原口 豊(はらぐち・ゆたか)
大手証券会社システム部に在籍後、1998年ベイテックシステムズ(現サテライトオフィス)を設立し、社長就任。2008年に、いち早くクラウドコンピューティングの可能性に注目し、GoogleApps導入サポートを開始。導入実績は、ガリバー、ミサワホーム、三井倉庫などの大手企業から、中堅・中小企業まで、1,200社以上。「組織&グループカレンダー for Google Apps」など、多数のテンプレートを無償提供するなど、Google Appsの普及に尽力。Google Enterprise Day 2011ではパートナーアワードを3年連続で受賞した。

分散データセンターを基盤とする高度なセキュリティ

企業は顧客データをはじめとして、数々の重要な情報を抱えている。そんな企業がクラウドサービスを利用するうえで、一番重視する点は「セキュリティ」だ。実際、クラウドサービスがかなり普及してきた現在でも、「重要なデータを社外に預けるのは不安」と感じる企業は少なくない。そこで今回は、Google Appsのセキュリティについて考えてみたい。

まず、Google Appsの基盤となるサービス提供の環境だが、Googleでは各国に配置した多数のデータセンターをつなぐことで、世界最大規模の分散データセンターを構築している。各企業のデータは暗号化したうえで各データセンターへ分散保存されており、必要に応じて瞬時に統合表示してくれるわけだ。この辺りは、高度な検索技術を持つGoogleならではの対策と言える。

しかも、各データセンターでは専任セキュリティチームが24時間体制で監視・防護を実施している。こうした世界でもトップクラスのセキュリティで、悪意ある第三者の侵入を完全にシャットアウト。万に一つの割合で侵入できたとしても、前述したように暗号化とデータの分散保存が行われているため、データを読み取れる状態にするのは不可能だ。

Google Appsの安全性はこうした取り組みだけでなく、各種セキュリティ関連の認定取得によっても証明されている。例えば、米国公認会計士協会(AICPA)が定めた世界最高水準のセキュリティ監査基準「ISAE 3402 Type II」および「SSAE-16」認証を取得。2012年5月には「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)」の国際規格である「ISO 27001」の認定取得も完了している。

GoogleではGoogle Apps管理者に向けてセキュリティについて説明するWebページを公開している

英語表記にはなるが、Google Apps for Businessのホワイトペーパーも用意されている

スマートデバイスやノートPC利用時も安心

Google Appsは、スマートデバイス関連のセキュリティ機能も充実している。前回、各種スマートデバイスを業務利用する際に気になる点としてコストを挙げたが、もう1つの懸念要素がセキュリティだ。

スマートデバイスは利便性が高いだけに、もし紛失や盗難などのトラブルが発生した場合、企業にとっての情報漏洩のリスクも高まる。その点、Google Appsなら遠隔地からスマートデバイス内の全データを消去する「リモートワイプ」機能を備えているので安心だ。個人所有のモバイル端末を業務に利用する「BYOD」の採用企業では、「紛失や盗難に遭った場合はリモートワイプ機能でデータを消去しても構わない」といった誓約書を書かせる例も出始めている。

さらに標準で、一定期間使われていないデバイスのロックやデバイスパスワードの要求機能を備えるほか、パスワード関連では文字・数字・記号を含めるよう要求したり、最小文字数の設定も行えたりする。これらのセキュリティ機能が、企業の情報漏洩のリスクを最小化してくれるわけだ。

もちろん、Google Appsの持つセキュリティの有効性はスマートデバイス利用時に限ったものではない。例えば、ノートPCが紛失や盗難などのトラブルに巻き込まれた際、従来のオンプレミス環境ではHDDやSSD内に重要なデータが含まれていても手の施しようがないだろう。しかし、こうしたデータをGoogle Apps上に集約しておくことで、トラブル発生時に対象アカウントへ閲覧制限をかけたり、最悪の場合でもアカウントを削除したりといった対応が可能だ。

規模や業種を問わず柔軟に対応

今回ピックアップした機能以外にも、Google Appsには多彩かつ高度なセキュリティ機能がまだまだ備わっている。SSLによるアクセス時のセキュリティ強化はもちろん、メール関連では迷惑メール・ウイルス・フィッシングなどあらゆる脅威から保護する「Postini Services」を用いたホスティング型セキュリティアドオンが利用可能。

サードパーティの追加アドオンを利用すれば、ユーザーの利便性の向上とセキュリティ強化が同時に行える「シングルサインオン」、システム管理者の負荷低減とセキュリティ強化を両立する「Active Directory」との連携も実現できる。

このように、Google Appsは標準で高いセキュリティ環境を備えるほか、企業の規模や利用状況に応じた柔軟な選択も可能となっている。企業を取り巻くビジネス環境は、日々刻々と変化し続けるもの。そうしたなか、規模や業種を問わず変化に対応できるGoogle Appsのセキュリティは、大きな武器となってくれるのだ。