ソリューション"ベンダ"からソリューション"プロバイダ"へ
デルがソリューションプロバイダへの転換を加速させている。
それは、先ごろ発表された米デルの2010年1月末締めの2010年度決算において、サービス領域における売上構成比が着実に高まっていることからも裏づけられる。2009年度には9%だったサービス事業の売上構成比は、2010年度には11%に拡大。前年比5%増と、カテゴリ別では唯一成長を記録した。とくに第4四半期(2009年11月から2010年1月)には、前年同期比51%増という大幅な成長を遂げ、売上構成比も13%に高まっている。
デル日本法人のジム・メリット社長は、「これまでのデルに対するユーザーのイメージは、購買、サービスといった領域を対象にしたソリューションベンダという捉え方。ハードを提供して、それに伴う付帯サービスを提供するというものだ。しかし、現在のデルは、コンサルティング/提案、購買、導入、運用管理、サービスという顧客がITに接する各場面において、世界規模でソリューションを提供する企業へと広がりを見せている」とする。2008年に買収したストレージのイコールロジックに加え、2009年にはペローシステムズを買収したことでコンサルティング領域にも事業を拡大できる体制が整ったことも、包括的なソリューション環境を実現することにつながっているといえよう。
そして、この動きはこれからも加速するとコメントする。
というのも、デルでは、これからの時代を「バーチャル時代」と定義し、1950年代ののメインフレーム、60年代のミニコンピュータ(日本ではオフコン)、80年代のPC/クライアント時代、90年代のインターネット時代という変遷の先に訪れる、2010年代の新たな要素と位置づけ、「仮想化、クラウド、ユビキタスといった活用が広がることで、バーチャルで統合されたソリューションが求められるようになる」としている。
デルは、「Open(標準技術)」「Capable(十分な能力)」「Affordable(購入しやすい)」というコンセプトのもとで製品、サービスを開発し、これを顧客企業のイノベーションと効率性を実現するために、ソリューションとして提供する姿勢を崩さない。
Efficient Enterprise Ecosystem(E3)と呼ぶ、新たな時代に向けたエコシステムも、パートナーを巻き込んだ形で、同様の観点からデスクトップ、データセンター、クラウドの3つの領域で取り組むためのフォーメーションだ。
さらにデルでは、4月1日付けで、「インテリジェント・データ・マネジメント」と「クラウド・インフラストラクチャ・ソリューション」を発表。インテリジェント・データ・マネジメント・ソリューションでは、最新の重複排除機能を搭載したDell|EMCのストレージ製品と重複排除コンサルティング・サービスや、データ・アーカイビング・コンサルティングなどを提供することで、ストレージ、ソフトウェア、データ管理サービスを組み合わせた提案を行うほか、クラウド・インフラストラクチャ・ソリューションでは、これまでの世界最大級のクラウド・サービス・プロバイダへの導入実績をもとに、クラウド・コンピューティング向けに専用設計した「Dell PowerEdge C」シリーズを開発。検証済みのクラウドソリューションとして提供するという。
「今回の製品およびサービスの投入により、新たな時代に向けたフォーメーションが整った。デル自身が大きく変革したことで、これが実現できるようになった」とする。
新しいロゴに込められた想い
実は、新たな時代への対応は、製品、サービスだけではない。
まだ声高にアナウンスしているわけではないので気がつかない人も多いが、デルは新年度から、新たなロゴを採用しているのだ。
基本的なロゴは、白地に青い丸のなかに、青い文字でDELLの文字が描かれる。DELLの文字そのものは変わらないため、変更に気がつかない人も多いが、今後、製品やカタログ、名刺にも、丸で囲まれた新たなロゴが使用されようになる。
現時点では、日本法人においては、ジム・メリット社長の名刺も、新たなロゴが刷り込まれたわけではないが、「早い段階で新たなロゴを刷り込んだ名刺に変わる」と、ジム・メリット社長自身も明らかにしている。
また、ロゴの変更にあわせて、「Dell MUSEO for DELL」という新たなフォントも用意し、今後、同社のプレゼンテーションにも、このフォントが利用されることになる。
ジム・メリット社長は、「デルに対しては、まだまだ直販のイメージや、ハードウェアプロバイダというイメージを持った人が多い。デルがソリューションプロバイダに変わったということを知っていただくという点でも、新たなロゴへの変更は意味がある」とする。 バーチャル時代のソリューションプロバイダに脱皮するという想いが、この新たなロゴのなかに込められているのだ。