FPD製造装置市場動向について、IHS Markitのディスプレイ部門シニアディレクターであるCharies Annis氏は第36回 IHSディスプレイ産業フォーラムにおいて、「FPD製造装置の需要は2017年にピークを迎えた、最近はかなり落ち着いてきている。2018年の装置需要は前年比で14%減、2019年については同10%減になると予測している。投資の中心は中国のG10.5対応液晶工場向けであり、G6対応有機ELへの投資は大きく落ち込む。中国では新工場の建設や稼働開始が相次いでいるが、韓国では投資が凍結されている」と述べ、中国頼みのところが大きいことを強調した。
また、韓国の投資動向としては、「Samsung Displayは、G8.5液晶ラインを2019年半ばからQD-OLED(量子ドット有機EL)に切り替え始める見通しである。液晶パネルにして月産14万枚分の生産能力をQD-OLED 3万枚分にシフトすると見られており、その本格量産開始は2020年ころになるだろう。一方、LG Displayは、まずは中国広州のG8.5有機EL工場を立ち上げる予定で、韓国坡州ではG10.5有機ELのテストラインを整備する投資にも着手した。今のところ、蒸着プロセスを採用し、インクジェットプロセスはまだ使わないとみている」と述べた。
さらに、インクジェット方式については「LG Displayは長く技術開発を続けているが量産化に踏み切れていない。中国では、BOEとCSOTがインクジェットでテレビ用有機ELを試作している。日本ではJOLEDが量産工場を2020年にも立ち上げる計画を持っている。いずれも発光材料やプロセスに改善の余地があり、カラーフィルタを併用することになろう。いずれにせよ、今後のディススプレイ技術開発の中心テーマであり、どのメーカーが真っ先に量産に導入するか注視している」と述べた。
中国が進める製造装置内製化
2006年および2017年における世界FPD製造装置市場の国別マーケットシェアを見ると、この間、一貫して日本勢がトップシェアを誇っているが、その比率は66%(2006年)から46%(2017年)へと徐々に落としてきている。とはいえ日本勢は、リソグラフィと真空蒸着という、技術的に一番難しい2大領域で圧倒的な強みを持っており、この2大領域だけで世界装置市場の2割以上を占めている。リソグラフィは売上高最高の領域である。2018年、FPD製造装置市場は縮小したにも関わらず、日本勢だけは、中国およびG10.5/11への市場シフトに的確に対応して売り上げを伸ばした。
一方、この10年間、伸びが著しいのが韓国勢だ。2006年のシェアは18%であったものが、2017年には33%へとほぼ倍増した。韓国FPDメーカーの強みである有機EL向けに特化することで成功してきた。
Annis氏は、「中国政府は、中国製造2025に基づいてFPD製造装置の国産化にのりだしており、補助金を出して地元の装置材料メーカー育成に努めている。いずれは中国国内だけでサプライチェーンを構築しようとしている。このままでは、既存製造装置メーカーは数年以内に中国勢の攻勢で撤退を余儀なくされる可能性もある。日本および韓国装置メーカーは、この点を注視し、差異化できる技術力を高め、技術流出に注意深くなる必要があろう」と述べている。
FPD天気予報は、晴れから曇り、のち雨へ
ちなみにAnnis氏は、恒例となっているFPD天気予報も提示。以下のように解説を行った。
,A@FPD天気予報|
- FPD産業は、2017年はほぼ快晴の素晴らしい年であったが、それ以降は曇りが増えてきて、2020年に製造装置以外の市場は、はほぼ曇りか雨となりそうである。以前からのさまざまなネガティブな予測が現実のモノとなろうとしている。現状分析する限り、楽観的な未来予測することは不可能な状況である。
- なぜ製造装置だけが2020年まで薄日が差しているかというと、中国のG10,5/11液晶パネルおよびG6 有機ELからの注文が出ているからである。巨大工場の建設や操業開始が続く限り、装置産業は潤うことになる。
- パネルの低価格化は、ディスプレイの大型化需要を増しており、これが2019年の景気を下支えしてくれるであろう。
- コストを下げ、性能を上げることができる分野にビジネスチャンスが残されている。インクジェットと消費電力を減らす技術分野がその具体例である。
(次回は3月14日に掲載します)