システム障害、それはある種避けられない類のものです。製造業界では歩留まりという言葉があるように、モノを作りあげる過程では必ず故障や不具合が発生しています。半導体の製造では、歩留まり率を改善するだけで製造単価が大きく下がります。

システム構築は、クライアントごとにカスタマイズするわけですから、そのシステムに複数のバグが内包されるのは自明の理。事実、システムテストフェーズでは、バグ発見率が規定を下回ると、テストが不十分なのではないかと疑われることがあります。こうやって、大抵のシステムバグは表に出ることなく解決されますが、それでもいくつかのバグは発見されぬままリリースされてしまうことがよくあります。

リリースされてしまっても、それが瑣末なバグならユーザへの影響は軽微に留まるのですが、もし重大バグが残されており、しかもそれがユーザに大きな影響を与えてしまったら、インターネットニュースや新聞、日経各誌に取り上げられてしまうことになるでしょう。

さて、このような事態に陥ってしまった場合、一体誰が責任を取ることになるのでしょうか。

システム担当者?

現場の担当者を罰しても問題の解決にはなりません。むしろ問題解決のモチベーションを落としてしまいます。

システム担当部長?

部長レベルに責任を負わせることはどの企業もやりますね。

システム担当役員?

社会的な影響が大きい場合、しばしば役員クラスにも減給、場合によっては出処進退を問うこともあります。

社長はどうか?

東証の例など、社会的な影響があるシステム障害を繰り返し起こしてしまったら、社長のクビも飛びかねません。

いまやシステム障害は、企業トップのクビを左右しかねない程の影響を持っているのです。ですから、企業のマネジメント層は積極的に自社のシステムがどのような状態にあるのか、把握することに努めねばなりません。

全社システムが停止するような自体にあっても、マスコミ対応をうまくこなして事後収拾を首尾よく行えば、企業トップの出処進退に発展するリスクは大きく低減されるでしょう。

システム障害が発生した際の東証の対応を思い出してみてください。当初はベンダーである富士通に責任を全て押し付けていましたが、途中から自社の要件定義書やチェック体制に問題が明らかになり、一転して自社の責任を認めました。このような対応はマスコミにとって、格好の非難の的です。事実、連日の報道によって経営層の辞任問題にまで発展しました。

社長、業績が落ちてクビになるならまだしも、システムが落ちてクビになったら洒落になりませんよ?

著者紹介

吉澤準特 (ヨシザワジュントク)

外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。

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この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。