5年ぶりのシステム刷新でSaaSの利用を検討
日庄は、新聞広告製版を主業務として1967年に設立。その後、印刷物全般に関する企画・制作へと業務の幅を広げた。現在では広告制作、製版、印刷全般、写真・CG作成などを中心に、あらゆるグラフィック制作に対応する企業としてクリエイターの創造活動を支えている。
同社が業務効率化のためにグループウェアを導入したのは2004年のことだ。当時、機能面などからネオジャパンの「desknet's」を選定し、自社サーバ上で稼働させていた。そのバージョンアップを検討し始めたのが2008年9月頃だったという。当初は単純にソフトウェアをバージョンアップすることが計画されていたが、約5年間使い続けたシステムは老朽化しており、ハードウェアの一新が必要なことが判明する。
「ハードウェアの入れ替えと大幅なバージョンアップを一度に行うとなるとコストがかかりますし、当然使い勝手も変わってきます。システム担当者は2名のみで、desknet'sの担当は私1人。この状態でシステムを移行して自社で運用するのは現実的ではないと考えたのが、SaaSの利用を検討したきっかけです」と、総務局 システム統括グループの佐々木琢耶氏は語る。
「使い勝手を変えない」「5年間のコストが安い」が導入の要因
サービス選定にあたって最も重視されたのは、エンドユーザーの使いやすさだ。「主に使われていたdesknet'sの機能はインフォメーション、スケジュール、設備予約でしたが、現場では特に不満も出ることなく利用されていました。この慣れ親しんだ環境を維持したいと考え、desknet'sで利用している機能をSaaS型で提供してくれるサービスを探したのです」と佐々木氏。
当時、desknet'sの機能をSaaS型で提供するサービスは複数存在したが、なかでもセキュリティ対策がしっかりと行われ、かつその内容が開示されていることと、開発元がサービスを提供しているので常に最新バージョンが利用できることなどを理由に、ネオジャパンの「Applitus」が選定された。
同社が自社運用からSaaS型へ乗り換えた決め手は、今後5年間の運用コストだった。ハードウェアの購入費用と5年間の利用料の単純比較ではなく、自社運用した場合の場所、空調の管理、システムメンテナンスにかかるコストまで数値化して比較した。
「当社は深夜でもデータのやり取りが発生しますし、休日出勤する者も少なくありません。こうした業務に対応すべく、24時間×365日のサポートを実現するには外部サービスの利用が不可欠です。これが最も高くつきます。自社運用とSaaS利用のトータルコストをそれぞれ算出したところ、5年で100万円近い差が出ることがわかりました」と同氏は語る。
明確なコストを算出して行われた提案はすぐに受け入れられ、2008年11月には導入が行われた。ユーザー数は100。「もし、ユーザー数が200以上の企業なら、当社ほどコストメリットは出ないかもしれません。自社の利用状況を見極め、的確なコスト算出を行うことが、SaaS導入を成功させるカギとなるでしょう」と同氏は語る。1人当たりのコストが明確になったことで、今後、どこにコストをかけるべきかも見えてきたという。
システム管理者の負荷を大きく低減
コストメリット以外に、大きな効果が感じられたのは情報システム部門の負荷低減だ。ほぼ1人でシステムの面倒を見なければならない立場にある佐々木氏は、これまで抱えていた緊張感とプレッシャーから解放されたという。
「前任者は夜間や休日に携帯電話で呼び出されることもあったと聞いています。私自身は経験がないのですが、やはりApplitusを導入するまでは枕を高くして眠れませんでした。業務時間中のサポートもかなり減り、社内で運用していた時のようなHDD障害の恐怖もなくなりました」と佐々木氏は話す。
広告に携わる企業は他社の情報を預かることが多いため、ISMS(Information Security Management System:情報セキュリティマネジメントシステム)を取得している事業者を利用しているというのは、企業の信頼性の向上にもつながる。また、現在のところ大きなトラブルは出ていないが、開発元が直接行っているサービスだけに、いざという時の安心感も大きい。
社内の定着度に合わせて利用機能を拡張
導入にあたって、本番移行はわずか2~3時間程度で行うことができ、週末を利用したこともあって業務はほとんど止めずに移行が完了したという。しかし、利用者側の準備には少し時間をかけ、オプションの教育サービスを利用している。
「もともと使っていたdesknet'sのバージョンが古かったため、教育サービスを利用しました。これにより、新機能はもちろん、使い切れていなかった機能も知ることができ、エンドユーザーから使い方を提案する気運が高まりました」と佐々木氏は語る。
導入後、新たに使い出した機能として、文書管理機能がある。社内文書や業務手順書などのドキュメントを最新の状態で保つため、関連部署ごとにアクセス件を設定して管理するようになった。また、今後はモバイルアクセスやファイル転送機能、プロジェクト管理なども利用しようと検討中だ。同社では、従業員のApplitusの活用度合いに応じて、徐々に利用シーンを拡大し、利便性を向上させたいとしている。