「太陽のトマト麺」フランチャイズ1号店の西新井支店では、2012年12月にPayPal Hereを導入。iPadとの組み合わせで、ラーメン店では珍しいクレジットカード払いを実現し、話題づくりと機会損失の回避を狙っている。

健康志向の中高年層や、女性客から注目を集める太陽のトマト麺。低脂肪な鶏ベースのスープに完熟ホールトマトを組み合わせた真っ赤なスープが特徴だが、辛くはなく、酸味も強過ぎない絶妙な味のバランスが人気の理由だ。

東武伊勢崎線「西新井駅」西口より徒歩約2分の「太陽のトマト麺」西新井支店。一番人気のメニューは「太陽のチーズラーメン」

駅のほど近くに店舗を構える西新井支店では、昼食時は学生や会社員で賑わい、夜の時間帯には会社帰りの人々が多く訪れる。メニューには「おつかれビールセット」「かんぱいセット」といった、生ビールとおつまみの組み合わせメニューも用意されている。平日の夜には、ラーメンのほかにこうしたセットをオーダーする人も多く、ほかのラーメン店に比べると客単価は高めだ。一人客のほか、カップルでの来店も目立つ。

機会損失をなくすため、モバイル決済サービス「PayPal Here」に注目

太陽のトマト麺 西新井支店 店長 堀内肇氏

「ラーメンだけでなく、ドリンクやおつまみを一緒に召し上がった方や、カップルでの来店の場合など、支払い金額が1,000円を超えるときに『クレジットカードは使えますか?』と聞かれることがあります。また入店前にクレジットカードが利用できるかを聞き、使えない旨を伝えると入店せずに帰ってしまうお客さまも、たまにいました」と、PayPal Here導入前の状況を語るのは店長の堀内肇氏だ。

こうした機会損失を回避するため、通常のクレジット決済システムよりも安価で手軽に導入できるモバイル決済サービス「PayPal Here」に注目した。

「クレジットカードを使いたいというニーズは必ずあると見込んでいました。電子マネーの普及で現金を持ち歩かない方も増えましたし、より多くの方に来店していただくために、導入するメリットはあると考えました」(堀内氏)

通常のラーメン店では食券を購入するための券売機が店先に置かれていることも多く、クレジットカードは使えない場合がほとんどだ。太陽のトマト麺 西新井支店では、利用客の利便性向上と入店者数増を目的にPayPal Hereの導入を決めた。

メニュー追加も簡単にでき、使いやすい操作性を評価

PayPal Hereは、iPhone/iPad用のアプリケーションと専用のカードリーダーを組み合わせたオンライン決済ソリューション。利用にはまず専用アプリケーションをApp storeからダウンロードし、メニューを登録しておく。メニューの登録は簡単で、商品の名前と値段のほかに画像を設定できるので、視覚的にも分かりやすい。

商品名と値段のほか、画像を登録できる。iPadの大きな画面ならとても見やすい

利用者がクレジット払いを希望すれば、注文されたメニューをiPadの画面で選択し、決済画面へと進む。カードリーダーにクレジットカードを通し、画面にサインをするだけの操作で支払いが完了する。決済内容を利用者のメールやSMSに送付することもでき、紙のレシートは顧客の控えと店舗控えの2枚を発行することも可能だ。

iPadで注文のあった商品を選択したあと、クレジットカードをカードリーダーに通し、iPadの画面に触れてサインをする。PayPal Here専用のモバイルプリンタからはレシートを発行できる。決済内容はメールやSMSで送付可能

「お客さまにサインしていただく際の操作性を考えて、iPhoneではなくiPadを選択しました。指でサインするのにiPadであれば画面が大きく書きやすいので。また当店ではアルバイトの店員もいますが、複雑な手順はないので教えるのにも苦労しませんでした」(堀内氏)。

導入後、二週間で二名の利用客がクレジットカード払いを希望したという。

以下は、実際の店舗での利用の様子を撮影した動画だ。


レジの近くにはクレジットカード払いが可能なことを示すポップを設置している

食材の発注業務にもiPadを活用

iPadを導入して、思わぬ業務効率向上の結果も得られている。今まで店舗に備え付けのパソコンで行っていた食材の発注業務を、iPadで行えるようにした。パソコンに比べて起動時間が圧倒的に速いiPadでは、必要なときすぐに発注ができる。

「野菜や調味料などの品名が一覧で並ぶWeb画面を見ながら、必要なものを選択して発注します。iPadの大きな画面では、プルダウンからの選択やタップなどの操作も苦なくできます」(堀内氏)

Web上から、食材ごとの個数や到着日を指定して発注する

到着日を指定し、一週間ごとにまとめての発注もできるが、売れ具合に合わせて微調整を行うため、発注業務は毎日発生する。利用場所が限られ、起動に時間を要するパソコンと違って、隙間時間を利用して操作できるiPadが役立っている。

クレジットカード払いできることの認知度向上による、リピーターに期待

「今はまだ導入したばかりですが、クレジットカードを使えることが浸透することで、リピーターのお客さまが増えればと思っています」と、堀内氏は今後の期待を語る。現金を持ち歩かない利用客でも気軽に入れるお店を目指す。また、財布の中の残金を気にせず注文できることにより、一品多く頼んでもらう効果も狙っている。

今後は、発注業務のほかにもパソコンで行っている作業をiPadへ移行することが検討されている。

「本部からのメールはiPadでチェックするようになりましたが、シフト表の管理はまだパソコンで行っています。こうした業務を徐々にiPadで代替し、起動に時間のかかるパソコンよりスピーディーに作業できるようにして、効率化していくつもりです」(堀内氏)