今後のiPhoneでは何が起きるのか?
加えて清水氏は、今後のスマホについて、「スマホを片手で持って片手で操作して両手がふさがってしまうのは、事故のもとで、『歩きスマホはやめよう』という運動が起こっている。両手をふさがないためのインタフェースを知恵を絞って考えて、特許を確保した者が将来の勝者になるだろう。ぜひ、日本勢も知恵を絞ってチャンスを掴んで欲しい」と述べた。また、米AmazonのFire Phoneは6個のカメラを搭載して、空間認識に力を入れている。そしてその情報をネットを通してすべて吸い上げようとしている。台湾HTCのスマホは複眼カメラ搭載で、撮影後でも焦点を自由に変えられる。GoogleのTangoプロジェクトは3Dカメラ搭載のスマートフォンやタブレットを開発している。韓国LG Electronicsの掃除ロボットは複眼採用で空間認識し、家具などにまったく接触や衝突せずに動作できる。アップルも次機種からは複眼カメラを採用すると噂されている」と、空間認識がIT企業の今後の大きなテーマになっていることを強調した。
このほか清水氏は、「アップルは、2008年にP.A.Semi(米カリフォルニア州サンタクララ)、2010年にIntrinsity(米テキサス州オ―スチン)と、ロジック回路設計を得意とするファブレス半導体企業を次々と買収して、プロセッサの設計に活用している。一時は、英ARMを買収するという噂も立ったほどだ。GoogleもAmazonも半導体設計技術者を大量に募集して、半導体チップ開発に注力しており、IT企業は次世代製品を独自の半導体で差別化を図ろうとしている」とも述べているが、アップルも2015年暮れに、米カリフォルニア州サンノゼにあるMaxim Integratedの半導体製造工場を買収しており、秘密保持のためにいよいよ自ら半導体製造まで手掛けるのではないかと噂されている。
そして最後に同氏は「iPhoneは次の機種(iPnone 7)あるいは次々機種で、従来の液晶パネルに替わり有機ELパネルを採用すると報道されている。また、新機能として空間認識、センサの強化、通信の向上は間違いなく行われる。iPhoneは、将来、すべてのデジタル回路を1チップ化、すべてのアナログチップも1チップ化を目指している」と話を結んだ。
iPhoneはかつての輝きを再び取り戻せるのか
アップルは2016年秋を待たずに3月末に、臨時ともいえる形でiPhone SEなる新機種を発売したが、iPhone 6sのディスプレイサイズをiPhone 5s並みにした廉価版ともいえるモデルであり、技術的・機能的な面での目新しさは無い。もともとiPhone 5x(このxはいずれかのアルファベット)と名付けられるのではないかと噂されていたもので、SEはSpecial Editionの略のようだが、売り上げが伸びない6sを補う応急措置だ。6sと同じA9プロセッサを使っているので5xとは言いたくなかったのだろう。iPhone SEには6sで新規採用された感圧タッチセンサはついておらず、指紋センサも5Sで採用された旧型へ逆戻りしている。
今後発売されるであろうiPhone 7は、デュアルカメラが装着される模様で、有機ELパネルを計画前倒しで搭載するかもしれないが、「目新しい技術の進化は期待できず、2016年のiPhone出荷数は、前年比で2桁低下するのでないか」という厳しい見方をする業界関係者が増えている。
ウォール・ストリート・ジャーナルなどで記者経験を持つケイン岩谷ゆかり氏が執筆した「沈みゆく帝国 スティ―ブ・ジョブス亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるか」(日経BP社)、によると「アップルは、前の製品が成熟する前に次の製品を出すことで驚異の発展を遂げてきた。それでうまくいくのは、イノベーションを生み出せる場合だけだ。しかし、最近アップル社内では、新製品が出るたびに、ああ単なる改良品か、革命的ではないよな、驚くほどのものじゃないよなと思う社員が増えている。アップルを辞める社員も増えている。アップルは、世界の期待を一変させる新製品を出すのではなく、過去の延長線上で進化・発展させるという典型的な間違いを犯しつつある」と著者は鋭く指摘する。 そして「みんなのあこがれのブランドだったソニーが、偉大な創業者を失ってからの凋落の道をアップルもなぞるのだろうか」と疑問を投げかける。ポストスマホはやはりスマホだとするならば、半導体技術がその原動力となって、ぜひとも誰にでもわかる目新しい機能を搭載して、皆をアッと言わせ、かつての輝きを取り戻してほしいものだ。