リプレースを期にGoogle Appsとスマートフォンを導入
ジーンズを中心としたカジュアルファッションの小売店として人気のライトオンは1980年の創業以来、出店を拡大。現在は全国に約500店舗を構えている。約1,000名の社員のほか、5,000人ほどのアルバイト従業員を擁しており、全国に広がる店舗を管理するため、数店舗を担当するエリアマネージャー、その上で統括業務を行うスーパーバイザーといった役職を設けている。
エリアマネージャーやスーパーバイザーと、本部で働く社員が利用するコミュニケーションツールとして導入されたのが「Google Apps」だ。
「システムや機器のリプレース時期が重なったことで、新たな製品を導入しやすかったという事情はありますが、2011年末に開催されたGoogleのイベントでGoogle Appsに魅力を感じました。安価に利用できそうな点も好印象でしたね」と語るのは、経営企画部 システム担当の濱田和広氏だ。
これまで、メールはホスティングサービスを利用していたのだが、そのバックアップとスケジュール管理のために社内でMicrosoft Exchangeも運用していた。これらのシステムはすでに6~7年ほど利用していたため、リプレースのタイミングを計っていたという。また、社員に配布していたドコモのフィーチャーフォンもすでに2年半ほど使用しており、機種変更の時期を迎えていた。決定的な決め手は、データ通信端末の2年間の契約期限を2012年2月に迎えることだった。
「Exchangeの環境を社内で再構築したとしても、結局、数年後にはリプレースが必要になります。そこで、クラウドを使えば、バージョンアップを行うことなく、常に最新のサービスが使えてよいのではないかと考えたわけです。その時、Google Appsに出会いました。テザリングできるスマートフォンからこれを使えば、携帯電話と通信端末も1本化できてしまうという考えです」と濱田氏は語る。
グルージェントの独自機能で使い勝手を向上
導入は、サイオステクノロジーのグループ会社であるグルージェントが手がけたのだが、先にヒアリングしていたベンダーよりも独自機能の使い勝手の良さが評価された。
「Google Appsのカレンダーはグループ間で予定共有ができますが、メンバーのスケジュールがすべて表示されて見づらくなります。また、グループ内での共有アドレス帳も欲しかったので、Google Appsを導入するだけでなく、拡張機能を入れようと最初から考えていました」と濱田氏。
先に述べたように、2012年2月にデータ通信端末の契約期限が切れることもあり、プロジェクトはスピーディーに進められた。グルージェントは2012年1月からプロジェクトに携わったが、約2ヵ月と短期間で導入が完了した。
グルージェントが提供している拡張機能のうち、導入されたのは、システムへのアクセス制限を実現する「Gluegent Gate」、Google Calendarをベースにチームでの予定管理機能を追加する「Gluegent Apps グループスケジューラ」、階層構造で使いやすいアドレス帳を共有できる「Gluegent Apps 共有アドレス帳」だ。
アクセス制限は端末認証を行って、会社支給の端末からのみ利用できるようにしている。また、「Gluegent Apps グループスケジューラ」は施設予約などにも活用されているという。
「特に気に入ったのはアドレス帳でした。他社のアドレス帳は画面遷移が面倒だったのですが、グルージェントのアドレス帳はとてもスムーズです。また、従来は同報メールをメーリングリストで回していたのですが、どのリストに誰が入っているのかを把握できず、全員に漏れなく回そうとすると複数のメーリングリストに送ってしまい、ムダなメールが飛び交っていました。しかし、グルージェントのアドレス帳では、グループを選択してメールが送りやすくなったので便利になりました。自分でグループが作れるのもいいですね」と語るのは、執行役員 経営企画部長である川崎純平氏だ。
スマートフォン+Google Appsの導入でメール確認が簡単に
ライトオンでは、全国500店舗を担当しているエリアマネージャーとスーパーバイザーの合計110名に対しノートPCと携帯電話、通信端末を支給してきたが、Google Appsの利用開始に合わせて、ドコモのスマートフォンを導入。携帯電話との入れ替えでテザリング対応のスマートフォンを採用したことで、ワークスタイルが変わってきたという。
ノートPCは現在も利用しているが、普段の簡単なメール確認はスマートフォンで済ませ、本格的な作業や詳細な資料確認が必要な場合にノートPCを起動してスマートフォンのテザリングを利用する、という形で使い分けている。ノートPCよりも操作が手軽なスマートフォンでこなせる業務が増えたことで、社外で飛び回るエリアマネージャーとスーパーバイザーたちの業務の効率性がより向上したというわけだ。
「エリアマネージャーは1人で複数の店舗を回らなければならないので、メールを簡単に確認して返事ができるスマートフォンとGoogle Appsの組み合わせは現場からも好評です。店舗の内装、詳細な画像確認などが頻繁に必要な業務を担当する者にはタブレット端末を持たせるなどの工夫もしています」と濱田氏は語る。
また、365日営業している店舗を持つ企業ならではの悩みとして、緊急事態に対応するために常に連絡待ち状態になるというものがあるが、それも解決された。
「Google Appsとスマートフォンを導入したことで、スムーズなメール連絡が可能になり、夜間のシステム作業の際なども安心できるようになりました。報告する側も、メールをすぐ見てもらえる環境があるということで、簡単な連絡は電話ではなくメールで済ませるようになりました。」と、川崎氏はGoogle Appsの導入効果を語った。
Google Appsの進化を計算に入れると大きなコストダウン
ライトオンでは、通信端末分の通信費は節約できたものの、目先の計算では年間コストの大幅削減という形にはなっていない。しかし、使い続けることを考えるとトータルではコストダウンになると考えているようだ。
「Google Appsはオンプレミスのグループウェアと違って、リプレースを繰り返す必要がありません。新機能が登場すれば、追加料金を払うことなくすぐに使うことができます。つまり、アップデートの作業を行わずに、最新の機能を使い続けることができるわけです。さらに、まだ使っていない機能を利用したり、他社製品を使っているシステムも集約したりすることを踏まえると、5年間使い続けるとして、トータルのコストはかなり減少するのではないかと考えています」と濱田氏は語る。
現在倉庫管理のために利用しているMicrosoft SharePointもリプレース時期を迎えており、機能を統合したいと考えているほか、動画を利用した接客教育などもテスト中だ。
「動画はサイトがないと使いづらいのでまだテスト中です。Google+を利用した社内SNSなども使ってみたいですね。ファイル共有機能も利用できないかと考えていたら、Googleドライブができました。次々と機能が追加されるのは本当に魅力的です」と濱田氏。
導入時にはいくつか予想外のトラブルもあったが、グルージェントの対応には満足しているという。「スマートフォンユーザーが意外に少なかったのですが、簡単な説明会を開催してもらいました。また、トラブルが発生した時は迅速に原因を見つけて対応してくれる点も助かっています」と、濱田氏は語る。
Google Appsの発展がそのまま使い勝手の向上になると考えているライトオンでは、今後も新機能を積極的に活用して行く予定だ。