商品開発/マーケティングの手法でペルソナ分析というものがあります。これは、消費者のある特定の仮想人物(ペルソナ)を想定し、その人物が望むものが何かを考えながら、商品やサービスの中身やマーケティングを決めていくアプローチです。
関係者全員が共通の顧客像を想定することで、特定の顧客層における価値の向上を効果的に狙うことが期待できます。この考え方をシステム開発に持ち込んだのが、アランクーパーの「ペルソナ/シナリオ法」というアプローチです。
システムと言えども、それを業務に利用したり保守を行ったり人が必ず存在する訳で、そこには何らかの手順(プロシージャ)が発生します。これが使いにくいと、途端に使われないシステムになってしまうため、システム設計者は、どんなプロシージャなら使いやすいのかを考えて、ユーザインターフェースやマニュアルの設計を行う必要があります。そんなとき、主要なペルソナを設定して、彼らが使いやすいと考えるプロシージャを考えれば、総体的なニーズに合致したものを提供しやすくなるのです。
システムの保守を考えるなら、初級者:山田さん、中級者:加藤さん、上級者:鈴木さんといったペルソナに分け、「山田さんはOracleのインストールをしたことがないから、インストーラーを解説した資料を用意しよう」「加藤さんと鈴木さんは経験豊富だから、注意すべきOracleエラーだけを一覧できるよう、Appendix.を作っておこう」という具合に保守マニュアルを作るのです。まあ、名前が新しくなっただけで、実は昔からあった「ストーリー法」という発想技法の応用なんですけどね。
※ストーリー法は、拙著「会議運営の基本と実践~」で解説してます。
http://it-ura.up.seesaa.net/item/report_request_it-ura-010.htm
ここではペルソナに名前をつけていますが、ペルソナを使った分析では、仮想像に具体性を持たせるため、このように名前をつけたり、性格を設定したりします。
ペルソナ/シナリオ法については、@ITで分かりやすく解説されているので、そちらを是非読んでみてください。
→ http://it-ura.seesaa.net/article/36572385.html
ちなみに、ペルソナを作り上げる方法について、これまでの顧客分析では、アンケート結果の平均が想定顧客として考えられてきましたが、個々の回答を見てみると、平均像に当てはまる人は誰もいなかった!という現実が往々にしてあります。
例えば、ある商品を購入した人が10人いたとしましょう。その内訳は、20歳の人が5人、40歳の人が5人とします。このとき、アンケートの平均像では「購入者の平均年齢は30歳」という答えがでますが、実際には、30歳の購入者など存在しないわけです。
このような像をペルソナに仕立て上げてしまうと、いるはずのない層に対するアクションを取ることになりますから、まったく効果の出ないアプローチになってしまいます。ご注意あれ。
著者紹介
吉澤準特 (ヨシザワジュントク)
外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。
この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。