原口 豊(はらぐち・ゆたか)
大手証券会社システム部に在籍後、1998年ベイテックシステムズ(現サテライトオフィス)を設立し、社長就任。2008年に、いち早くクラウドコンピューティングの可能性に注目し、GoogleApps導入サポートを開始。導入実績は、ガリバー、ミサワホーム、三井倉庫などの大手企業から、中堅・中小企業まで、1,200社以上。「組織&グループカレンダー for Google Apps」など、多数のテンプレートを無償提供するなど、Google Appsの普及に尽力。Google Enterprise Day 2011ではパートナーアワードを3年連続で受賞した。
前回は、クラウドサービスの市場動向や企業利用のメリット、基本的な選び方などを解説した。そこで今回は、機能面および価格面の双方において、企業ユーザーにメリットが大きなクラウドサービスとして、「Google Apps」を紹介しよう。
低価格で多彩かつ実用的な機能が利用可能
Google Appsには、実に多彩なサービスが備わっている。なかでも代表的なのが、場所や端末に縛られることなくWebブラウザ経由で自由にメールを送受信できるメールサービス「Gmail」、個人からグループ・部門まで幅広くスケジュール管理が可能な「Googleカレンダー」、社内ポータルの作成が容易な「Googleサイト」、オフィス向け文書の作成に効果を発揮する「Googleドキュメント」、社内向けの動画配信に適した「Googleビデオ」、簡単な情報交換やコミュニケーションに役立つ「Googleチャット」などだ。しかも、各サービスが互いに連携し合うことで、より利便性を高めてくれる。
これらが標準機能として提供されているのも大きなポイントと言える。クラウドサービスの中には機能をプラスするたびに追加料金が発生するものもあるが、Google Appsにはそんな心配は一切不要。事業規模の拡大や業態の変化などが生じた際も、基本料金(Google Apps for Business「年間プラン」の場合、1ユーザーアカウント当たり年間6,000円)だけで柔軟に拡張していける。1ユーザーアカウントあたり月額600円の「フレキシブル プラン」も用意されているので、用途や予算に応じて使い分けが可能だ。数多くの実用的な機能を有しながら、ここまでリーズナブルかつ柔軟な価格設定を実現しているのも企業にとって嬉しい点といえる。
密接な連携で相乗効果を生む機能群
それでは改めて、Google Appsが備える機能を個別に紹介していこう。
Gmail
まずGmailは、外出先からでも使える利便性が高いブラウザベースのメールサービスだ。クライアント端末に依存しないため、従来環境では自分のデスクからしか送受信できなかったメールも「空いている端末を借りてメールチェック」といったことが可能。また、従来環境では複数の端末からメールを送信した場合、送信履歴が分散して使いづらくなるという課題があったが、Gmailならどの端末でも同じ環境で利用することができる。
Googleカレンダー
Googleカレンダーは、予定を集約できるオンラインカレンダーだ。個人の予定はもちろん、部署やグループ単位のスケジュールまで一括管理が行える。スケジュールには日時や場所といった詳細を入力できるだけでなく、他のユーザーを追加したり、モバイル端末へ通知メールを送ったりといったことが可能。表示に関しても、日・週・月・カスタムビュー・予定リストを切り替えられるなど、使い方に応じてカスタマイズできる。
Googleサイト
Googleサイトを使うと、HTMLに関する知識がなくても簡単にWebサイトの構築が可能だ。GoogleカレンダーやGoogleドキュメントなどのサービスと連携したコンテンツ表示、お知らせや各種ガジェットの追加といった操作が直感的に行える。さらに、企業ユースとしてはこのGoogleサイトで作った社内ポータルをグループウェアの核として利用できるのも大きな魅力と言える。全社員が社内ポータルを毎朝閲覧する習慣が付けば、個別にメールや回覧を配信する手間も削減できる。
Googleドキュメント(Googleドライブ)
Googleドキュメントは、ブラウザ経由でドキュメント・スプレッドシート・プレゼンテーションなどのオフィス文書を作成できるサービスだ。ただし、先日グーグルがGoogle ドキュメントの機能を拡張した「Googleドライブ」を発表しており、現在、順次Google ドキュメントから移行を行っている。すでに、Googleドライブをお使いの方もいるだろう。同社では2012年初夏までに、Google ドキュメントからGoogleドライブへの移行を完了させるとしている。
Googleドキュメントで作成した文書は共有設定やURLの通知を行うことで、社内外の人々と情報共有が容易に行える。メール添付でファイルを送る従来形式とは異なり、複数のメンバーで同時に編集ができるのもポイント。
これならば「いつの間にか知らない派生ファイルができていて、どれが最新かわかりづらい」「最新ファイルを古い内容で上書き保存されてしまった」といったトラブルもなくなる。また、Officeファイル(Word/Excel/PowerPoint)との互換性を有している(一部反映されない部分もある)ため、従来の情報資産が生かせたり、入力フォームからスプレッドシートへの自動集計機能が使えたりするのも嬉しい点だ。
Googleビデオ
Googleビデオは、社内向けに動画をアップロード・公開できるサービスだ。社長からのメッセージをはじめ、写真だと伝わりにくい部分を補足できる各種動画マニュアル、新入社員向けの研修用動画などに便利だろう。
Googleチャット
Googleチャットは、リアルタイムにメンバー間の意思疎通が図れるコミュニケーションツールだ。Gmailなどで手軽に意見交換が行えるほか、デスクトップ上で使用するGoogleトークではファイルの送受信が可能。ドメイン外に対するチャットの制限もかけられるので、企業として安全に利用できる。
また、「Google+」のビデオチャット機能「ハングアウト」に対応しているのもポイントの1つ。こちらは最大10人でのビデオチャットに加え、iPhone/Androidからも利用可能。今年3月にはGoogleドキュメントの共有機能も追加され、より利便性が向上している。
これだけ見ても、Google Appsは非常に多彩かつ実用的な機能を持つビジネスツールであることがわかるだろう。しかも、それぞれが密接に連携しながら相乗効果を生み出してくれるのだから、企業にとってこれ以上ない武器となってくれるはずだ。