こんにちは。吉政でございます。  地方格差をOSSによる自動化で緩和することがもしかしたら有効ではないかと考えました。東京生まれ地方育ちで地方好きな筆者としては、地方にとって良いことは発信していきたいと思っています。

賃金と労働生産性の地域間格差とは

国土交通省が2019年に公開した資料「賃金と労働生産性の地域間格差」によると、東京などの大都市圏の賃金と労働生産性は他の地域よりも高いという調査データが出ています。

以下のグラフを見ると、労働生産性と所定内給与は東京都、神奈川県、大阪府、愛知県など大都市圏が上位に来ることがわかります。

  • 大都市圏の賃金と労働生産性は他の地域よりも高い 引用:国土交通省資料「賃金と労働生産性の地域間格差」(2019年)

また、以下のグラフのように、業種カットで見てみても、労働生産性と所定内給与はおおむね相関関係があることがわかります。

  • 労働生産性と所定内給与はほぼ相関関係にある 引用:厚生労働省『毎月勤労統計調査地方調査』(令和2年平均分結果概要、事業所規模5人以上、調査産業計)

単純に考えても労働生産性が高ければ、給与も総じて高くなるということは想像しやすいです。ちなみに、大都市圏のほうが他の地域よりも長く働いているから、賃金が高いのではと最初は思ったのですが、労働時間が長い都道府県のランキングでは、大都市圏ではない地域が上位を占めています。

1カ月の総労働時間の全国平均は135.1時間です。47都道府県の中で最も労働時間が長いのは岩手県で148.2時間でした。2位は青森県、3位は秋田県、4位は島根県、5位は福島県でした。主要産業によって、労働時間が変わってくると思うので、あまり参考にならないかもしれませんが、このようなデータになっています。

つまり、大都市圏は労働時間が少なく、生産性が高くて、給与が高いということが言えます。これはとても良い事です。

「賃金と労働生産性の地域間格差」(2019年)では、大都市圏には大規模の事業所が他の地域よりも大きく、事業規模と生産性は相関性が高いため、大都市圏と他の地域との賃金格差が生まれてしまうと指摘されていました。

総じて、事業規模が大きいと、生産性を上げるための投資を行いやすいので、労働生産性が上がりやすいですよね。しかし、最近、AIや自動化によって、大都市圏以外の地域でも賃金と労働生産性が高い地域が出てきました。

平均年収2000万円を超える農村

平均年収2000万円を超える農村で検索すると、書籍やWebの記事がヒットします。筆者自身もNHKのニュースや特集番組でこの農村を見たことがあります。もともとは寒村や労働集約的な産業が中心の平均賃金が低い農村でした。

こうした農村がAIや自動化の技術を取り入れ、生産性を向上し、平均年収を大幅に上げたモデル農村になったそうです。興味がある方は書籍うぃ読んでみるとよいと思います。

このモデルは現在、大都市圏の大規模事業所やベンチャー企業でも実現している、AIと自動化の採用による生産性の向上と同じ考え方です。繰り返し行うような作業やクリエイティブではない作業は極力AIや自動化の技術を採用して、労働者は業務改善や重要な判断に集中するというモデルです。AIや自動化は将来の技術ではなく、すでに活用できる技術なのです。

少し前に東証プライム市場に上場したプライム・ストラテジーという会社は東証プライム市場に上場できる企業規模ながら経常利益率が4割という国内トップクラスの高利益体質の企業として脚光を集めました。4割の経常利益率を実現できたのはAIの活用による業務の自動化によるものです。

平均2000万円を超える農村では、センサーを活用した自動給餌や、牛が自然と特定の経路を通るように導線を作り、牛が特定の場所を通過する際にセンサーで汚れを取るなど、自動化によって労働生産性を高めています。このような地域のAIや自動化の活動がすべての地域で導入されると地域の生産性が上がると考えられます。

OSSでAIサービスや自動化を実現する

現在、大企業がAIソリューションの開発を進めています。それはそれで素晴らしいことで、AIの普及を後押しするでしょう。ただ、多くの企業が提供するAIサービスは有料になるはずです。

このサービスが地域で普及してしまうと、その地域はAIサービスの利用料を永遠に払い続けなければならなくなる可能性があります。もちろんAIサービスを一から地域で開発することは難しいので、何らかのサービス利用しなければならないこともあるでしょう。

しかし、大都市圏以外の地域では地産地消が重要であるため、できる限り地域からAI・自動化ソリューションが生まれたほうがよいと思うのです。良質なAI・自動化ソリューションが地域で生まれれば、他の地域へ販売できる可能性も高まるはずです。

その際にベンダーロックインを避けるには、OSSの活用が重要です。幸い、AIソリューションの5割強でシェアを持つPythonはOSSですし、Pythonは自動化が得意なので、Pythonを活用した自動化のソリューションは外部にコストを支払わずに実現できるのではないかと考えています。

Pythonを活用した自動化の効果

AIを本格的に活用するには研究と実証試験が必要に思えますが、自動化であればすぐに導入して効果が出るかもしれません。

先日、マイナビニュースで沼田市のRPAからPythonへのリプレイスの事例が掲載されていました。同市はRPAで自動化を進めてきて成果が出ていましたが、RPAは利用ケースが増えるほどライセンス料がネックになってくるため、Pythonにリプレイスしたそうです。それによってライセンス料金がゼロになりました。

操作が容易と言われるRPAもそれなりに学習が必要です。Pythonはプログラミング言語なので当然学習が必要です。しかしながら、PythonはWindowsでも開発できますし、非エンジニア向けのPythonによる業務の自動化の書籍もかなり出ています。さらにはPython試験の非エンジニアの合格率は65%で、Pythonデータ分析試験の非エンジニアの合格率は75%です。また、Pythonは初学者が学びやすい言語1位でもあります。

学習は必要ですが、Pythonは学びやすいのです。業務の自動化にPythonを活用してみてもよいのではないでしょうか。