SaaS型サービスからの選択ではなく「使えるグループウェア」を選べ

クラウド/SaaS型グループウェアを導入する際、「機器やソフトウェア自社で抱える必要がない」、「管理者が不要」といったSaaSのメリットが見えてくると、さまざまなサービスを単純に比較してしまいがちだ。SaaS型でサービスを導入するという前提条件があるだけに仕方がないことだが、まずはグループウェア全体から「使える」サービスを探してみたい。それには、グループウェアを自社でどういう風に使いたいのかをはっきりさせる必要がある。

多機能ならばよいというものではなく、使い方に合致するものが最適だ。すでにグループウェアを導入している企業なら不満点などの洗い出しをするとよいし、初めてグループウェアを導入する企業なら同業種や同規模企業の導入事例を探してみるのも1つの方法だ。もちろん、コンサルティングサービスを利用すれば、より明確に自社のニーズを把握することができるだろう。

ネオジャパン 取締役 経営企画室 室長 オンデマンド・アプリケーションサービス・プロジェクト統括 プロダクトマーケティング統括を務める狩野英樹氏は、「自社にとって最適なグループウェアアプリケーションを選定してから、そのサービスのSaaS型を選択すべき」とアドバイスする。

同氏によると、新興アプリケーションの中にはSaaS型でしか提供していないものもあるが、できるだけサーバインストール型パッケージでの実績があるものを選定すべきだという。「長年の実績があるということは、ユーザーの要望を熟知しているということ。実績のあるアプリケーションを選定することが、失敗のないグループウェア導入への近道です」

同様に、無償サービスの利用も避けるべきだ。無償には無償である理由がある。業務で使いこなせるだけの十分な性能を持ち、SLAが守られる無償のサービスは少ない。また、電話サポートなども行われていないサービスが多く、業務に支障の出る可能性が高い。

30日程度の試用期間は必須条件

SaaS型サービスの強みは、比較的簡単に導入できることだ。これは導入前にも大きな強みとなる。なぜなら、とりあえず試用してから本格導入するかどうかを判断できるからだ。

「最低、1ヵ月は試用を行うべきです。そうすれば、月次処理を一とおり行ってから使い勝手を判断できます。業務をわかっているベンダーであれば、必ず30日程度の試用期間を設けているものです。Applitusも当然、30日の試用期間を設けています」と語る狩野氏は、「試用期間がない、もしくは非常に短いサービスは、十分試したうえで選択してもらえる自信がないとも考えられます」と指摘する。

主要なSaaS型グループウェアの試用期間

試用期間が長すぎても本導入へのきっかけを失ってしまうが、やはり業務の流れを一とおり試せるだけの時間は必要だ。アカウントのセットアップが済めばすぐに使えるSaaS型の強みを生かしつつ、十分に使って納得した上で選定したい。

自由度より標準機能の充実が大切

「オプションの豊富さ」や「ユーザーの自由度が高い」という売り文句は一見魅力的だ。しかし、実際には基本機能が充実しているほうが使いやすい。また、将来的に必要になりそうな機能が標準で揃っているほうが最終的にはトクなのだ。なぜならば、オプション機能を利用する際には追加のコストが発生するからだ。

また自由度の高いサービスは、言い換えれば手のかかるサービスにもなる。標準機能で十分使えるならば問題はないが、カスタマイズの余地があるとつい手を入れたくなる。標準機能が十分ならば、自由度は高すぎないほうがIT部門にとって有益だ。

「何のためにSaaS型グループウェアを導入するのかを考えれば、自由度の高さは魅力にならないはずです。IT部門の負担軽減という目標は、自由度の高すぎるサービスでは実現されません」と、狩野氏は指摘する。

適正料金は1人当たり1ヵ月500円程度

1ユーザー当たりの1ヵ月の料金は500円前後に設定しているSaaS型グループウェアが多い。現在はこの価格帯が相場と言えるが、早くからこの料金で提供していたのがApplitusだ。「当社は十分な計算を行って、この価格でも利益が出る仕組みになっています。しかしなかには相場に合わせるため、ムリをしてこの価格帯でサービスを提供している事業者もあるようです」と狩野氏。

あまりにも苦しい料金設定のサービスは将来性を考えると不安がある。かといって、「料金の高いサービスが必ずしも安全なわけではない」という。「Applitusを提供してきた経験から、十分な機能を十分なサービスレベルで提供する際、500円は適正価格だと判断しています。これが実現できないサービスには何か問題があるはずです」と、狩野氏は厳しい指摘をする。

考えられる問題はいくつかある。1つは、不要な機能が多く盛り込まれているために、価格も高くなっているというケースだ。また、開発や運用にコストがかかっているため、機能に見合わない価格になっているケースもある。これは、順調なバージョンアップなどが望みづらくなる問題にもつながる。

そして最大の問題は、開発元とサービス提供ベンダーが別というケースだ。開発元の利益に加え、提供ベンダーの利益も確保しなければならないため、提供価格はどうしても高額になる。また、価格以外でも問題が出やすい。

例えば、機能に関する質問が開発元にしかわからない内容の場合、提供ベンダーを介して開発元に問い合わせることになり、迅速な対応は望めない。また、次期バージョンへのリクエストなども届きづらくなる。不自然な価格から、こうした利用していく上でのさまざまなデメリットが透けて見えてくる。

繰り返しになるが、SaaS型グループウェアを導入する際は目的を明確にし、将来的にそれを実現できそうなサービスを妥協せずに選定することが重要だ。次回はコスト削減、IT部門の負担軽減、最新技術の導入という、グループウェア刷新を考える多くの企業が目指す目標を、SaaS型グループウェア「Applitus」導入で達成した企業を紹介しよう。