皆さんに質問です。次の文章を見て何を思いますか?
「A社のデータセンターを利用するユーザー企業は、マスターデータのインタフェースにFTPを利用しなければならない。」
特に何も感じなかった方は、まだ普通の感覚をお持ちのようですが、長音を省きたくてウズウズしたあなた! かなりIT業界に染まってますね。
私の周りもそうなのですが、エンジニアにとって、語尾を延ばすことは好ましくないことだと思われています。なぜでしょう。
本来、外来語で語尾に長音が付くものは、それをつけて記述することを国が奨励しています(内閣府告示第二号)。例えば、Computerはコンピューターとするのが正しいです。しかし、これとは真っ向から対立するルールを推奨しているものがあるのをご存知でしょうか。
実は、JIS(日本規格協会)が「情報処理」の分野に限ってのみ、以下のルール適用を謳っているのです。
・3音以上からなる用語は長音を省略
→コンピュータ、マスタ、ユーザ、データセンタ等
・2音以下からなる用語は長音を記述
→コピー、キー、エラー等
ですから、冒頭の例文をJIS規格に準拠させて書き直すと、
「A社のデータセンタを利用するユーザ企業は、マスタデータのインタフェースにFTPを利用しなければならない。」
となるのですね。
技術文書ではよく見る表記ですから、なんとなく省略型を使っている人も多いと思いますが、ちゃんとルールとして明文化されていたわけです。
自社の営業さんやクライアント等、システムに縁の無い人にこんな話をしても意味は無いかもしれませんが、話のネタに使ってみて下さい。
著者紹介
吉澤準特 (ヨシザワジュントク)
外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。
この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。