あいまいな記憶をはっきりさせようとして、情報源を思い出そうとしても、思い出せないことがあります。特に書籍の場合は、デジタル情報と違って検索しにくいため、思い出すのが困難です。今回はデジタルツールを使って、書籍を情報源として整理する方法を紹介します。
よくある問題:それをどこで知った?
今のような情報過多とも言える時代には、あって当然、もしくはもうあきらめてしまった方がいい問題かもしれません。「情報源健忘」という心理現象があります。 もちろん以前から「情報源健忘」という問題は存在していました。つまり、改めて知識を得たのだけれども、その知識をどこから仕入れたか、思い出せなくなってしまうのです。
これは、いろいろな場面で問題になりますが、とりわけ、おぼろげな記憶をはっきりさせようとしたとき、人が悩むことなのです。たとえば、見たことがあるような、ないような人の顔が目に入ってくると、たいていこう自問します。「どこかで見たことがあるような気がするんだけど・・・どこで会ったんだっけ・・・」
これと同じように、「どこかで聞いたことのあるような話なんだけど、どこで聞いたんだっけ?」とか、「どこかで読んだような話だけど、何の本だったかな?」という自問を頻繁にしている人がいます。情報源を明らかにしたくなるのは、たいていの場合、情報自体の記憶が曖昧になってしまっているからなのです。つまり、ほとんどの場合、情報が完全にクリアになっているけれど、情報源だけが失われている、などということではありません。
この直感に従うなら、情報源が明らかになれば、情報に関する肝心の記憶も、もっとクリアになると期待できそうです。そこで今回は、情報源を明らかにするという視点で、情報整理ハックを考えてみたいと思います。とくに、書籍という情報源に話を絞ります。
ライフハック:少しでも読んだら「読書中」にする
読書に絞って話を進めるなら、「情報源健忘」の予防のために、自分が最近読んだ本をすべて一覧できるようにしておくと、かなり便利そうです。多少のまめさは必要ですが、これはそれほど苦労せず実現可能です。以前紹介した、メディア・マーカーというツールを使ってみましょう。
メディア・マーカーはあらゆる方法で蔵書管理、読書管理のできる、まさに現代的なITツールと言えますが、これは本を登録できるとともに、登録した本をタグで管理することができます。
タグですからどういう切り口から管理してもかまいません。今回は、「読書中」と「読了」というタグについて簡単に触れておきましょう。メディア・マーカーではデフォルトで、「未読」「読中」「読了」の3つの状態を選択することができます。これの選択は非常に簡単で、登録した本についてのチェックボックスにチェックを入れるだけです。
「未読」はこれから欲しい本などについて付けておくとよいのでしょうが、私が重要だと思うのは「読中」と「読了」です。書店で立ち読みした程度の、ほんのわずか触れただけの本であっても、私は「読中」にチェックを入れています。そうすることで、自分の得ている知識の「情報源」が、驚くほどクリアになるからです。
もちろん、いつも自分が持っている知識の「情報源」が何であるか、コンピュータみたいに答えられるということではありません。そうではなくて、「あれ、こんなようなことを読んだ気がするのだけど…」と思って詰まったら、「読中」のリストをチェックしてみると、「そうだった!」とすぐに思い出せるようになった、という話です。現実には、新聞、雑誌、ネットからの情報が頭の中に混在しているので、これであらゆる問題が解決したわけではありません。しかし、本で読んだ知識は、ある意味で「特別視」していますから(信頼度が高いという意味で)、当然、記憶定着率も私の中では比較的高くなっています。結果として、本から得た知識の「情報源」が確認できるということは、安心感が高まりますし、ストレスからも解放されやすくなっています。
またこの方法は、なんだか面倒そうに見えるでしょうが、iPhoneを使ってやればそんなに面倒でもありません。読んだ書籍のタイトルの一部を覚えておいて、書店を出たらすぐにiPhone(EVERNOTE)に録音しておきます。これを後ほどメディア・マーカーから登録し、「読中」にチェックをかたはしから入れておけばいいのです。所要時間は、登録時間だけに絞っていえば1日7分程度です。
まとめ 情報と情報源をマッチさせる
こんな方法では、ある情報を得ようと思ったときに、どうやって当該の情報に確実にアクセスできるのか、と思われるでしょう。その方法を私もずっと模索しているのですが、どうしてもうまくいかないことというのはあります。それもアナログが対象ですと、けっこう頻繁にあるのです。有効といわれる色々な方法を試しているのですが、いまだに現実にうまくいかないことが多いのです。
ただ、だんだんと強く意識するようになってきたのが、「思い出す」努力を軽く見過ぎる方法は、結局非効率的な結果に終わることが多い、ということです。デジタル技術は、なんだかんだといってもどんどん信頼されるようになってきています。それに反比例してとはいわないまでも、つられるように、「人間の記憶力など信頼できない」という意識は強まっているように思います。
今回ご紹介した「方法」は、思い出したい「情報」と、最近目にした「情報源」とを、アタマの中で結びつけようという試みです。確かにこれでは、キーワード検索のようには行きません。しかし、すべてが目の前に出てくると、想像以上に当該情報に関する記憶が活性化されるものです。