この連載は、ECの現場で支援するコンサルタントが「最新の業界基礎知識」をお伝えするものです。ECのことを一から学びたい新人担当者はもちろん、「売上げアップ」の課題を持つ担当者も、取り組みのヒントを見付けることができると思います。
第1回目は、楽天市場やAmazonなど各モールの特長を踏まえつつ、日本のEC市場の最新基礎知識を学んでいきましょう。
100人のうち、98人を捨てますか?
皆さんは、ネットで買い物をするとき、どのサイトで商品を探しますか? 先日開催したセミナーで聞いたところ、100人中50人が楽天市場、48人がAmazon、2人がGoogleと答えました。この数字は、現在の状況を的確に表していると思います。ネットで買い物をするとき、Googleで商品を探すユーザーは、本当に少なくなりました。
その理由は、各モールがユーザーをうまく囲い込んでいること。
楽天市場にはスーパーポイントが、Amazonにはアマゾンプライムがあり、各ユーザーにとっては、それぞれのモールで購入したほうが特典が受けられたりなどのお得感があります。しかも、モールには、レビュー機能など買い物を後押ししてくれる情報がたくさんあります。一方、Googleは「白いシャツを買いたい」と思って検索しても、あまりいい答えが返ってきません。それならば、値段まで教えてくれて、在庫までも分かるモールで買ったほうが、良いわけです。
今の日本のEC市場で成功するには、モールを外すということはありえない行為だと断言できます。モールに出店せず、独自ドメイン店だけで運営するのは、先のセミナー参加者で言えば、100人中98人を捨て、2人を相手に商売をするようなものです。これからECの運営を行う場合も、すでにECの運営を行っている場合も、「モールへの出店は必須だ」と認識してください。
世界的に見ても珍しい「楽天市場の存在」
では、どのモールを選ぶべきなのでしょうか。日本にはさまざまなモールがありますが、まず外せないのが日本最大の売上げを誇る楽天市場です。2013年の楽天の国内EC流通総額は約1兆7334億円で、小売EC市場の約3割を占めています。
楽天市場は、世界的に見ても珍しい存在です。なぜかといえば、Amazonに負けていないからです。GoogleがYahoo!JAPANを凌駕したように、Facebookがmixiを凌駕したように、海外のサービスによって、日本の多くのサービスは駆逐されてきました。Amazonも世界中で、各国のサービスを駆逐してきました。日本では、そのAmazonに対し、楽天市場はどっしり渡り合って負けていません。
Amazonは、常に仮想敵を作り、その敵の売上げを徹底的に奪う戦略でシェアを伸ばしてきました。ここ数年、日本のAmazonの仮想敵は楽天市場です。同社は、楽天市場の一大イベントとなるスーパーセールに似たセールを世界で初めて日本で開催するなど、猛攻勢をかけています。しかし、それでも楽天市場は日本のモール界のトップに君臨し続けています。
こんなに市場規模の大きいモールに出店しないのは、EC市場を目の前に敵前逃亡しているようなものです。必ず出店すべきです。
品番型商品だけじゃない! 本気のAmazon
楽天市場の対抗馬となるのは、やはりAmazonです。今後、さらに猛攻勢をかけて、確実に楽天市場のシェアを奪っていくことが予想されます。
Amazonの強みは2つあります。1つは、Amazon自体も販売を行っていることです。楽天市場に出店しているショップが、例えば、ミネラルウォーターを最安値で販売していると、Amazonは、直接メーカーから仕入れその最安値を下回る値段で売ります。楽天市場は自ら販売することができないため、Amazonより最安値を付けるためには出店する店舗に頼むしかありません。こうしてAmazonは、入口商品を作ることでユーザーの流入を誘い込み、モール全体を活性化させています。
そして、2つ目の強みはスピードです。アメリカでは1時間後に届くサービスも開始し、どこよりも負けないスピードを実現しています。
さて、これまでのAmazonは、品番型商品の取扱量を増やそうと、主に大手店舗の出店に力を入れてきました。しかし、ここにきて、楽天市場が強みとするノンブランド商品の取扱量を増やすべく、中小店舗にも積極的に門戸を広げ始めました。
例えば、1クリック2円~の「スポンサープロダクト」の開始があります。従来のAmazonでの広告が100万円~だったことを考えると、中小店舗はかなり広告が出しやすくなったと思います。また、「Aプラス」というサービスを開始し、詳しい商品紹介が可能になりました。これも中小店舗がノンブランド商品を売るための布石といえます。
このようにAmazonは、日本EC市場のトップシェアを獲得するために本気を出しています。楽天市場との差はまだありますが、両方のモールに出店し、今後、EC市場がどう変化しても、動じない体制を整えておく姿勢が大切です。
Yahoo!ショッピングやDeNAショッピング、ポンパレモールも面白い存在に
このほか、日本にはYahoo!ショッピングやポンパレモール、DeNAショッピングなどがあります。
どれも、どんぐりの背比べといった感じですが、完全無料化に踏み切ったYahoo!ショッピングは2014年、楽天市場を出店数で上回るなど少し勢いが出てきました。Yahoo!JAPAN全体がスマートフォンに注力する中、最適化したモールを作り上げることができれば、面白い存在になるかもしれません。楽天市場もAmazonもスマートフォンの完成度は高くないですし、出店料が無料なため、出店してマイナスなことは何もありません。
日本EC市場は、今後もモールがけん引していくことは間違いないでしょう。その中で、どのモールに出店し、どのような攻め方をするか。それは、EC担当者の腕にかかっています。次回以降では、その戦略について、さらに詳しく紹介していきます。
執筆者紹介
いつも.
創業以来、EC支援に特化して事業を行い、のべ7200社の支援実績を持つ。ECの成功に必要な集客や制作、販売、システム、コンサルティングをすべて自社スタッフがワンストップで提供する。支援対象は、自社サイトや楽天市場、ヤフーショッピング、ポンパレモール、DeNA、Amazon、紙通販、実店舗まで。米国最大のECイベント「IRCE」の公式パートナーとして、世界最先端のEC情報の提供も行う。公式Webサイトはこちら。