少し前の話だが、筆者は2ヵ月前に大連と北京を周ってきた。先月はチェンナイに行ってきた。大連は行くたびに交通渋滞がひどくなっている。おかげでタクシーの運転は荒くなる一方である。北京の交通渋滞と排気ガスは有名だが、筆者からするとそれは感じない。北京オリンピックの前年あたりから随分と良くなった。渋滞に巻き込まれたことはないし、空は一面の晴天である。それよりもチェンナイの渋滞がますますヒドくなっている。郊外でも渋滞に巻き込まれ始めた……といっても今回は渋滞の話ではない。久々に3都市を周ってきたので、各空港のセキュリティチェックについて報告したい。
筆者の出張グッズ
筆者が中国に行く時の荷物はシンプルである。パスポート、クレジットカード、現金、資料、地図、手帳、名刺、パソコンと周辺機器、中国用と日本用の携帯電話、ライターを別にすれば、着替えを3日分だけである。ホテルのクリーニングを使えばそれで十分だ。ただし今の季節は防寒具も必要か。
最近は航空券も持っていかない。成田のチェックインカウンターで印刷してもらえる。パスポート、クレジットカードと並んで大事なのが、各都市における訪問先と料理屋などの名刺のホルダーである。これさえあれば、1人でも自由に動き回れる。言葉はわからなくても、運転手に見せるだけでよい。こんな簡単な荷物だから、成田出国時も大連到着時も、セキュリティチェックは問題なく通過できる。たまに成田出国時に靴がひっかかるが、その原因はよくわからない。
中国からの帰りは荷物が増える。いただいたお土産とは別に、中国食材を自分用に買ってくる。大好物の木耳(キクラゲ)……最近は、(海の生物の)クラゲの種類も増えた(中国ではクラゲ料理も一般的)。2回に1回は黒酢も買う。
チェンナイ出張時も基本的には同じである。着替えはワイシャツ2枚だけ。それと停電用のペンライトか。あとはチェンナイのアパートにある。名刺ホルダーはない。今までは専属の運転手(サンパス君)がいたので必要なかった。ただし独自コラム「(続)インド・中国IT見聞録」最新号でお伝えしているように、サンパス君が不慮の事故で亡くなってしまった。だから次回からはチェンナイ用の名刺ホルダーも必要だ。もっとも、英字を読めてそこに行ける運転手でないと意味はないが。
しかし日本食材で荷物は増える。自分用、頼まれ物などで大量の荷物になる。チェックインバゲージは49kg以内に、超える分は手荷物である。格安エコノミークラスでのフライトであるが、航空会社にはお世話になっている。
インドからの帰りは極端に荷物が減る。買ってくるといっても、紅茶とヒマラヤの岩塩くらいである。こんな荷物を持って各空港のセキュリティチェックを受ける。
厳しくなった中国の空港
昨年あたりから非常に厳しくなってきた。北京オリンピックの時に厳しい厳しいと騒がれたが、筆者からすると何で騒いでいるのかわからなかった。せいぜい北京首都空港の建物に入る際にパスポートチェックがあるのと、ワン君(警察犬)が荷物を嗅いでいるだけである。あとは形式的なチェックだけだった。
もっとも、以前はもっとひどかった。2001年だったと記憶しているのだが、当時の北京空港でチェックイン、セキュリティ、出国審査、税関……という出国手続きの際に、税関で問題が起きた。空港施設利用料(?)がチケットに含まれておらず、別途支払う必要が生じたのだ。
筆者が「どこで支払うのか?」と聞くと、「建物入り口のカウンターに行ってこい」と言う。筆者が「もう出国済みだ」と答えると、横道に案内された。そこでパスポートを預け、支払いを済ませて横道から再び税関に来た。それで問題はなく通れたのだが、よく考えると2回目の税関ではセキュリティを通っていない。このルートだと何でも機内に持ち込めてしまう。テロリストは知らないのだろうが、平和な時代だった(今はダメですよ)。
ところが最近は厳しい。チェックインバゲージの中のライターも取り上げられる。大連空港では手荷物のクラゲも駄目という。「これは液体ではない」と言い張っても捨てられる。おかげで最近はクラゲ料理を食べることができない。
北京首都空港の手荷物検査は入念である。すべてのライターが発見され、捨てられる。見事なものである。
食材のチェックに厳しいチェンナイ空港
それに比べると、チェンナイ空港のチェックはおざなりである。成田とあまり変わらない。どんなに隠していても必ずライターは見つける。さすがインド人、視力が良い。しかし、ライターを1本捨てると、後は何もチェックしない。まだ何本も持っているのだが、ここでは問題ないようだ。不思議である。
しかしその他の持ち物に対するチェックが厳しい。最近、必ず入国時にひっかかる。X線による撮影画像を見せながら、「これは何だ!」と言われる。今のところ「My Foods!」と叫べば問題はない。「牛蒡(ゴボウ)」を英語で何と説明すればいいのかがわからないので、そう叫ぶしかない。
インド出国時も問題が起きる。今度はヒマラヤの岩塩である。「これは何だ?」と聞かれる。「"HIMALAYAN CRYSTAL SALT"と書いてあるだろう」と言うのだが、疑っている。麻薬の運び屋だとでも思っているのか。「封を切って味見を」と言うと、やっと解放される。
ただしこの話はあくまでもチェンナイ空港の話である。北、西、東インドのようにテロリストが狙っている空港は別だろう。一番怖いのは毛沢東派だろうが、彼らは東部の農村を拠点にしているのでチェンナイ空港にまではやってこない。
もっとも、これは昨年末の話である。これからどうなるかは筆者も知らない。あなたがテロリストでなければ、何か指摘されても堂々と受け答えしておけば問題はない。言葉がわからなければ即時に日本語で答えればよい。その場で考え込むのは厳禁である。
厳禁といえばもうひとつ……現地の空港では、決して知らない人の荷物を預かってはならないということもお伝えしておこう。
著者紹介
竹田孝治 (Koji Takeda)
エターナル・テクノロジーズ(ET)社社長。日本システムウエア(NSW)にてソフトウェア開発業務に従事。1996年にインドオフショア開発と日本で初となる自社社員に対するインド研修を立ち上げる。2004年、ET社設立。グローバル人材育成のためのインド研修をメイン事業とする。2006年、インドに子会社を設立。日本、インド、中国の技術者を結び付けることを目指す。独自コラム「[(続)インド・中国IT見聞録]」も掲載中。