よくある問題 どうしてここになくて、そこにある?

昔大学の図書館などで、『なぜこの本が「文学」のコーナーになくて、「社会科学」にあるのだろう?』という疑問を強く抱いたことをまだ覚えています。おそらくはなかなか見つけられなくて、苦労をしたのでしょう。

タグ付けであれラベル分類であれ、何しろ「人の分類基準」というものはわかりにくいものです(言うまでもなく、私がブログなどでやっている分類も、訪問していただいた方には唾棄すべきものかもしれません)。

オンライン書店などで本を探すときにも、もっぱら使うのは検索窓で、「分類」などはまず使いません。少なくとも私はそうです。「心理学」「脳科学」などと探しても、面白そうな本はなかなか出てきてくれないという苦い経験は、たくさんあります。

すでにこの連載でも話題にしましたが、自分で付けているタグやラベルの一貫性を保つのは難しいことです。ということは、多くの人にとってもそうだということになるでしょう。それだけに、人が付けてくれた分類名にしたがって情報を探しても、なかなかお目当ての情報は探し当てられないものです。

だからこそインターネットではほとんどの場合、検索窓が使われます。思えばかつて、ヤフーの分類にしたがってあれこれ探していた時代が懐かしく感じられます。ずいぶん時間のムダをしたものだと思います。

ヤフーの分類がよくできていないということではないのです。分類に使う「名前」という基準は、分類する側と、情報を検索する側で、なぜかイメージがはなはだずれていることが多い、ということなのです。

ライフハック 分類名ではなく、分類グループの利用価値に着目する

しかし、私はたとえばAmazonで書籍検索をする際に、検索窓からではなくてカテゴリ検索することも、最近はあるのです。ただしその際、カテゴリ名だけに頼ると、自分が欲しい本がほとんど含まれていないリストにしかたどり着けません。これは冒頭でお話ししたとおりです。

たとえば、「心理学」というカテゴリを探しても、私の欲しい本がまったく出てきません。しかし、私は実際に「心理学関係書」を書店で買い求めるわけですし、それらがAmazonにないとは思えません。

そこで、私が実際に購入した本をいくつか検索し、ヒットした本の「カテゴリ情報」をチェックしてみて、それらの本がどんなカテゴリに入っているかを確認します。そうすることで、私が見つけたい本のカテゴリを見つけるわけです。

たとえば私の愛読書である『脳の中の幽霊』(V.S. ラマチャンドラン、サンドラ ブレイクスリー著 角川21世紀叢書)が含まれている分類には、なかなかたどり着けませんでした。今では簡単に見つけられます。以下のような表示があるからです。

Amazonのカテゴリーランキング

つまりここから、「脳の知識」のカテゴリを探していると、私が欲しそうな本がズラリと並びます。このようにして、用意されたカテゴライズを利用するという方法は、慣れてくると非常に面白いものです。

カテゴライズとは難しい作業だと思います。しかし、名前の付け方、階層の位置づけなどが、私の頭のそれとは違っていても、私が「同じようなカテゴリだ」と思っている本のリストは、カテゴリさえ見つけ出せば、ちゃんとリストアップされてくるわけです。

先日、はてなブックマークなどのソーシャルブックマークのタグについて、これとほぼ同じ考え方が紹介されていました。

  ・タグに何が書かれているかは見ず、タグによって作られた「グルーピング」の方に注目する。
・タグで作られたグルーピングを「コンテンツクラスタ」と名付け、異なるユーザー間でコンテンツクラスタ同士がどの程度重なり合っているかを見る。
(爆笑と雷鳴に包まれた「第1回SBM研究会」より引用)

つまり、グルーピングの命名について、自分と他人が同じであることはあまり期待できないというわけです。それよりも、グループ化される情報の傾向については、自分と一致する人がいるかもしれないと期待するわけです。

まとめ

オンライン書店にはまっている人ですら、いわゆる「リアル書店」にしょっちゅう足を運ぶのは、「ふと目につく面白そうな本に出会う」頻度が、リアル書店の方が高いからでしょう(そして結局本屋が好きだからでしょう)。

それは否定できませんが、私は今回のような「カテゴライズ」を利用することで、少しはリアル書店の「ブラウジング」に近いことがやれているような気がします。これを実行して以来、「出会う」確率はたしかに上がったわけです。

思えば私自身、検索サイトは言うに及ばず、ブログやRSSリーダーですら、「検索窓」を使うか「最新エントリ」をチェックして立ち去ることがほとんどになっています。ブログのカテゴリやタグは、管理人が扱えれば十分なものなのかもしれません。しかし、せっかく制作者が用意してくれる分類軸なので、それが活用できるなら、それに超したことはないとも思います。将来は分類の構造だけを取り込み、訪問者がその構造を、自分で作成した分類軸に「インポート」できるような仕組みができると、面白いかもしれません。