デジタルハリウッド大学大学院教授、ヒットコンテンツ研究所の吉田です。この「吉田就彦の『ヒットの裏には「人」がいる』」は、さまざまなヒットの裏にいるビジネス・プロデューサーに注目して、彼らのビジネスの仕掛け方やアイデア、発想の仕方などを通じて、現代のヒット事例を分析していくコラムです。

第2回目のテーマは、「ビジネスを成功させるプロデュース7能力」

今回は、先日2月11日にテレビ東京で放送された経済ドキュメント番組「時創人 ビジネスプロデューサーFILE」にちなんでお送りしたいと思います。実は私がこの番組のナビゲーターを女優の井上和香さんと一緒に務めました。日本を元気にするために、さまざまなビジネスにチャレンジしている企業のTOPなどのビジネス・プロデューサーにスポットを当てて、そのビジネス成功に至るプロデュース能力に迫るというものです。

この番組では、経営者や企画者、マーケッターなどのビジネスパーソンをビジネス・プロデューサーと位置付けて、この大変な時代でビジネスを成功へと導くヒントを教えていただこうというのが企画のコンセプトです。

番組の中で、私がこの2月末に出す本『アイデアをカタチにする仕事術 ビジネス・プロデューサーの7つの能力』で定義したビジネス・プロデューサーの7能力をそれぞれの出演者の皆さんの能力として解説し紹介していきました。

本日のコラムは、番組では時間の関係で十分に伝えきれなかったかもしれないその能力について書いていきます。それらの能力をビジネス成功への有効な能力として、皆さんの心に留めていただければと思います。

ビジネス・プロデューサーの7つの能力とは?

「ビジネス・プロデューサーの7つの能力」とは、いわゆるテレビや映画などのコンテンツ業界だけに限らないで、広く一般のビジネスにも通用するのではないかと私が思っているビジネス能力のことです。それは、「デジタル化」「フラット化」「グローバル化」という、21世紀が直面するパラダイムシフトによる社会変革から必要とされている「プロデュース」という仕事スタイルに必要な能力なのです。

「デジタル化」では情報がデジタル化されることで逆に人間性が重要になり、「フラット化」ではより現場が重要になることを、「グローバル化」では他をリスペクトする精神が欠かせないということで、私はこれからの時代で成功していくためには、「プロデュース」という仕事スタイルが必要で、それを実行していく能力として「ビジネス・プロデューサーの7つの能力」を以下のように定義しました。

ビジネス・プロデューサーの7つの能力

発見力 チャンスやヒットの芽や新しい人財などを発見する力
理解力 世の中の動きや物事の本質を理解する力
目標力 ビジョンを描きゴールをイメージできる力
組織力 さまざまなビジネス資源を組織して有効活用する力
働きかけ力 「人」や組織を励まし、力を吹き込み、目標に向かって育てる力
柔軟力 トラブルや環境変化に対応するなど、柔軟に物事を調整する力
完結力 さまざまな事を乗り越え実行し、達成して、次への蓄積とする力

ビジネス・プロデューサーの全体像

「発見力」は、上の図にあるように、そのビジネスを成功させるために必要な「人」や、ヒットの芽であるヒットシグナル「HS」を発見する能力で、ビジネス・プロデューサーが発揮する能力の1番目の力です。ビジネス資源をまずは発見することでビジネスがスタートするのです。「時創人」では、ネットによる保険業という新しいビジネスの可能性を発見したSBIアクサ生命保険の木村社長を「発見力」のプロデューサーとして紹介しました。

次の「理解力」は、発見した「人」なり、「HS」の本質的な可能性や、そのことと世の中の動きがどのようにリンクするかといったことを理解できる能力です。それはせっかくのチャンスを逸したりすることがないようにタイミングをうまく捉える力でもあります。同じことをやってもタイミングが合わないとビジネスはうまくいきません。この「理解力」のプロデューサーとして、「時創人」では、これまでのクライアントニーズのさらに深いニーズを探り出し、十分に理解して事業化し成功したエン・ジャパンの鈴木社長、腰痛という病の原因を問診によりより深く理解することで痛みをとることに成功しているさかいクリニックの酒井代表の二人を「理解力」のプロデューサーと紹介しました。

「目標力」は、発見し理解したビジネスチャンスを事業ビジョンとして掲げ、自他ともにそのビジョンを周知徹底させる能力のことで、ここまでの能力が、ビジョンを0から1へ生み出すために必要な能力と定義しています。

「組織力」は、0から生み出された1を大事に大きくして100という果実を得るまでの1 - 100実現フェ-ズのはじめに使う能力で、「人」を巻き込み、さまざまな経営資源を組み合わせる能力です。「時創人」では、専門医のコラボレーションで年中無休を実現した医療プラットホームを組織した医療法人社団 めぐみ会 田村豊理事長を取り上げました。

「働きかけ力」は、集めた「人」や組み合わせた「HS」をさらにもっと大きく、強く、有効に力をつけさせる能力で、「柔軟力」は、さまざまなビジネス環境の変化やトラブルに柔軟に対応できる能力、そして、最後が100の実現までなんとか持っていくフィニッシュ能力であり、そこから得たノウハウを次回の発見につなげるような力である「完結力」です。

このような「ビジネス・プロデュ-サーの7つの能力」が、私はこれからの時代のビジネス成功には欠かせないと考えているのです。

番組「時創人」では、これらの能力を発揮された方々にスタジオに来ていただいて、さまざまなビジネス成功への知恵をお聞きしました。この企画は単発の特番企画だったのですが、機会があればまたこのような日本の元気に寄与できそうな番組に出演できればと思っています。

執筆者プロフィール

吉田就彦 YOSHIDA Narihiko

ヒットコンテンツ研究所 代表取締役社長。ポニーキャニオンにて、音楽、映画、ビデオ、ゲーム、マルチメディアなどの制作、宣伝業務に20年間従事。「チェッカーズ」や「だんご3兄弟」のヒットを生む。退職後ネットベンチャーのデジタルガレージ 取締役副社長に転職。現在はデジタル関連のコンサルティングを行なっているかたわら、デジタルハリウッド大学大学院教授として人財教育にも携わっている。ヒットコンテンツブログ更新中。著書に『ヒット学─コンテンツ・ビジネスに学ぶ6つのヒット法則』(ダイヤモンド社)、『アイデアをカタチにする仕事術 - ビジネス・プロデューサーの7つの能力』(東洋経済新報社、2月末発売予定)など。

「時創人」とは…

時代を動かす"ビジネス・プロデューサー"たちにスポットを当て、ビジネスの裏にある達人の能力から、現代を生き抜く智恵を学んで行く番組「時(じ)創人(そうじん)」。100年に一度と言われる不況、こんな時こそ必要なのが時代を動かす"プロデューサー"なのだ。番組では、敏腕プロデューサー・吉田就彦とテレビや舞台などで幅広く活躍する女優・井上和香をナビゲーターに、「日本を元気」にしていくさまざまな分野の"ビジネス・プロデューサー"たちを取り上げ、そのプロデュース能力に迫り、現代を生き抜く知恵や創造力を学んでいく経済ドキュメント番組。