世の中には「プロ」と名のつく人々がたくさんいます。法律のプロと言えば、弁護士や司法書士を指しますし、会計のプロと言えば会計士です。しかし、IT業界にしばらく身を置いている私にとって、どうにも納得のできないプロがあります。それは、ITのプロ。

ITのプロなんて言葉をさらっと聞くと、ついSEがそれに当てはまるものだと考えますよね。もうちょっと具体的に言うと、そのSEとは、どのような会社に属するSEですか?

多分、少なくない人が、ベンダーやソフトウェアハウスのSEを思い浮かべると思います。言い換えると、ITを用いてシステム開発を行う人間ということになるでしょうか。ということは、IT=システム開発・運用という単純な置き換えになるのですが、そんなことはないですよね。ITには、システムの設計やもう一段上の戦略策定という領域も含まれています。

「じゃあ、ITコンサルまでがITのプロということですか?」

確かにITコンサルもITのプロだと言えるのかもしれませんが、先ほどの定義に従うと、IT戦略策定や設計に対して専門的に取り組む人がITのプロに含まれますよね。

よく考えてみてください。他にもそういったフェーズに絡むプレーヤーがいませんか? 多くの方は既にお気付きのようですね。そうです、正解は、ユーザサイドの情報システム部門(CIO含む)です。

CIOはシステムが絡む経営戦略には専門的見地から意見を求められますし、そんなCIOにネタを仕込むのは情報システム部門の人々です。そんなことは当たり前じゃないか、という声も聞こえてきそうですが、果たして本当にそうでしょうか。

「ITのプロ」という言葉を聞いたとき、あなたの頭の中に浮かんできたのは社外のプレーヤーばかりじゃありませんでしたか? 別の観点で考えると、自社の情報システム部門はITのプロというカテゴリから無意識のうちに除外していませんでしたか?

職業柄、情報システム部門の方とご一緒に仕事をさせて頂く機会がよくありますけど、残念ながら、自分達がITのプロであるという自覚を持っていない方が少なくないのが現状です。もっと当事者意識を持ってITの取り組みを考えてください。外部の人間はあくまでも協力者であって、真の当事者ではないのです。

これは過去に、JTBの社長が日経BPのサイトで発言していた内容ですが、一見正しいことを述べているようで、実はITベンダーにおんぶに抱っこであることが読み取れます。

→ http://it-ura.seesaa.net/article/55853952.html

これは特に経営層に訴えかけたいことですが、社内にITのプロ(専門家)は必要ない、という発想は非常に危険です。

もはやビジネスとITに垣根を設ける意味はなくなりました。もっと分かりやすく言いましょう。あなたの会社には、少なからず営業活動を行う人々がいますよね。彼らは営業スキルのプロフェッショナル性を磨いているはずで、素人営業などと揶揄したら怒るでしょう。

ITも同じことです。ほとんどの会社には少なからずITに携わる人々がいるわけで、IT無しで会社を運営することは段々難しくなっています。 コアコンピタンスにリソースを集中するのも結構ですが、必要最低限のITのプロは社内に繋ぎとめておかないと、きっと後悔しますよ。

著者紹介

吉澤準特 (ヨシザワジュントク)

外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。

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この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。