「資格、持ってますか?」
新卒で入ってきた人と一緒に仕事をすると、こう聞かれることがよくあります。IT業界とはいうのは、資格の豊富さで言えば他業界の追随を許さないほど数多くの資格が存在します。情報処理技術者試験だけを数えれば14種類とそんなに多くはありませんけど、ベンダーが個々に設けている資格の数が半端じゃありません。
まず代表的なのがOracle。ブロンズから始まり、ゴールド、プラチナ、業界別Certificationを全部合わせれば10種類を超えます。シスコも有名ですね。CCNA、CCNP、CCIE、CCSPなどなど。SAPもSD、FI、MMが年度ごとに分かれているので、これだけで10種類を超えてしまいます。さらに、マイクロソフトの公認資格も非常に数多く、その他、メジャーどころのベンダーのいくつかも資格を提供しています。
さて、冒頭に戻りますが、これだけ多くの資格が存在していると、資格を持つことで評価されるに違いない、という雰囲気がかもし出されるようで、入社直後から少しでも同期と差をつけたいと考える新入社員は、我先にと資格取得に動くようです。
※就職活動中の学生も同様と聞いています
こういう人々は、わざわざ自腹で試験代を払って受験をする人ばかりだと思いますが、ここで一言伝えておきたいことがあります。
「自腹で受けるような資格試験は受ける価値がない」
業務に必要なスキルをサポートする資格試験であれば、普通の会社であれば受験費用を補助してくれるでしょう。
例えば、Oracle Masterはゴールドまで取得するのに最低10万円程の受験料が必要ですが、某通信会社では合格した試験の受験料は全額支給されます。
官公庁の入札では、資格者の人数によって入札資格を得ることができるため、そういった案件を扱う会社では、プロジェクトマネジメントなどの資格取得に対し、会社が率先して費用を持つでしょう。ですが、プロジェクトに必要としない資格、もしくは技能さえ持っていれば取得保持を要求されることのない資格ついて費用を払ってくれるところはあまりないと思います。
この場合、自腹で受験して合格したとしても、それが業務上の評価に直結することは少ないでしょう。
※昇進基準にスキル獲得が条件付けられているものは除きます
「でも、転職活動には役立つでしょう?」と思っているあなた。
人材採用担当はあなたの資格欄など参考程度にしか読んでいません。それよりも、職務経歴欄の方がよっぽどじっくり読まれます。
分かっている企業は分かっていますが、資格というのは所詮肩書きに過ぎないのです。肩書きがいくら豊富であったとしても、実務に役立てることができなければ意味がありません。
さて、それでも資格を取りますか?
著者紹介
吉澤準特 (ヨシザワジュントク)
外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。
この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。