グーグルが提供していた、生成AIを活用したチャットツール「Bard」。これまでにも何度かその使い方を紹介してきたBardですが、新しい生成AIの言語モデル「Gemini」を強化するグーグルの方針を受け、Bardもその名称をGeminiに変更することとなりました。→過去の「Google Workspaceをビジネスで活用する」の回はこちらを参照。
GeminiはBardと何が違う?
それと同時に、Google Workspace向けに提供されている、生成AIを活用したサービス「Duet AI for Google Workspace」も、「Gemini for Google Workspace」に名称変更することとなりました。そうしたことからGoogle Workspaceの生成AIに関連する機能やツールは、今後はGeminiと冠したものへと統一がなされていくようです。
では実際のところ、言語モデルがGeminiに変わったことでどの程度性能が変わっているのかを、Bardの事例と比較してみましょう。
まずは第65回で紹介した、東京23区の地価をランキングにして表示してもらうという事例ですが、Bardの時は住宅地の地価を表形式で表示してくれたものの、東京23区ではない東久留米市のデータが入るなど、誤りもいくつか見られました。
そこで、Geminiに「東京23区の地価をランキングにしてまとめて」と入力して指示してみると、住宅地と商業地の地価を10位まで表示し、参考資料や簡単な解説も提示してくれました。
さらに、住宅地の地価を23区すべて表示するよう指示すると、指示通り表にまとめてくれました。23区外のデータが入ることもなく、正確性もより高められている印象です。
続いて、Google Workspaceとの連携が可能な無料版を使い、第77回と同様に筆者の「Googleドキュメント」から、ローカル5Gに関する記事をピックアップするよう指示した場合のケースを見てみましょう。
Bardでは、それぞれのドキュメントに関して簡単な要約を表示し、最後にそれらドキュメントのまとめが入るなど、比較的短い文章でまとめられていました。
一方、Geminiで同じ指示をした場合では、文章の概要と内容を別に要約し、ドキュメントの参照先も指示してくれるなど、より要点を分かりやすい形でピックアップしてくれるようになっていました。
そのほかにもいくつかの指示を試して比較してみたのですが、全体的に回答の内容が長めになっているものの、その分、より詳細で分かりやすく内容をまとめてくれるようになった印象です。
契約プランにより、サービスが異なる
そうしたことから、Bardの時代よりも一層実用度が高まったと感じるGeminiですが、実は契約するプランによって利用できるサービスに違いがあります。
というのも言語モデルのGeminiには3つの種類があり、最も軽量な「Gemini Nano」はクラウドを使わず、スマートフォンなどでも直接動作させられることから、グーグルのスマートフォン「Pixel 8 Pro」に向けて提供されています。
一方、通常のGoogle Workspaceで利用できるGeminiに使われているのは、最もスタンダードな「Gemini Pro」なのですが、グーグルはより性能が高く、高度な回答が得られる「Gemini Ultra」も用意しています。
そして、Gemini Ultraに対応しているのがGeminiの上位版となる「Gemini Advanced」であり、これを利用するには有料のプランを契約する必要があるのです。
無料版のGoogle Workspaceで利用するには、「Google One」に新たに用意された、月額2900円の「AIプレミアム」を契約すれば利用可能になります。有料版のGoogle Workspaceでも、Gemini for Workspaceを契約することで利用可能となるようです。
ただ、注意が必要なのは、2024年3月時点ではGemini Advancedが英語にしか対応しておらず、日本語では利用できないこと。
いち早くGemini Advancedを使ってみたいという人も多いかと思いますが、日本語に対応するまではお金を払って上位プランを契約することを急がず、無料版のGoogle WorkspaceでGeminiを使いこなすことに集中した方がよいのではないでしょうか。