世の中には万が一でも起きない限り、潰れることのない企業がいくつもあります。
例えば、権力争いで醜聞を広めてしまったJALは、親方日の丸がついている限り、外資に買収されることもなければ、収益不採算で廃業することもありません。元が官営企業であるNTTも、日本の通信ライフラインを支えている限り、絶対に国が潰さないでしょう。
こういった企業では、いかに儲けるかという視点よりも、いかに損をしないかというネガティブ視点が基本になりますから、売り上げ向上の提案よりも、コスト削減ソリューションを重視する傾向になりがちです。
そんな企業で働くIT部門の方々から、時々悩みの話を聞く事があります。彼らの会社の経営層の中には、ITとはコスト削減のツールに過ぎないと豪語する人々がいまだにいるそうです。
従業員の業務効率性を向上させるシステムの導入に金をかけるくらいなら、その金で従業員を増やしたほうがいいと本気で考えるほどだそうで。ですから、社内システムの増強や堅牢化なども認めてもらえることはほとんどなく、おかげで、未だにクラスタリングも行うことができないと聞きました。
そのシステムが会社の基幹業務から外れているなら問題ありませんが、聞けば社内業務に大きな影響がある重要システムとのこと。これ、ホントに止まったら、たぶん日経新聞の一面を飾るでしょう。そんな大企業で実際にある話なのです。
ITを軽視しながら、基幹業務をITに頼る企業は、いつか必ず手痛いしっぺ返しを受けますが、それを完全に理解している経営層は多くありません。そんな方々を説得するのが、IT担当者の役割です。
経営者は金勘定には長けていますから、投資しないことで得られるお金と、万一の障害が起きたことで失われるお金、どちらが高いか明らかにした上で話せば、きっと分かってくれますよ。
さあ、今日も元気に部長と戦ってきましょう!
著者紹介
吉澤準特 (ヨシザワジュントク)
外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。
この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。