あなたの会社ではすでにクラウドのIaaS/PaaS環境やSaaSアプリケーションの導入は進んでいるでしょうか? クラウド化を進めるにあたり、どのようなクラウドサービスを導入するかはもちろん大切ですが、それらを迅速かつ的確に有効活用していくには、データマネジメントのプロセスとそれを実現するためのプラットフォームが重要になってきます。今回は企業がクラウド化を進めるにあたって考慮すべき重要なポイントをお伝えします。
拍車がかかる「クラウド・ファースト」
昨今、多くの企業のCIOは、新たに自社用データセンターを整備するのではなく、Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどのパブリッククラウドの利用を考えるようになっています。金融業界をはじめ、自社保有資産ではない外の世界であるクラウドの利用に慎重だった企業も、有効な選択肢の1つとして取り入れ始めています。同様にアプリケーションの世界でも、SalesforceやConcur、WorkdayなどのSaaSアプリケーションの浸透が進んでいます。
アジリティ、コスト、拡張性など、クラウドを利用するメリットに対する理解が深まるにつれ、企業のクラウド採用が進み、より早く、より安くビジネス価値を享受することができるようになりました。しかしながら、「クラウド・ファースト戦略」の中でデータが担う役割の重要性については、まだ多くの企業が理解できていないのが実態です。どんなにすぐれたSaaSアプリケーションでも、単体ではその価値を最大化できません。他のクラウド/オンプレミスをまたぐ、周りのアプリケーションとデータを流通させてこそ、その価値を引き出せるのです。
今後、企業がスピーディーにSaaSアプリケーションやパブリッククラウドの導入を進めるために、CIOやビジネスリーダーが考慮すべき3つの重要なポイントをご紹介します。
1. クラウドの世界でのデータの可視化の重要性
SaaSアプリケーションでは、そのサービスを提供するプロバイダーがデータモデルの定義やポリシー設定、データプロセス管理などのすべてを行っています。そのため、大半のユーザーは、そもそもどんなデータがクラウドに存在しているのかを把握することすら困難です。
例えば、あなたの会社で、いくつのSaaSアプリケーションが従業員データを保持しているか把握していますか? 顧客データをどのアプリケーションが保持しているか把握できていますか? これらの情報を的確に把握する上で重要となるのはメタデータです。通常、SaaSプロバイダーはユーザーに対してメタデータへのアクセスを許諾しています。そのメタデータを抽出し集約することで、クラウド内に存在するデータを明確に把握することができます。
2. ハイブリット環境への対応
例えば、ある企業では顧客管理にはSalesforceを標準ツールとして利用していますが、分析基盤やほかのデータに関してはオンプレミスの環境を利用しています。また、別の企業では現在25種類以上のクラウドアプリケーションを利用している中で、社内の分析基盤としてAmazon RedshiftかAzure SQL Serverでの集中管理を検討しています。こういった企業で使われるデータマネジメントプラットフォームは、クラウド/オンプレミスをまたぐハイブリッド環境かつ、さまざまなパッケージアプリケーションが乱立する複雑な環境に対応できることが必須になります。
3. データセキュリティの重要性
もちろん、パブリッククラウドを利用していてセキュリティ侵害があった場合には、クラウドプロバイダーが第一に責任を負います。しかし利用企業側のブランドも危険にさらされてしまう問題であるため、ユーザー自身としても責任を持ってデータを管理する必要があります。
つまり、利用企業は確実に保護しなければならないデータを検知・把握し、優先順位を付け、確実に保護するためのツールとプロセスを導入した上で、データ自体のセキュリティを担保しなくてはなりません。そして、機密データの優先付けをするには、どこにどのデータがどんな形で保存されているのかの把握、つまりは1)でお伝えしたデータの可視化が必要不可欠です。セキュリティ保護が必要となる機密データの優先付けができて初めて、マスキングや暗号化などによる適切なセキュリティ制御を実行することができるのです。
「クラウド・ファースト」への道のり
本稿でお伝えしたいのは、優れたデータマネジメントプラットフォームと、しかるべきプロセスを整備してようやく、企業として「クラウド・ファースト」戦略を積極的に推進できるということです。データをコントロールし活用できれば、企業は競争優位に立つことができます。データがクラウド/オンプレミスのどこに管理されていようと、企業としてすべてのデータをコントロールできていることが重要なのです。
インフォマティカでは、それをサポートするデータマネジメントプラットフォームを、オンプレミスはもちろん、クラウドサービスであるiPaaS(Integration Platform as a Service)としても提供しています。
あなたの会社ではどこまでクラウドへの対応が進んでいるでしょうか? クラウドがもたらすメリットを最大限に享受するための環境準備を始めていますか? クラウド・ファースト時代のいまこそ、データマネジメントプラットフォームの重要性を改めて見直してみてください。
著者プロフィール
久國 淳
2013年4月1日より、インフォマティカ・ジャパン セールスコンサルティング部 ソリューションアーキテクト エバンジェリストを務める。データプラットフォームに関するソリューション提案活動のほか、データマネジメントを中心とした講演やセミナーを通して啓蒙活動に従事。現職以前は、SAPジャパンにて総合商社、小売、サービス業向けのERP営業や、BI/EPM製品やSAP HANAのソリューションスペシャリストを経験。