利用していたメールシステムの問題点の改善とお客様とのメール対応のためにGoogle Appsを導入
ゲストハウスでの結婚式や海外挙式の企画・運営などをメインにブライダルビジネスを行っているベストブライダル。グループ会社では飲食店の運営やホテル経営、婚礼費用ローンなども取り扱っており、結婚式関連のさまざまな事業を手がけている。
社内のヘルプデスク業務をアウトソーシングしていたが、これを内製化したことをきっかけに浮き彫りになったのが、メールシステムの課題だった。メールシステムといっても、社員がそれぞれのPCにインストールしたOutlook Expressでメールを読み書きするというシンプルなものだったが、PCが1人に1台割り当てられていなかったため、1つのメールアドレスを関係者全員で利用し、共有するPC全てでメールを受信することで、情報の共有を図るという手法をとっており、この運用方法に起因するいくつかの問題点があった。
「お客様からのメールを全員が見て、情報共有する。そのために1つのメールアドレスを関係者全員がそれぞれOutlook Expressで受信していたのですが、いろいろな問題がありました。それはOutlook Expressというツールの問題と、私たちの運用方法の2種類の問題です」と語るのは、ベストブライダル 人事総務部 システム担当の池田 宗一氏だ。
ベストブライダル 人事総務部 システム担当 |
POPでメールを複数人で共有しようとするとメールサーバにデータを残したままでの利用になるが、全員が受信したタイミングで適切にサーバデータの削除を行うことが難しく、サーバのメールボックスがパンクしたり、全員が受信する前にメールを削除してしまったりと言った問題が発生していたという。また、Outlook Express終了時に行われる最適化処理時にハングアップしてメールボックスが壊れてしまうなど、トラブルもあった。データがローカルHDDに保存されているため、PCの入れ替えがあればデータ移行も必要で、データ量も多いため一苦労だという問題もあった。
「自身のメールアドレスを必ずBCCに入れて返信することと決めていても、うっかり入れ忘れることはあります。結果として、共有できているはずのやりとりが共有できていない、ということがよくありました。このメールの課題を解決できないか、と考えていた時に出会ったのがGoogle Appsでした」と池田氏は語る。
Google Appsを知り尽くしたサテライトオフィスを選択
複数人で手軽に共有メールアドレスを運用でき、送受信履歴も確実に残り、PC入れ替え時に負担が少ないソリューションは各社から提供されている。POPメールではなくIMAPメールにすればそうした課題は一応解決できるが、利用していたメールサービスのサーバ容量が少ないため、サーバにメールを貯めておくという使い方自体が合わなかった。また、少なからずメーラの面倒を見る必要があり、ヘルプデスクの負担も残ることになる。
そこで候補にあがったのがブラウザから利用するWebメールだ。「いくつか紹介されたのですが、ストレージ容量が大きく、料金が安価であることが魅力でGoogle Appsを選択しました。また、ヘルプデスクの内製化を機にPCのリプレースを、従来の壊れたら入れ替えるというやり方ではなく保守切れのタイミングで定期的に行うことに決めていたので、PC乗り換えのしやすさも重要なポイントでした」と池田氏。
導入にあたってサポートベンダーとして選択したのが、サテライトオフィスだ。サテライトオフィスはGoogle Apps向けに多様なアドオンを提供している。ベストブライダルでも「シングルサインオン for Google Apps」を活用しているが、しかし、サテライトオフィスを選択した決め手となったのはアドオンを提供しているというよりは、その姿勢にあったという。
「複数のベンダーと話をしたのですが、サテライトオフィスは他社と違っていました。Google Appsに対してしっかりと研究していて、深く理解していると感じたのです。アドオンが多いというのも、中身をよく知っているからこそですよね。打ち合わせ中に質問をしても、ほとんどその場で答えてくれるなど、サービスを知り尽くしているという印象を持ちました」と語る池田氏は、担当者の熱意にも押されたという。
