複数人による情報共有の難しさに直面
早稲田環境研究所は、廃棄物のリサイクルや省エネコンサルティング自動車のアフターマーケットなど、環境に関する事柄を広い範囲で網羅する早稲田大学発のベンチャー企業だ。代表取締役を務める小野田弘士氏が早稲田大学の出身者であることに加え、現在も同大学の教授として教鞭を執っている点が大きな特徴となっている。
また、「自転車以上自動車未満」をコンセプトに開発された1人乗りの超軽量小型モビリティ「ULV」を用いて、環境に配慮した都市づくりや地域の活性化を目指すプロジェクトも行っている。 早稲田環境研究所 副主任研究員 秘書 市来さやか氏は「研究で培った成果も、単体ではビジネスとして成立しません。それを世に広め、社会貢献に結び付ける事業を行っています」と語る。
早稲田の名を冠している同社だが、社員で早稲田大学出身者は半数弱。同大学出身者にこだわることなく、幅広い有識者を集めているそうだ。
同研究所が、最低資本金規制特例制度によって早稲田大学理工学部機械工学科 永田勝也研究室から誕生したのは2003年8月のこと。2009年に社員を10人へと増やし、より多彩な分野の事業を手がけられるようになった。人員を増強した当時は、電話の増設や複合機の入れ替え、共有サーバおよび名刺管理ソフトの導入など、一気に設備投資を行ったそうだ。
しかし、もともと小野田氏が1人で事業内容を管理していたこともあり、ハードウェアを増やしただけでは情報共有に限界が生じてくる。また、それまでのグループウェアがスケジュール管理にしか使えないことも不便に感じていたという。
サービスとして高い完成度と導入の容易さが魅力
「ちょうど"スケジュールから顧客管理なども行えたらいいのに"と考えていた時、クラウド型の顧客管理ツール『Zoho』を見つけました。そして、このZohoと連携して使えるGoogle Appsの存在を知ったんです」と、市来氏は新たなサービスとの出会いを語る。
同研究所にとって、Google Appsが持つ魅力は非常に大きかった。Zohoとの連携に加えて、Google Apps自体が備えている多彩な機能、そして何より大半の社員が今までGmailを使っていたため、操作の慣れなどを含めて移行が容易だったのである。
こうした点から、同研究所では2010年5月にGoogle Appsを導入。営業効率の向上と今後のアプリ開発も視野に入れ、Google Appsと親和性の高いiPhoneも全社員に支給した。
「今までシステム管理などの経験はありませんが、そんな私でも最初のデータ同期や管理者権限の設定程度をベイテックシステムズから教わっただけで、導入から実稼働まで1週間もかかりませんでした。専任のIT管理者がいない少人数企業にとって、これほど完成度が高く、かつ簡単に導入できるシステムは魅力です。Google Appsはユーザーが多いので、Twitterなどインターネット経由で疑問が解決できるのも便利です」と市来氏。
メールについては、暫定処置として当初社員が使っていたGmailのプライベートアカウントに転送設定をかけた後、企業アカウントへとスムーズに移行できたそうだ。
社内サイト上の『一問一答』で問い合わせに対応
Google Apps導入後の使い勝手について、市来氏は「実は私以外の全員が移行前からGmailユーザーだったのですが、今までOutlookを使い続けてきた私としては、どこからでもアクセスできる利便性に驚きました。iPhone上からメール確認やスケジュール登録が行えますし、スケジュールに入力した住所から簡単にGoogleマップが表示できるのはとても便利です。プライベートアカウントでカレンダーを作れば、ワンクリックで仕事用のカレンダーと比較できるのも嬉しいですね」と語る。
また、早稲田環境研究所ではGoogleサイトも積極的に活用している。経費計上などの社内ルールはもちろん、市来氏は「例えば、『超軽量小型モビリティULVはどれくらい走るのですか?』といったお問い合わせをいただくことが多いのですが、社員の数が少ないので担当者が不在の時でも回答できるよう、社内サイト上に『一問一答』を掲載しています。正に、社員全員でナレッジを作り上げるようなイメージですね。研究データに関しては、そこから素早くメールで送れるようファイルサーバのような使い方がメインになりそうです」と語ってくれた。
さらに、Googleサイトは、メールアドレスを入力すれば、特定のページだけを相手と共有できるのも特徴の1つ。詳細な会社概要をはじめ、必要があれば外部に公開できるようなページの作成も進めているそうだ。そのほか、セミナー開催時にGoogleドキュメントから告知メールを一斉送信したり、Googleビデオに超軽量小型モビリティULVの走行動画をアップしたりと、同社ではGoogle Appsが持つ機能を積極的に活用している。
東北地方太平洋沖地震が起きた3月11日、社内用アカウントのTwitterを通して、外出している社員の安否をスムーズに確認できた。市来氏は「あの状況下でサクサク起動したGmailとTwitter。iPhoneの新たな可能性を感じた」と話している。
また、停電や断水のみならずガソリン不足が続いている被災地からは、被災者のニーズを拾い、効率的に物資などの支援を行うために、ガソリンに頼らない車両の要請が届き、超軽量小型モビリティ1台の貸し出しが決定されたとのこと。
世界規模で地球環境保全に対する取り組みが増加している昨今。早稲田環境研究所のような企業が、今後さらに必要性を増すことは間違いない。こうした小さな規模から大きな成長を遂げていこうとしている企業において、Google Appsがどのように使われていくのか、注目していきたいところだ。