筆者は今、8ヵ月ぶりにインド・チェンナイを訪れている。今回は発展著しいこの街の様子をお伝えしたい。
韓国・現代自動車の城下町
空港には土曜日の深夜11時に着いた。荷物が出てくるのが遅れるなど、意外と時間がかかった。車に乗ったのは夜11時半。空港を出る間際に大きな看板がある。すべての車はこの看板に向かって走り、看板の前で左折して空港を出る。
「WELCOME TO THE HOMETOWN OF HYUNDAI」
たしかにここは韓国・現代自動車の城下町である。日産でもトヨタでもない。スズキでもない。現代を先頭とした強力な韓国勢の街である。この街には日産やフォード、BMWの工場もある。それでも現代自動車が断トツだ。
アパートに着いたのはそれから20分後、何とか日付が変わる前に到着できた。
拡大するチェンナイ都市圏
日曜日は特に仕事の予定はない。久しぶりのチェンナイである。南部郊外を車でまわってみた。
ITハイウェイを南の終端・SIPCOT(State Industries Promotion Corporation of Tamil Nadu)まで行き、そこから西へ。NH45(国道45号線)に出て、さらに南西に進み、マヒンドラ・ワールドシティ経済特区まで行ってきた。途中のコーヒータイムも含めて5時間の車の旅である。チェンナイ市内ではなく、ほとんど隣のカンチプラム県である。
一言でこの地域の印象を表現すると、ITハイウェイ全域25kmと空港から25kmのNH45沿いにチェンナイ市内が拡大した感じである。延々と町とビルが続いている。特にNH45沿線はすごい。日曜夜だというのに、チェンナイバイパスとの分岐地点などは車の大渋滞となっている。ここは以前なら時速100kmで車を飛ばせた場所だ。
15年で一変したITハイウェイ
1995年9月、初めてインドを訪問した時もこのITハイウェイを車で通った。
社員研修の候補先として、ITハイウェイの先、ケーランバッカム村の会社を訪ねた。たかが20数キロだが、車で1時間かかった。ハイウェイとは名ばかりで、実際は原生林の中のデコボコ道である。
何回も道にあいた穴の中に突っ込み、車が左右に大きく揺れる。そんな道である。「IT」と言っても、当時はIT会社のビルなど2つしかない。本当の「村」である。研修生が窓を開けて寝ていたら、ベッドの中にイグアナがもぐりこんで来たことがある場所である。
9年前には筆者も今のSIPCOT手前の会社に毎日通っていたが、その頃、IT会社は10社もなかった。道路も一応の舗装はされていたが、雨が降ればすぐに陥没し、車の数より寝ている牛の方が多い状況だった。
いつ頃からか、この場所にIT会社が集結しはじめ、道路もだんだんと良くなってきた。とはいっても、3年前までは途中のASIANA HOTEL付近の道もデコボコだった。SIPCOTまでの舗装工事が終わったのは実は昨年である。
それが今では延々とIT企業のビルが林立するようになった。新しいホテルも次々と建てられた。SIPCOTの向かい側は、高層マンションと商業ビルの大きな街になろうとしている。
ITハイウェイの先のケーランバッカム村にも行ってきた。こちらは相変わらずのデコボコ道である。牛も道路で寝ている。ただ15年前とは違って、人と車の多さには驚いた。これでは牛も安心して寝ることができない。
NH45は大混雑
ケーランバッカムから西へ20分ほど車を走らせると、アンナ動物園の先でNH45にぶつかる。この東西の道も状態が良い道である。ここに大学も企業も集結し始めた。幹線道路沿いには地価の安い土地は残っていないのだろう。だから奥まったところにも企業が集まる。
NH45を南西へ。以前、筆者がインド研修を行っていたSRM大学やフォードのチェンナイ工場、巨大ハイテクゾーンであるマヒンドラ経済特区をまわってきた。
どこも周辺に次々とマンションが建設されている。大学の中にも所狭しとビルが建てられ、車が通れる道もあちこちでなくなっていた。
一番驚いたのは帰り道。
チェンナイバイパスとの分岐点の辺りが大渋滞となっていた。空港の近くが渋滞するというのは昔も今も同じだが、以前はバイパスとの分岐点まではフォード社がテスト走行に使っていた道である。ナンバープレートなしの車をこれからは何処で走らせるのか。
チェンナイの強み
西部は月曜日に行く。
チェンナイから西へ伸びるバンガロール街道(NH4)である。50km圏内に現代自動車、NOKIA、DELL、モトローラなどの工場が立ち並ぶ。市内と工場地帯は離れていたが、どこまで"市内"が拡大しているか、興味津々である。
北部アンドラ・プラデッシュ州の工業団地 SRI CITYまでの間はどうなったのか。
以前に訪れた時は、SRI CITYの南20kmの間にはコーヒーショップひとつなかった。残念ながら今回は北部には行かないので見ることができない。
やはりチェンナイは次々と拡大している。拡大できる平地がある。バンガロール街道は現在は50km圏まで工場が並んでいるが、実はカルナタカ州との州境近く300km圏までは何もない平地である。
工場用地などいくらでもある。水もある。暑いので北インドのように凍死者が出ることもない。まだまだ人も集まって発展する余地がある。
余談ですが
これが本日の筆者の食事である。
昼はアパート隣のレストランへ。せっかくのインドだ。日本では滅多に食べないが、インドでは牛肉料理がうまい。ステーキは特に美味しいとは思わないが、インド中華の牛肉料理は美味しい。柔らかくて良い料理である。
夜はもちろん刺身である。港町チェンナイならではの料理である。
著者紹介
竹田孝治 (Koji Takeda)
エターナル・テクノロジーズ(ET)社社長。日本システムウエア(NSW)にてソフトウェア開発業務に従事。1996年にインドオフショア開発と日本で初となる自社社員に対するインド研修を立ち上げる。2004年、ET社設立。グローバル人材育成のためのインド研修をメイン事業とする。2006年、インドに子会社を設立。日本、インド、中国の技術者を結び付けることを目指す。独自コラム「[(続)インド・中国IT見聞録]」も掲載中。