一般企業より、ある意味問題なのが「0.2系のIT業者」で、彼らにより「役立たずなホームページ」が増えています。それでも苦情があまり出ないのは、真っ当に商売をしている企業ならホームページによる「デメリット」などなく、成功したときだけ「ホームページのお陰」となる、ちょっとした「占い師」のようなことをしているからです。

今年は平成109年?

週末起業という言葉をご存じでしょうか? 本業を続けながら週末などの空き時間を利用して「起業」を目指すというもので、経営コンサルタントの藤井孝一さんが6年前に出版した同タイトルの新書がブームの火付け役となり広まりました。4月に日経平均が7千円台を記録し企業倒産が語られ、楽天やライブドア(当時の社名はオン・ザ・エッヂ)がメディアを賑わせ、「ベンチャー」が注目された時代背景も「起業」へと誘いました。

「109年の2月28日」

現在、Webクリエイターと名乗る「週末起業」出身のK社長が運営する、地域ポータルサイトの本稿執筆時の最終更新日です。彼が「週末起業」に出会ったのは、パチンコ店の従業員、ディスコ店員、OA機器の販売と転職を繰り返し、トラックドライバーとして迎えた30歳、流され続ける自分の人生に「このままでいいのか?」と自問していた頃です。

「週末起業」に適している3つの条件として、「やりたいこと」「できること」「時流に乗っていること」とあります。ブルーカラーよりホワイトカラー、パソコン操作はOA機器販売時代に覚えたので「できる」とし、「ホームページ」は時流だと決意します。そこで「パソコン教室」でホームページ制作の「イロハ」を習い「起業」します。

レンタルビデオを上映する映画館

Webクリエイター、Webディレクター、Webコンサルタント。IT業界には「Web」と付く肩書きが異常に多いのですが、それぞれに明確な違いはありません。というか、ほとんど同じで、私はまとめて「ホームページ屋」と呼んでいます。 I T技術やマーケティングなど、どの基準で「ホームページ屋」を評価するかは判断が分かれるところですが、会社案内をネットに公開する程度の技術ならば、パソコン教室で学ぶ程度で間に合います。

さらにネット界にはこういう思想があります。

「フリー(自由)でフリー(無料)」

グーグルが提供する各種サービスに代表されますが、ホームページ制作に必要な各種プログラム(スクリプト)も無料で流通しており、これらを「活用」することで素人でもそれなりのホームページを提供することは難しくありません。

プロ意識で飯を食べない

K社長を「週末起業0.2」と呼びます。週末起業とは自己実現のためのひとつのアプローチで、自分が培った経験やノウハウを元手に企業を目指す者ですが、彼は「ホームページ屋」ではなく「社長」になりたかったのです。社長になるためのツールが「ホームページ屋」だったに過ぎません。彼のビジネスはこういうイメージです。

「ツタヤでDVDを借りてきて上映する映画館」

高価なフィルムを用意する必要はなく、映写技師がいなくてもDVDなら再生ボタンをプッシュするだけです。ネットで借りてポストで返却すれば、外出の手間も不用です。もちろん、版権や著作権から実際の映画館ではできない方法ですが、ネットの世界では造作もありません。

ホームページ屋は高い技術や深い知識がなくても開業できるのです。いわゆる「ブログ」を例にとっても、Movable Typeといったブログ構築のためのソフトが安価に販売されており、個人利用という名目なら「無料」のソフトもあります。レンタルサーバを契約してソフトをインストールし、見た目を整えれば「システム+サイト構築、カスタマイズ料」として請求できます。これらのソフトはもともと個人利用をターゲットに開発されたソフトが多く、そのため、インストール作業は小学生でもできる程度の簡単なものばかりです。

それをなんというか

その昔、ブログがSEOに有効といわれましたが、誰もがブログを開設する現在では遠い過去の伝説です。無料で流通しているツールはライバル企業も入手でき、小学生でも使えるソフトなら誰もが利用します。そして役に立たない「ホームページ」が量産されます。同じ武器を持てば攻撃力(競争力)が均衡するからで、誰もがやることに誰も気を留めません。本稿の主旨と逸れるので詳述しませんが、これを回避するために「マーケティング」が必要となります。

冒頭の地域サイトをIEでチェックすると、2009年の当日の日付が「最終更新日」と表示されます。JavaScriptを利用した自動日付更新法です。当日の日付が表示されることから、訪問者に「今日更新したのだ」と思わせる狙いです。ところがFF(ファイヤーフォックス)やマックに標準装備されているブラウザ「safari」、グーグルが提供する「Chrome」では109年で、これはブラウザ固有の「クセ」によります。しかし、この「クセ」は簡単に矯正することができ、「ホームページ屋」なら対策を講ずるのが常識なのですが、Webクリエイターを名乗るK社長がクリエイトするWebとはIEだけが対象ということでしょうか。

週末起業0.2系のK社長の武器は口のうまさです。技術力を口先でカバーし、ツタヤでレンタルしたDVDを自分の監督作品のように上映します。ブログ、SNS、CMSと次々と「オススメ商品」を変え、その都度主張が異なることを「融通無碍」と嘯きます。「無節操」という誹りは彼の耳には届きません。彼にとっては社長になるのが目的で、手段へのコダワリはありません。

エンタープラズ1.0への箴言


「Web○○と名乗るすべてがプロとは限らない。週末起業0.2にはご注意を」