信用のおける人とおけない人、どちらと一緒に仕事がしたいですか?
こう聞かれて、信用のおけない人と答える人はまずいません。誰に聞いても信用のおける人を選びます。
では、信用がおかれるためにはどのようにしたらよいでしょうか?
誠実な態度、客観的な視点などなど、色々な答えが上がってくると思いますが、私が最も重視したいのは、一貫性です。
何かを行うとき、人は自分の中にある行動原理に沿って行動します。
営業成績を最優先する人なら、どんなときでも自社の利益が大きくなるような提案をしますし、自己の技術スキルを向上させたいと考えるSEなら、無くてもよい最新技術を盛り込んだ提案をするでしょう。
何を行うにしても、一つの考えに沿って行動するわけですから、その大元の考え方を相手が知っていれば、相手はこちらの思考や行動を予測し やすいわけです。
そして、その予測の範疇で動くことが保証されている(と相手に思わせる)ことができれば、相手はあなたの言葉を信用するのです。
もう少し微妙な例で話をします。
子供がお年玉を貰ったとき、親がこう言ったとしましょう。
「あなたのために貯金をするからこっちに渡しなさい」
純真無垢な子供は親の言うことを信じてお年玉を預けます。それが何年か続いたとしましょう。
ある年、子供は、今までの貯金でバイクを買おうと思い立ちます。
そこで自分の預金通帳を確認してみると、貯金し続けてきたお金が半分しか残っていません。
そこで親を問い詰めると、
「最初は銀行に貯金していたけど、途中から学資保険にして積み立てているから半分しかないんだよ」
と言われました。
親は子供のために学資保険を積み立てていたのだから、貯金ではないにしろ、子供のためを思ってやっています。
ですが、子供はそのような形を期待してお年玉を預けていたのではなく、自由に使えるお金を一時的に貯めていると考えているわけです。
貯金するという一貫性を親が持っていると思って預けていたのに、実際は違っていた。
このとき、親が代わりに貯金をしているという行為に対する信用はなくなり、次回のお年玉では、子供は親に決して渡さないでしょう。
たとえ、相手に良かれと思っていても、相手はそう感じてくれないのです。
このように一貫性を持たない行動は、たとえそれが相手を慮ってのものだとしても、信用を失わせてしまうのです。
これはシステム開発や運用の場でも同じです。
緊急障害でシステムに変更を加えるとしても、事前にクライアントに示した解決案よりもさらに良い方法を直前になって思いついたからといって、クライアントに相談もなく、勝手にその方法で改修を加えてしまったらどうなるでしょう。
事前に説明していたことと違うじゃないか、と多くのクライアントは不快感を示します。
もしここで、一貫性のない態度を取っている(行き当たりばったりだ)と思われてしまったら、以後、クライアントからの信用はゼロです。
何をするにしても、クライアントからの細かい監査が入るでしょう。
どうですか、一貫した態度の重要性をご理解頂けたでしょうか。
著者紹介
吉澤準特 (ヨシザワジュントク)
外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。
この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。