PwC Japanグループでは今年も入社式をメタバース空間で開催しました。PwCあらた有限責任監査法人(以下、「PwCあらた」)では、新入職員(以下、「社員」)デジタル研修に若手社員からの提案で導入したバーチャル・オフィス・ツールの体験を組み込み、新入社員はオフィスだけでなく仮想空間を活用した社内コミュニケーションの在り方についても学ぶ予定となっています。
このように、新型コロナウイルス感染症の感染拡大から2年間で、働き方は大きく変化しました。この間、若手社員はリモート環境下による業務の変化をどのように感じていたのでしょうか。今回は、入社3年目と2年目の若手社員より、リモートワーク環境下だからこそ実現可能性が広がるイノベーションとその効用、そしてその好循環について紹介します。
リモート環境下でのコミュニケーションの工夫
リモート環境になってからは、こまめにコミュニケーションをとることが難しくなり、「細かいニュアンスが伝わりにくい」「お互いの体調や表情などが直接見えづらくてやりにくい」と 感じるようになりました。結果として、相手に寄り添ったコミュニケーションができなくなり、新たな気づきを共有するなど、一歩踏み込んだ対話のきっかけをつかむのが難しいと感じる場面がありました。
また、以前はミーティングの前後のちょっとした雑談を通じて仕事につながるようなインスピレーションが得られていました。しかし、リモート環境下ではコミュニケーションの余白が少なくなり、決められた会議時間の中でしか会話がないため、画期的な発想が生まれにくいと感じました。
コミュニケーションの余白が減ることに立ち向かうためには、「手段を確保すること」と「その手段を生かそうとする意識を持つこと」の2点が重要だと考えられます。
手段はいろいろと考えられますが、例えば、ビデオ会議システムを利用して、プロジェクトのメンバーが自由に出入りできるバーチャルな作業部屋を作っているチームがあります。プロジェクトのメンバー全員に入室しながらの作業を強制するのではなく、何か話したいことがあればいつでも入室し、どのような内容でも相談できるようにしています。
また定例会議も、特定の目的のために随時設定される会議と比較すると、その業務以外の話をしやすい傾向にあります。もちろん、業務と関係のない話をしすぎることは効率的な会議運営の妨げとなりますが、相手が今どのような業務に取り組んでいるのか、どのような意識で各業務に取り組んでいるか、といったことを共有することはチーム運営上も重要な観点だと思います。定例会議を単なる業務報告の場とせず、ともすれば失われてしまうコミュニケーションの余白を生み出す場所とするという意識が重要です。
このような工夫を行った結果、まだ対面で会ったことがない私たちが、この記事を共同執筆できています。
業務内容のゼロベースでの再検討が始まった
そして、リモート環境において、より効率的に業務を進められる可能性を感じました。リモートワークに移行すると、今までの業務の進め方ではうまくいかない部分が発生します。そこで、既存の業務の進め方をゼロベースで見直した結果、業務を効率化できただけでなく、業務の質も改善できました。その際、私たちのように業務の経験が少ない立場からの率直な意見をSpeak Upすることが歓迎されたのも嬉しかったです。
リモート環境へ移行した際に、自己研鑽も兼ねて前年の業務内容を復習するとともに、改めて分析してみました。内省を兼ねた業務内容のゼロベースでの検討といったところでしょうか。その際に役に立った知識が、昨年に必須研修として受講したデジタル研修で得たデータ分析ツールの基礎知識でした。
当時はデータ分析ツールについてまったく詳しくなかったのですが、「こんな風に業務を進められたら良いな」とぼんやりと考えていた時に、「データ分析ツールがあればできるかもしれない!」とふとひらめき、そこで持った希望からデジタル化への糸口をつかむことができました。まさに点と点がつながり線になる、という感覚でした。
このようにお話しすると、少し大それたことのようにも聞こえるかもしれませんが、実際は、1人で何気なくデータ分析ツールを触っていた時に作ったツールをチームに提案し、その後チームの皆さんの力を借りて少しずつ改善していった結果、他のチームにもお声がけし、ツールを採用していただけたというとても自然な流れでした。
もっと具体的に言うと、通常業務を確実にこなした上で、業務で近い距離で関わらせていただいている方に1人、2人と相談を進める中で、「それではマネージャーに話を持っていきましょうか」と輪が広がり、具体的な話に発展していった、という流れです。
今期はこのツールを利用することで、これまで年間で5時間程かかっていた作業を30分程度に短縮させることが可能になる見込みです。昨年は1分野のみでの導入でしたが、ナレッジの蓄積や自身のスキルアップなどにより、今後は加速度的に導入を進められると考えています。
デジタル化による効率化と、それによって自らに時間と心理的な余裕が生まれることには密接な関係があるのではないかと考えています。すなわち、効率化と自らの余裕の好循環とでも呼べるようなものです。
異なるロケーションのメンバーとの交流が拡大
リモート環境でのコミュニケーションが浸透したことで、海外含め異なる場所で働くメンバーとの会話の障壁が低くなりました。今回のツールを作成する際にも大阪勤務のメンバーに相談したり、別のロケーションの方からデジタルツールに関する研修講師の話をいただいたりしましたし、PwC英国のメンバーとも交流するようになり、コミュニケーションの輪が大きく広がりました。
オフィスでの「なんとなくの会話」が減った一方で、「目的のある会話」はしやすくなりました。そのため、デジタルツールを提案する場合、「デジタルツールのご提案」とタイトルを明確にしたうえでミーティングを開催し、目的に沿って結論を出し、次へつなげるといった進め方がしやすくなったように感じています。
また、こちらは賛否両論あるかと思いますが、オンラインとなったことにより、上位者への提言や大人数でのミーティングの開催がしやすくなったようにも感じています。オンラインでの会話となることで、参加者全員から常に100%の注目を受ける必要がなくなった点についても、ポジティブにも捉えられるのではないでしょうか。
初めは1人の人とのつながりだけだった信頼関係が、次第にコミュニティ全体に広がっていくことなど、リモート環境になったことで、人とのつながりの広がり方をより体感しやすくなったと思います。一つのコミュニティで得た知識をその他のコミュニティに還元することも積極的に行っています。自分の動き方次第では、以前よりもコラボレーションやイノベーションの創出がしやすい環境になったと感じています。
著者プロフィール
本連載は、Tomorrow's audit, today――次世代デジタル監査への取り組みの一環として、PwCあらたの若手が執筆しています。
小菅生 草太 PwCあらた有限責任監査法人 アソシエイト
下村 有乃 PwCあらた有限責任監査法人 アソシエイト