ビッグデータ/IoT時代のいま、データ駆動型経営の重要性が叫ばれ、データ活用が企業経営において至上命題となっています。しかし、社内外の膨大なデータ資産を戦略的にフル活用してビジネス価値を創出していると胸を張って言える企業は多くはないのではないでしょうか。

そもそも、「データ活用」とは一体何なのでしょうか? データ分析だけが、活用の道ではありません。そして、活用をするためにも準備が必要です。本シリーズでは、データ活用と準備を5つの「Ready」に分類し、各テーマに沿って本質的な課題と対処法を掘り下げていきます。

5つのData Ready

データは、単に集めて蓄積しているだけでは活用できません。クラウド/オンプレミス含むさまざまな環境にさまざまなカタチで散在しているでしょうし、粒度・鮮度・の違いや重複・不整合など、データの信頼性に直結する品質の課題もあります。

美味しい料理を食べるためには、料理に応じた素材を調達・保存・調理し、盛り付けるといった一連の準備が必要となるのと同じように、データの活用にも一連の準備が求められるのです。そこで、データ活用の目的ごとに次の5つの観点でデータ資産を活用するための準備が整っているか、順に見ていきましょう。

  1. Decision Ready: 意思決定のためのデータ整備
    いまやデータ分析、そして意思決定は経営層やミドルマネジメント層だけのものではありません。アナリティクスの民主化が進み、分析ユーザーの裾野が拡がり続けています。また、分析業務全体の80%が、分析自体を行うための事前準備に割かれているのが現実です。さまざまな分析ニーズに応え、最適かつ高品質なデータをスピーディーに供給する準備は できているでしょうか。

  2. Customer Ready: 顧客接点強化のためのデータ整備
    複数事業、グローバル展開、オムニチャネル。B2C/B2Bを問わず、顧客との接点が拡がり、つながり方も多様化する中、顧客とつながり続ける囲い込むためには、個々の顧客を深く理解した上での効果的なコミュニケーションが不可欠です。そのための、顧客自身の情報はもちろん、顧客を取り巻くさまざまなデータの整備はできているでしょうか。

  3. Application Ready: アプリケーションのためのデータ整備
    業務アプリケーションのカタチは、レガシーからスクラッチ、パッケージ、SaaSなど多岐にわたり、かつそれらが混在するハイブリッド環境になっています。複雑に絡み合うアプリケーション間のデータ需給をコントロールし、効率的にデータを流通させる準備はできているでしょうか。

  4. Cloud Ready: クラウドリフト&シフトのためのデータ整備
    クラウド導入のメリットの1つとして挙げられるのが、すぐに使い始められる「アジリティ」です。しかし、「使い始めること」と「価値を享受すること」は同じではありません。SFAのSaaSを利用し始めたものの、既存のERPと連携ができずに二重入力が発生し、業務負荷が上がってしまうケースもあります。クラウドの価値を最大限かつ最速で享受するための準備はできているでしょうか。

  5. Regulation Ready: 規制対応のためのデータ整備
    個人情報保護法はもちろん、国内外における業界ごとの法規制要件への対応にもデータの整備は欠かせません。どこにどれだけ機密データが存在し、どう拡散しているのかを把握し、しかるべき保護をしたり、対外的な報告に用いるデータの来歴を説明できたりしなくてはなりません。増え続ける法規制に対するデータの整備はできていますか。

次回からは、この5つのReadyについてテーマごとにフォーカスして、具体的にどのような準備が必要なのか、またそれを実現するための仕組みについて紐解いていきたいと思います。データを戦略的に活用し、その価値を最大限に引き出せる企業、"Data Ready Enterprise"を目指しましょう。

著者プロフィール

久國 淳

2013年4月1日より、インフォマティカ・ジャパン セールスコンサルティング部 ソリューションアーキテクト エバンジェリストを務める。データプラットフォームに関するソリューション提案活動のほか、データマネジメントを中心とした講演やセミナーを通して啓蒙活動に従事。現職以前は、SAPジャパンにて総合商社、小売、サービス業向けのERP営業や、BI/EPM製品やSAP HANAのソリューションスペシャリストを経験。