HCIが実現するハイブリッド・マルチクラウドの未来

デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けて、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)が再び注目を集めています。日本企業がDXに取り組む中、HCIがもたらすメリットとは、どのようなものでしょうか?

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人々の生活を支える都市機能の構築・維持には、堅牢で柔軟なインフラが不可欠です。これはあらゆる企業や組織にも当てはまります。かつてないほど複雑化した現代のインフラは、企業の円滑な運営と成長を妨げる要因の1つになっています。ITの複雑性を完全に排除することは容易ではありませんが、適切な基盤があれば管理することが可能です。

HCIは、そうした複雑なIT管理を簡略化できる技術で、ハイブリッド・マルチクラウドの導入に最適な基盤です。現在、全世界で数千社の企業がコアビジネスのアプリケーションをHCI上に構築しています。HCIが選ばれている理由は、管理のしやすさとアジリティ(俊敏性)です。

  • 3層構造システムとHCIソフトウェアの比較

    3層構造システムとHCIソフトウェアの比較

サイロ化を解消することでアジリティを実現

HCIは、システムの仮想化とシステム連携により、必要に応じて拡張も縮小もできるため、特定のハードウェアや外部ベンダーに依存することなく、運用できます。

そのため、ITインフラ運用に対する従来の認識を一新させ、運用管理者の負荷を軽減できます。HCIが登場してから機能は多様化し、進化し続けてきました。

現在、HCI上で実行されるソフトウェア、アーキテクチャ、データサービスの成熟度と安定性は、企業のハイブリッド・マルチクラウド戦略の進展に可能性が見出せるだけでなく、ミッションクリティカルなアプリケーションの実行が可能な基盤として活用できる水準であることを意味しています。

人材不足をテクノロジーで解決

日本でも、レガシーシステムからの脱却を図るべく、自動車業界などにおいてDXが進んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大により、顕著になったリモートワークに対する需要は日本企業が最新技術を導入するきっかけになりましたが、HCIを導入した企業は、リモートワークの実現に加えて、ビジネスの価値向上につながるメリットがあると考えています。

例えば、経済的・時間的コストの削減です。日本に限らず、多くの市場でIT人材の確保が難しくなる中、貴重なIT人材の能力を最大限に引き出すことが重要です。IT担当者にビジネスの価値創造を担ってもらうこと、また社内におけるITスキルの差を解消することが企業の競争力強化につながります。

そのためには、IT人材をシステムテストやトラブル対応などから、できる限り解放しなければいけません。その実現に向けて、導入・構築・拡張などの運用作業の軽減を可能とします

HCIには中長期的なイノベーションはもちろん、短期的なメリットもあります。HCIを導入した場合のROI(投資利益率)は、平均約7か月でITの調達コスト削減やアプリケーション稼働率を向上する形で現れます。

航空会社のような大規模な消費者向けビジネスでは、メンテナンスに1日かかる場合、莫大な経済的コストが発生しますが、HCIへの移行により作業時間を約1時間に短縮しています。経済的・時間的コストを削減することで、ビジネス計画を変革できます。

レジリエンス向上のためのツール

多くの企業にとって、事業継続計画(BCP)や災害復旧計画はあくまで保険のように「あれば良い」という考えから、過去2年の予想外の急激な変化に直面しながら瞬時に対応するために、事前計画は不可欠であることがわかりました。レガシーシステムでのフェイルオーバーは、複雑で不確実性の高い操作です。

一方、HCIではボタン1つでテストを行うことができ、より確実な予測に基づいたフェイルオーバーが可能になります。大規模な台風や地震が発生した場合、復旧までにどのくらいの時間を要するのかを正確に知ることで、災害発生後の計画が立てやすくなります。これは企業だけでなく、災害時に地域住民を支援する地方自治体にも当てはまります。

インフラを「意識する必要のない」環境にするHCIは、コストパフォーマンスの高いソリューションです。IT予算を一度に決めて消化する、従来のシステム調達方法は、多くの企業や組織が躊躇する要因となっています。HCIは小規模に導入し、成長に合わせて柔軟に拡張・縮小できるため、段階的に予算を組めます。まずはスモールスタートで始めてみることをおすすめします。

HCIであれば、何度も調達部門に追加予算を申請する必要もありません。5年後に必要になるクラウドソリューションは、現在使用しているものとは異なり、変化している可能性もありますが、その変化に対応できるHCIのような柔軟なプラットフォームを準備しておけば、長期計画を立てることができます。

DXは、人や企業によって異なる意味を持つ言葉です。しかし、どのような場合においても、HCIを基盤にしておくことで、あらゆる事態に対応できます。冒頭に触れた都市機能の例えを思い出してみましょう。沼地に、高層ビルを建てることはできません。

適切な基盤やサポートがないと、大きな展望も崩れてしまいかねません。頑丈かつ汎用性のある基盤さえあれば、超高層ビル、スポーツ施設や美術館など、さまざまな建物を建てることができます。ITにおいても、同じことが言えます。適切な基盤を用意し、DXをデザインしましょう。