットの閲覧はできますが、処理速度が遅く、20世紀のインターネットを見ているかのようです。

次に、どこかで見たことがあるようなバイクゲームを見つけダウンロードしましたが、処理速度の遅さはここでも致命的で、バイクというより幼稚園児の三輪車です。しかも、画面上のアクセルボタンを押しながら、画面左上のハンドルを操作してもコントロールできません。

余談ですが、あまりの苛立ちに「Wii」のバーチャルコンソール(過去のゲームをダウンロードできるサービス)で完全オリジナルのエキサイトバイクをダウンロードするために、妻のクレジットカードを使ったことはいまだに秘密です。

最後にチャレンジした「Piano」の音質は乳幼児向けのちゃぶ台型ピアノ程度であり、それだけならまだしも、鍵盤を叩いた0.5秒後に音が鳴るようでは演奏もままなりません。Androidのバージョンは1.6でマルチタッチに対応しておらず、画面を2ヵ所以上同時に押下するソフトは使えないのでした。

左から、デスクトップ画面とゲーム「Piano」の画面。Pianoの音は鍵盤を叩いてから0.5秒後に鳴り、山でこだまを聞いているようだ

これをパチンコ屋の戦利品として持ちかえり、プレゼントされた子供の心に残る偽物感は「コレジャナイ iPad」。しょせん景品と言えばそれまでなのですが。

ちなみに、YouTubeは専用アプリをダウンロードできましたが、そもそもアプリのダウンロードもマイクロSDカードを挿しておかなければなりません。「コレジャナイ iPad」だけでできることは画面表示に時間のかかった20世紀のインターネットぐらいです。最後に……「コレジャナイ iPad」をゲットするために使った金額は内緒です。

Webブラウジングだけは辛うじてできた。ただし、画面表示には時間がかかった

今回の情弱ポイント

安物買いの銭失いはタブレットPCにも通じる