港区赤坂にオフィスを構える一般財団法人日本ガス機器検査協会は、家庭や飲食店、食品工場などで使われるガス機器の安全性確認だけでなく、多くの第三者認証サービスを提供している。社外へ出向くことも多い業務のなか、モバイルで利用できるメールを探したことから始まったGoogle Apps導入は、多彩なアドオンも積極的に利用しながら段階的に進められた。

身近な安全から環境保全まで幅広く検査・認証サービスを提供

日本ガス機器検査協会本部

JIAマーク

家庭のガス機器に、一筆書きした炎のマークがついているのを知っているだろうか。マークの下には「JIA」とあるはずだ。このマークはガス機器の性能と安全が、法律・規格・基準などに適合していることを証明しているものだ。メーカーが製造した機器について検査を行い、このマークを発行している第三者機関が日本ガス機器検査協会だ。

一般財団法人 日本ガス機器検査協会 総務企画部 総務企画グループ   白井英嗣氏

「ガス機器は事故があれば命に関わるものもあります。その機器を検査するというのは、命と向き合う仕事です。現在はそこで得たノウハウを活かして、さまざまな第三者認証サービスを提供しています」と語るのは総務企画部 総務企画グループの白井英嗣氏だ。

現在の日本ガス機器検査協会は、各種ISOや食品関連の規格に関して認証を行うマネジメントシステム認証サービスと、土壌調査と対策、森林認証といった環境ソリューションも提供。必ずしもガスとは関係ない分野まで対応する状態にあり、スローガンとして「安全から地球環境まで 安心できる社会づくりに貢献します」という言葉を掲げている。

外出先で使えるメールとグループスケジュールでGoogle Appsを選択

従来は社内にSMTPサーバを設置し、Outlookを使ってメールの送受信を行っていたという。基本的にオフィスにいる仕事のスタイルならば問題ないのかもしれないが、日本ガス機器検査協会の場合はそうではなかった。

「ガス機器の検査にあたっては、メーカーの工場に出向いたりもします。もちろん、ISO等の認証でもそうですね。環境ソリューションでは工場や建物跡地といった現場にも行きます。どうしても外出が多くなる仕事なので、外でメールを見たいという要望がありました」と白井氏は語る。

本格的なメールシステム移行を検討しはじめたのは、2012年末のことだという。当時はWebメールのみを導入するつもりで製品の検討を行っていたが、途中から統合ツールの利用へと方針が転換されたという。

「Webメールを検討していたところに、Office 365が登場しました。メールだけでなく他の機能も統合できるのだと気づいたところで、当時別の製品を使っていたグループウェアについても乗り換えることを検討しはじめました」と白井氏。条件になったのはモバイルから利用できるメール機能と、グループで活用しやすいスケジューラーがあることだった。

「そこで思い出したのが、以前サテライトオフィスが開催したセミナーに参加したときのことでした。Google Appsなら低コストで必要なものが揃うはずだと思ったのです。このとき、サテライトオフィスが提供しているアドオンである、組織カレンダーを利用することが前提条件だと考えていました」と白井氏。2013年4月にテスト導入を行った後、5月には本格的な導入へ向けて動きはじめた。

社員の声を聞いた段階的な乗り換えで導入に成功

社内向けにはコスト削減という言葉を多用して提案を通したと白井氏は語る。従来利用していたSMTPサーバやグループウェアを使わなくなることによる単純なコストカットのほかに、頻発するOutlookの不具合がなくなることで、対応する手間がなくなるというメリットもある。

「説明会のほかに動画で使い方を紹介したり、Q&Aを充実させたりしました。一気に乗り換えてしまうのではなく段階的に乗り換えたので、そうしたQ&Aの公開は旧グループウェアで行っていましたね。最初に現場に導入したのは、一番大きな問題だったメールです」と白井氏は語る。

グループウェアの契約期限が2014年9月まで残っていたため、そこまでにすべての機能を稼働させることを目標に、段階的な導入が行われた。2013年9月にメールの乗り換えを実施した後、2013年12月にはスケジュール機能を組織カレンダーへ移行。続いて、2014年4月にはワークフローを導入し、7月には掲示板も導入した。このうち、ワークフローや掲示板もサテライトオフィスのアドオンだ。

「一気に乗り換えるのが大変だから段階的にしたという部分もありますが、現場もおかげで慣れてくれたと思います。ポータルを以前使っていたグループウェアに似た作りにして、アイコンも現場の希望を取り入れて作りました」と白井氏は語る。

Q&Aの掲載場所も乗り換えに合わせて途中からGoogle Appsへ変更され、見た目を似せたわかりやすいポータルとともに自然な形でユーザーが移行できるように進めたおかげで、現場からの大きな反発はなかったという。

当初は旧グループウェアで公開していたQ&Aも導入の流れに合わせてGoogle Appsへ移された

アイコンのデザインをユーザーリクエストで作るなど使いやすさを考えたポータルトップ画面

利用者が多くネット上に情報が溢れているGoogle Appsは管理負荷を下げる!

導入後、管理面負荷はかなり下がったようだ。「とにかく楽になりましたね。対応すべきものが一つにまとまっていますし、メールの設定もシンプルです。シングルサインオンなどアドオンもいろいろ使っていますが、問い合わせが増えたということはありません。機能的にも満足です」と白井氏。

特にGoogle Appsの大きな優位点としてあげられたのは、ユーザーが多いことだった。利用している人が多いぶん、つまずくようなポイントに関してはインターネット上に情報が蓄積されている。「困ったときには検索すればわかるので、管理側まで問い合わせが来ないのでしょう」と白井氏はそのメリットを語った。また、機能的な問題が発生したときの対応はGoogleの行動を待つ形になるため、社内で慌ただしく対応しなくて済むようになったともいう。

現在、部門長にはiPadを貸与し、外出先でもメールが利用できるのはもちろん、ワークフローの承認作業なども手元で行えるようになっている。部門長の外出によって業務が止まってしまうということも少なくなった。必要なユーザーには誓約書を交わしたうえで端末申請を許可するなど、モバイルでの活用も盛んだ。「現在は他社のWeb会議システムを利用していますが、今後はチャットやハングアウトも使っていきたいですね。Googleドライブの利用も考えています」と白井氏は利用の拡大にも積極的だ。

多くのユーザーがスムーズに使いこなすシステムとして導入できた秘訣は、段階的に移動したことだけではないという。「大切なのはユーザーが求めていることをきちんと聞き、作ることです。従来のシステムを移行するのではなく、新しいものを作るという考え方を持つ。従来できていたことがGoogle Appsでもできるかどうかではなく、ユーザーが新しいシステムに何を求めているのか、それをどうしたら実現できるのかを考えるべきでしょう」と白井氏は語る。

段階的な導入や、ユーザーの希望に合わせた変更も、アドオン等で拡張のしやすいGoogle Appsならば行いやすいと指摘。「ユーザーのやりたいことを叶えられるし、将来性もある。Google Appsはそういうツールだと思っています」と白井氏は力強く語った。