ユニアデックスは、施設保全業務向けIoTサービスとして「AirFacility」シリーズを立ち上げ、その第1弾としてトイレ施設を対象とした「AirFacility Aqua」を10月16日に販売開始した。
トイレに関するIoTサービスは各社から出てきているが、同サービスの特徴は単純な利用状況の見える化だけでなく、施設保全までをカバーしている点だ。
「IoTで人手不足を解決したい」からスタートしたトイレソリューション
「最初からトイレの課題を解決しようと考えていたわけではなく、IoTを生かせるストーリーを考える中で気づいたのがトイレの課題だったのです」と語るのは、ユニアデックス エクセレントサービス創生本部 IoTビジネス開発統括部 IoTサービス企画部 マネージャーの椿健太郎氏だ。
約2年前、同社としてどのようにIoTに取り組んでいくのかを議論する中、椿氏が気づいたのが、大きな病院におけるトイレ清掃の課題だった。
「少子高齢化で働き手が少なくなる中、人手不足が見込まれる職場を考えてみました。こうした職場をサポートできるIoTサービスとして思いついたのが、トイレ清掃における課題解決です。病院は体調不良などで長時間トイレに滞在する人も多く、空いている場所を巡回しながら清掃する日中業務に手間がかかっていると聞きました。また、トイレ内で倒れてしまうような人もいるでしょうから、個室の利用状況などが遠隔でわかるようにすれば役立つことがあると考えたのです」
従来のIoT事例は製造業やヘルスケア分野などを中心としたものが多かったが、こうした分野はIT活用に積極的だった。つまり、すでにさまざまな課題に対してITを使い尽くしており、そこに新規で参入するにはより高度な対応が求められる。それよりは、IT活用の遅れている分野のほうが早期に効果があるだろうという目論見もあったという。
「病院関係者に実証実験に協力してもらえないかと提案したところ、病院にはもっとクリティカルな課題が多くあり、収益に結びつかないトイレ清掃をターゲットとした設備投資は難しいと言われてしまいました。そこで、まずは自社のオフィスからやってみようというのがオフィスのトイレ課題へのIoT活用のはじまりです」と椿氏は語る。
利用状況の可視化で「いつも混んでいる」を解決
ユニアデックスは、オフィスが3フロアに渡っている。もちろん、トイレは各フロアにあるが、男性社員が圧倒的に多いため、男子トイレの個室は埋まっていることが多いという。アンケートを行ったところ、80%以上がトイレに関する不満を持っており、「いつも混んでいる」「時々混んでいる」という回答が合計で95%を超えた。
「アンケートで、個室が埋まっていた時にどうするかを聞いたところ、80%が他のフロアを探すと回答しました。『トイレに行ったら埋まっていたので、別のフロアへ行ってみた』という具合に、空きトイレを求めて社内をうろうろしているわけです」と、椿氏は社員が不便な思いをしていることに加え、業務時間に無駄が出ていることも指摘する。
個室が埋まっている理由は、社員数に対し男子トイレの個室数が少ないという設備の問題に加え、現在のオープンなオフィス環境に疲弊した社員の逃げ場となっている可能性もあるという。
「実証実験に参加してくだった企業の中には、昼休みになった途端に個室が1つ埋まり、40分間1人が占有していました。残る個室も順に人が入って、それぞれ40分近く占有。つまり多くの人が使うから埋まっているわけではなく、1人が長時間こもっているのです。オフィスで1人静かに過ごせる場所がなくなった中、トイレを休憩場所にしてしまっている人がそれなりにいるのでしょう」と椿氏。
社内実験では、まず男子トイレの個室に開閉状況のわかるセンサーを取り付けた。その情報は個室内の温水洗浄便座用の電源を利用して設置したゲートウェイを通じて配信され、洗面台にあるタブレットや、社員の自席PCからブラウザで確認される。空いているかどうか、どのくらいの時間使われているのかがわかる仕組みだ。
「調査によって、男性の個室利用時間の平均は約6分、全体の50%が4~9分に収まっていることがわかりました。そこで、利用時間を10分ごとに色分けして、長く使われていることがわかるようにしたのです。長時間利用しているからといって、誰がこもっているのかまではわかりませんし、注意されることはありません。しかし、長時間利用は若干減りましたし、長時間利用される時間帯が業務時間外へと移動するなど、多少見られていることを意識しているような変化はありました」と椿氏は効果を語る。