いま企業は、日本国内の規制だけでなく、非常に多くの国際的な規制への対応を待ったなしで迫られています。例えば、金融業界におけるドッド・フランク法、CCAR、MiFID II、BCBS 239や、保険業界におけるソルベンシーII、ライフサイエンス業界におけるIDMP、UDI、そしてB2Cビジネス全般に関わるGDPRなど、各種法規制は増加・複雑化の一途を辿っています。

これらの法規制要件は、正確性や適時性を備えた品質の高い適切なデータに基づいて、リスクを正確に評価・測定するものや、医薬品・医療機器に関するさまざまなデータを整合性のとれた形で関連付けるもの、個人情報に関する機密データを適切に管理・保護するものなど、いずれも適切なデータの収集と管理が不可欠です。

各種法規制対応に共通する主要なデータマネジメント能力は次の5つです。

  1. さまざまなシステムのさまざまなフォーマットのデータを統合する能力
  2. データの品質を評価し、必要に応じて修正・改善する能力
  3. 顧客や製品など主要データに関する信頼できるシングルビューを把握する能力
  4. データの発生源から規制当局に対する報告に至るまでのデータの流れを追跡する能力
  5. 主要なデータ要素についての業務/システム双方の定義を管理する能力

これらの基礎的なデータマネジメント能力を備えることによって、特定の単一規制だけでなく、複数の規制にも対応できるようになります。それだけではありません。このような取り組みは、業務部門横断でマスター/トランザクションを含む主要なデータを収集し、統合・品質管理するものであり、そのデータは守りはもちろん、攻めの側面でも有効活用できる貴重な資産となるのです。

整合性のとれた品質・信頼性の高い顧客や製品、そしてそれらを取り巻くデータセットは、顧客中心型のサービス提供や効果的なマーケティング施策、新製品の研究開発など、さまざまな業務領域での活用が期待できます。

例えば金融業界における多くの規制では、顧客は誰で、どの金融商品を買ったのか、という正確な情報が求められます。規制対応のために、これらの精緻な情報を整備できれば、売れ筋商品の分析はもちろんのこと、どの顧客が何を買わなかったのか、も把握することができます。

こうしたギャップ分析によって、訴求力のある新商品開発や、マーケティング活動の最適なターゲティング、顧客接点における的確なオファリングにつなげることも可能となるのです。

規制対応は多くの時間とコストを要するやっかいな問題ですが、コンプライアンス違反を犯してしまったときのペナルティは甚大で、好むと好まざるとにかかわらず向き合わなければならない経営課題です。

従って、経営層の投資判断においても何より優先されます。これはとりもなおさず、自社のデータ資産を整備し、攻めに転じるための絶好のチャンスでもあるのです。ぜひ法規制対応を契機にデータマネジメントに取り組み、攻めと守り表裏一体でビジネス価値を創出してください。

さて、計6回にわたって5つの切り口で、データ整備のポイントとデータマネジメントの重要性をご紹介させていただきました。

1. Decision Ready: 意思決定のためのデータ整備
2. Customer Ready: 顧客接点強化のためのデータ整備
3. Application Ready: アプリケーションのためのデータ整備
4. Cloud Ready: クラウドリフト&シフトのためのデータ整備
5. Regulation Ready: 規制対応のためのデータ整備

いずれも、業種や規模を問わず、ほぼすべての企業が直面するテーマであり、その源泉はデータです。複雑化するビジネス/IT環境において、データマネジメントは一筋縄ではいかない終わりなき旅ですが、その長い道のりを効率的に歩むためには道具が欠かせません。データマネジメントを包括的に支えるテクノロジープラットフォームと、方法論を含むソリューションを活用して、データの整備と活用を進めてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

久國 淳

2013年4月1日より、インフォマティカ・ジャパン セールスコンサルティング部 ソリューションアーキテクト エバンジェリストを務める。データプラットフォームに関するソリューション提案活動のほか、データマネジメントを中心とした講演やセミナーを通して啓蒙活動に従事。現職以前は、SAPジャパンにて総合商社、小売、サービス業向けのERP営業や、BI/EPM製品やSAP HANAのソリューションスペシャリストを経験。