IoE(Internet of Everything)という言葉をご存知でしょうか?

IoT(Internet of Things)とも呼ばれていますが、これまで、ただの"モノ"でしかなかった家や車、そして歯ブラシまでもがネットへ直接繋がる時代になることを指しています。

この連載では、全てが"ネット"に繋がる時代だからこそ、思わぬところで漏れてしまう自分の情報をどのように意識して取り扱っていくか、トレンドマイクロの方に解説していただきます。

GPSにも落とし穴

多くの人が耳にしたことがある言葉の「GPS」。これは「グローバル・ポジショニング・システム」の略で、直訳すると「地球上で居場所を特定できる仕組み」になります。車でカーナビを使用される方には、もはや定番の機能ですね。

このGPSはスマホの位置情報提供機能でも使われています。例えば、近くのATMでお金をおろしたいと思った時、スマホの地図アプリに「ATM」と打ち込んで「現在地から検索」すると、地図上に自分の居場所と最寄りのATMが一瞬で表示されることがあると思います。

実はここでもGPSなどを利用した位置情報提供機能が利用されています。スマホを落としてしまった時なども、位置情報提供機能を利用すればスマホのありかを特定できます。

こんなに便利な位置情報提供機能ですが、やはり道具は“使いよう"。あまり考えずに使っていると、いわゆる「オーバー・シェアリング」を招いてしまいます。

SNSでは無意識に位置情報を共有してしまうことも

カタカナで書くと格好良く見えますが、要は「人に自分の情報を見せすぎ」ということ。いい大人がワケも分からないまま他人に全てを公開してしまうことは、ちょっと恥ずかしい行為と言えるでしょう。

写真や動画に短めのメッセージを添えて気軽に投稿できる人気のSNS、Instagram(インスタグラム)を例にとってみます。

Instagram(インスタグラム)の画面例

Instagramの「フォトマップ」という機能をオンにして投稿すると、写真に投稿時の位置情報(撮影した場所ではなく、投稿した場所)が追加され、Instagramの地図上に表示されます。旅行先で「フォトマップに追加」をオンにして投稿すれば、旅の思い出を地図上で振り返って楽しむこともできますし、同じ場所で投稿された他のユーザの写真と見比べることもできます。

ここで注意すべき点は、アプリの動き。Instagramでは、一度「フォトマップに追加」をオンにすると、次の投稿時も、前の設定が記憶され自動的に設定は「オン」になっています。

設定をよく確認せず、毎晩その日撮った写真の投稿作業を自宅から行っていたりすると、1カ月もすれば、地図上で一ヶ所だけ異常にあなたの写真が投稿されている場所が出来上がってしまいます。これでは赤の他人がフォトマップを見ても、あなたの自宅の場所が容易にわかってしまいます。

ネットという仮想空間のふるまいと、自宅の場所という現実の情報をうっかり結びつけてしまうことで、自由に楽しんでいたネット上のコミュニケーションに水を差してしまいます。より深刻な問題としては、写真に含まれるプライバシー情報と自宅の情報を結びつけられて、意図せず犯罪に巻き込まれてしまったりすることだって考えられるわけです。

どういう情報を共有するのか意識付けを

冒頭のIoEというキーワードは、よく「近く迫るIoE時代」といった言い回しで使われているのですが、すでに様々な機器がネットに繋がる時代へと突入しています。腕時計やメガネなど、スマホ以外にも位置情報を利用する端末が続々と増えています。もちろん、これらの機器は、あなたの生活情報を記録し、ヘルスケアの指針に繋がり、あなたの毎日の生活をより豊かにしてくれるでしょう。

その一方でIoE時代においては、今以上に「あなたに関する情報」を気にする必要があります。ネットに公開した情報は、あなたの知らないところで誰かが勝手に利用するかもしれません。そして、一度公開した情報を消し去ることは不可能と思ってもらって間違いありません。

ネットに情報を公開する前に、一度立ち止まって考えてみましょう。

  • その情報は誰に見せたい情報ですか?

  • 知らない人に見られても恥ずかしくない情報ですか?

  • 情報を公開した後に、どんなことが起こるか想像できていますか?

IoE時代をスマートに生き残るための大人のたしなみとして、「オーバー・シェアリング」には、くれぐれもご注意ください。

筆者:森本 純(もりもと じゅん)

トレンドマイクロ株式会社 マーケティング戦略部

コアテク・スレットマーケティング課 シニアスペシャリスト

インターネットを安全に楽しむためのセキュリティ情報サイト「is702」の企画・運営をはじめ、セキュリティエンジニアとしての実務経験を元に大学生から企業ユーザまで広く様々な立場の人への脅威啓発活動を担当している。