Lotus Notesからのリプレース候補に急浮上
東京セロレーベルはフィルムコーティングや開封テープを専門とするメーカーだ。1948年に創業した同社は「セロハンにはオフセット印刷ができない」という当時の常識を打ち破り、透明フィルム印刷ラベルを世に送り出したことでも知られている。その卓越した技術と開発力を生かし、現在では文具、OA製品、開封テープ、光学・エレクトロニクス製品など多彩なラインアップを提供。付加価値の高いモノづくりによって、人々の快適な暮らしを支え続けている。
そんな同社だが10年以上にわたり、グループウェアとして「Lotus Notes」を利用してきた。1999年にR4.6を導入した後、2004年には6.0へとアップグレード。メールや掲示板に加えて、ディスカッション、承認ワークフローシステムなどを積極的に活用してきた。しかし、ここにきて問題が発生した。利用中のバージョン6.0では、Windows 7へ対応できなくなったのだ。
そこで同社は2010年初頭より、「今まで通りNotesのバージョンアップで対応するか」、もしくは「他社製クライアント/サーバ型製品へ乗り換えるか」について検討を開始した。しかし実はこの時、Google Appsは候補に含まれていなかったのである。
東京セロレーベル 常務取締役 星野光氏は、「検討を行っている最中に、たまたまIT関連のセミナーでGoogle Appsを発見しました。詳細を聞いてみたところ、機能・使い勝手ともに当社のニーズを満たすサービスだということがわかり、その時点で最有力候補になりましたね」と、Google Appsに出会った経緯を語る。
試用メンバー全員がGoogle Appsのファンに
候補が出揃ったところで、他の2製品はデモによる機能確認を実施。一番期待されたGoogle Appsに関しては検証用に別ドメインを取得し、4人のメンバーが有料版で5月から1ヵ月かけて各機能を試していったという。
「実際に使ってみて驚いたのは、ビジネス効率の向上につながる数多くの機能を持ちながらも、それぞれが関連したサービスとして使える点です。そして、ブラウザ経由でどこからでも手軽にアクセスできる利便性です。さらにモバイルとの親和性も抜群で、試用したメンバー全員がGoogle Appsのファンになりましたね」と、率直な感想を口にする同氏。Notesでもモバイル連携は可能だが、Google Appsと比べてコスト面の負担がかなり大きくなってしまうそうだ。
こうしてGoogle Appsが持つ実力を認識した同社では、早くも6月に正式導入を決定。2010年9月から約2ヵ月で導入準備を進め、11月にすべての移行作業を完了した。
「情報システムを新規導入する際、当社ではこれまですべての作業を専門業者に任せていました。しかし、今回のGoogle Appsでは5人のチームを結成し、シングルサインオンなど一部を除いて自力で構築したんです。最初はまごついてしまったところもありましたが、自分たちの手でやり遂げました。専門知識を持たずにこれだけのシステムが構築できるというのは、すごいことです」と、同氏はGoogle Apps導入の容易さについて語る。
なお、同社ではシステムの移行にあたって、社員の混乱を防ぐため事前にGoogle Appsの勉強会を開催。また、ヘルプデスクを開設し、勉強会で説明しきれなかった部分をフォローしたそうだ。「最初はヘルプデスクに初歩的な問い合わせがいくつかありましたが、それも1週間ほどで落ち着きました。3ヵ月後にもう1度質問&説明会を開いて、より具体的な機能に関する疑問も解消しました」と、同氏はシステム移行に関する事前対策の効果を語った。
効率的なメール処理に加えて承認ワークフローの見直しも
Google Appsの導入により、同社では現場での業務効率が大幅にアップした。そのうち最も身近に感じられたのが、メールに関する使い勝手の変化だ。
Notesを使った従来環境では、ディスク容量の関係から一定期間ごとにサーバ内のメールを削除する必要があった。しかし、Google Appsなら1人当たり25GBの大容量が使えるため、過去のメールをそのまま残しておくことが可能になっている。さらに、Googleならではの高度な検索機能が備わっているのも見逃せないポイントで、同氏も「Gmailの導入によって、メールの使い方が劇的に変化しました。手間がかかるこまめな分類と保存が必要なくなったばかりか、高度な検索機能で大量のメールから目的の内容を素早く探し出せるのですから、これ以上便利なことはありません」と笑顔を浮かべる。
また、もう1つの大きな変化が「承認ワークフローに関する考え方」だ。これまで同社では、工場の立ち入り申請や出張申請などにNotesの承認ワークフローシステムを利用していた。しかし、今回の再構築にあたり「ワークフローは本当に必要なのか」という原点まで立ち返り、見直しを図ったのである。
「見直しの結果、後から一覧を参照するような使い方が多かった工場立ち入り申請は、Google Appsのフォームとアンケート機能で代用可能なことがわかりました。出張申請は今のところGoogle App Engineで構築した承認ワークフローを利用していますが、こちらも必要性を再確認中です」と同氏。さらに「Google Appsは各サービスの機能を組み合わせることで、実に幅広い使い方ができます。システム移行の大半を自分たちで行ったのも良い刺激となり、"やるべきこと"と"やらなくてもよいこと"をハッキリと区別するようになりました」と続けた。
今回の例からもわかるように、Google Appsは低コストでありながら、実に多機能かつ高い利便性を備えている。同氏の「メールやスケジューラーなどの情報システムは毎日触れるものだけに、道具として使い心地の良さが求められます。そうした意味で、Google Appsは今までにない新たな使いやすさを感じさせてくれました」という言葉には、Google Appsに対する信頼と期待が込められていた。