神奈川県横浜市にあるクアドリモーターは、外車専門の修理ショップだ。時には高額の部品を海外から調達することもあるため、同ショップ代表の粟木正視氏は、以前より海外とのオンライン決済でペイパルを利用していた。そして店舗でのクレジットカード決済端末としても、支払いサイクルの早さを重視し「PayPal Here」の導入を決めた。
国産車ディーラー数店舗でのエンジニアを経て、200台近くを有する外車コレクターの元でもさまざまな車の修理を手掛けた経験を持つ粟木氏。
「パーツも足りないガラクタのような状態のリストアでは、部品を集めるところから始まります。マニュアルもないですが、古い取扱説明書などを参考にしながら組み立てていきました」と当時の様子を語る同氏は、過去の経験を活かし、ディーラーから修理を断られた年代物の外車でも、自身で部品を調達し、手に入らない部品は自作して修理にあたっている。
神奈川県横浜市にある現在の店舗は、1996年に開業して以来、常に修理中の車7~8台がガレージにあり、すべてを粟木氏ひとりで対応している。ホームページを開設した当初は、その反響で10台ほどを並行して対応することもあったという。愛着を持って長年1台の車に乗っているオーナーは、ディーラーで買い替えを勧められてもあくまで修理して乗り続けたい。また予算の問題などでディーラーでの修理をためらうオーナーはインターネット検索で同ショップを見つけ、訪ねてくる。こうした顧客の依頼に対し、自動車用コンピューター診断機器も駆使して要望に応えている。
国内外から修理に必要な部品を調達
外車の修理では、部品を海外から調達することも多々ある。イギリスなどへ直接、買い付けに行く場合もあるが、インターネットを利用して購入することも多い。海外の業者はクレジットカードの本人確認のため免許証のコピーの提示を求めることもあるが、直接相手の顔が見えないオンライン決済では、不正利用などの不安が払拭できない。こうした海外業者とのオンライン決済に、粟木氏はかねてからペイパルを利用していた。
ペイパルはオンラインの決済サービスで、購入者(買い手)とオンラインショップ(売り手)との決済の仲介を行う。利用者はペイパルアカウントを作成し、クレジットカード情報を登録する。インターネットで物を購入する際、ペイパルアカウントにログインして支払いを行うが、このときクレジットカード情報はオンラインショップ(売り手)には開示されない。
「クレジットカードの情報を売り手に知らせずに決済ができるので、海外の業者とのやりとりでも安心です。ペイパルはアメリカでは知名度が高く、ペイパルアカウントを持っていれば免許証提示を求められることもなく安全に購入できます」(粟木氏)。
また、購入した商品を返品したい際はペイパルの問い合わせ窓口が役立つという。
「一度、買った部品がコピー品だったことがありました。直接、海外の業者に返品対応を頼むこともできましたが、言語の壁もあり、揉め事になるのも避けたかったのでペイパルの窓口に問い合わせたところ、売り手との仲介になって返金の対応をしてくれました」と、粟木氏は過去の経験を語る。
支払いサイクルの早いPayPal Hereに注目
2012年9月、日本でPayPal Hereの受付が開始された。ペイパルのモバイル決済ソリューションで、iPhoneなどのスマートフォンに専用のカードリーダーを接続するとクレジットカード決済ができる。知り合いの紹介でPayPal Hereを知り「すぐにソフトバンクショップへ行きました」と粟木氏。その理由は主に2つだ。
1つ目は支払いサイクルの早さにあった。今までもクレジットカード決済はできたが、支払いサイクルは月に2度。海外での部品購入は数十万円に及ぶ場合もあり、これを立て替えることになるため、入金は早いに越したことはない。PayPal Hereでは4営業日程度で振り込まれるという。
また、「端末も1,260円と安価だったため、購入にためらいはなかった」(粟木氏)と導入当初を振り返った。
ペイパルにはパーソナルアカウントのほかに、ビジネスアカウントがある。パーソナルアカウントは支払いのみなのに対し、ビジネスアカウントは代金の受け取りも可能だ。もともとパーソナルアカウントを持っていれば、ペイパルのWebサイトでアップグレードすることで代金の受け取りも可能なアカウントを取得できる。このビジネスアカウントをPayPal Hereとして登録し、カードリーダーを購入するとPayPal Hereの利用を始められる。
決済手数料も2013年7月からは業界最安値の3.24%となり、より使いやすくなっている。「利用明細もメールで送付できる」(粟木氏)ため、運用面で困ることはないという。
コードレスなPayPal Hereで接客もスムーズに
同ショップでは1階にガレージがあり、2Fが事務所となっている。従前のクレジット決済端末はコードレスではないため、2階の事務所に行かなければ決済手続きができなかった。
「今はiPhoneとPayPal Hereを使って1階で決済できます。接客は普段1階のガレージで行っているので、お客さまのクレジットカードを預かって2階の事務所へ行かず、お客さまの目の前で決済できるので、もう今までのクレジット端末(CAT端末)は使っていません」(粟木氏)。
「クレジット使えますか?」という顧客からの問いにスムーズに対応でき、「不便を感じる点はない」と同氏は現状を話した。
車だけでなくコンピューター関連にも精通する粟木氏は、iPhoneの次期端末やiPad miniにも興味を示す。飽くなき探求による精度の高い外車修理もさることながら、同ショップのIT活用の今後も楽しみだ。