「すごくGoogle Appsが好きなんだな、と感じることがいろいろありました。私もシステムをやっている人間ですからわかりますが、扱うものが好きというのはとても大切です。ただ仕入れてきたものを売るというのと、好きだからしっかり考えて販売するというのは違います」と力強く語る。同社では2010年12月に実際の発注を行い、導入までには3カ月とスムーズだったといい、現在は777アカウントを利用している。
段階的な導入とマニュアル作成でスムーズな導入に成功
グループを合わせた社員数は1400名以上に対して、システム担当者は6名程度。少人数で多くのユーザーをサポートしなければならない上に、ユーザーのITリテラシーも高くはない状態だったという。
「メールアーカイブサービスとして、10年間容量無制限のPostiniが利用できるなどGoogle Appsは非常に魅力的でしたし、セキュリティ面に関してもこれまでのメールシステムよりはずっと向上すると感じていました。問題は、ユーザーの心理的な抵抗感です」と池田氏。そのため、導入にあたっては現場業務をよく知るシステム担当スタッフがマニュアル作りを行うなど教育の機会を積極的に設けた。
導入は本社スタッフから行い、各地の事業所へと段階的に実施した。標準のインタフェースとしてChromeブラウザを利用することにし、各事業所へはPCのリプレース時にChromeのインストールや基本設定などを行いながら展開を行った。
「最初の1カ月ほどは、特にメールの自動振り分けなどに関して問い合わせがありましたが、比較的スムーズに導入できたと思います。当時は、スタッフのITリテラシーがあまり高くなかったため、逆に"今までと使い心地が違っていても仕方が無い"と諦めてくれた面もあります。もうちょっと詳しい人だと、別のツールでなんとかしようなどと頑張るのでしょうが、当社の場合は変わってしまったものは仕方が無いね、という感じで受け入れられました」と池田氏は笑う。
実際に使い始めてみた結果、共有メールアドレスの運用はごくスムーズに行えているという。メーラーの操作に関する問い合わせがなくなり、容量不足に対応する必要もなくなったため、システム担当者の管理負荷も軽減された。現場でのトラブルもなく、メール対応時のルールは送信時にシグネチャ部分に返信対応をした自分の名前を入れるというだけのシンプルなものになった。管理者もユーザーも快適に利用できているという。
BYODやテレワークにも対応
現在は250名程度の役職者や外部業者とのやりとりが発生する担当者にのみiPhoneを支給し、モバイルアクセスを行っている。これにはサテライトオフィスの「シングルサインオン for Google Apps」が利用されているが、将来的にはBYOD対応なども検討しているという。
「世の中でもっとBYODが増えて来た時には、モバイルワークが実現できるようにしたいですね。Google Appsならそれが可能です。現在はユーザーへの教育機会などを増やして、その基礎となるセキュリティ知識などを持たせる下積み段階にあります」と池田氏は語る。
また、ブライダル事業を手がける同社は女性社員が圧倒的に多いという。ブライダルに精通した優秀な社員がその知識や経験を生かしつつ、出産や育児期間にもやりがいをもって働ける環境を提供する、そのような姿を目指している。
「VDIを構築し、2014年5月より、テレワークを開始しました。この試みは、当社初のBYOD実施例になりますが、ここでも、Google Appsは、在宅勤務者、事業所担当者、本社間での情報共有に大きな役割を果たしています」と池田氏は語る。
メール以外の機能に関しては、カレンダー共有機能が部署ごとに利用されている。人員配置など詳細な結婚式のスケジュールを共有するには機能不足だが、部署ごとの人の動きを把握するには十分だということで活用されている。またGoogle Docsなど各種機能も特に制限は設けておらず、ユーザーごとに活用しているカタチだ。
多機能を使いこなしているというわけではないが、当初の課題を十分に解決した上で快適に利用されている。この導入成功に至った理由のひとつとして、ベンダー選択を挙げた。
「Google Appsの導入には確実なメリットがあります。さらにベンダーが提供するアドオンサービスを利用すればいろいろなことができます。メールだけではなく周辺機能も含めて自社に合うものが提供されているかどうかがポイントです。また、一度導入してからベンダーを乗換えるというのも大変なので、最初に妥協せずぴったりと合うところを見つけることが大切ですね」と池田氏は語った。