営業担当者へのタブレット支給で重視した3つの柱

レオン自動機 情報管理部 次長 増渕 康幸氏

前編に引き続き、後編ではレオン自動機がGoogle Appsを導入後、タブレットとの連携で実現した営業支援の取り組みについて紹介する。

レオン自動機ではGoogle Appsの本格導入後、約2ヶ月程度でAndroid搭載タブレットを導入した。これは国内の営業担当者を対象としたもので、現在までに計57台を支給している。

営業担当者へタブレットを支給するにあたっては、基本となる「3本柱」があったという。まず1つ目の柱は、GmailとGoogleカレンダーを中心としたコミュニケーションツールとしての役割を持つこと。2つ目の柱は、同社の包あん機などの動作を収録した動画やカタログを見せるといった顧客への販売促進に役立つこと。そして3つ目の柱は、稟議決裁や出張申請など社内のワークフローシステムと連携できることだ。このワークフローシステムは、Webアプリ開発基盤上に自社開発で構築・運用しているものだ。

「営業担当者からの『事務所に戻らなくても済むような基盤を構築して欲しい』という要望を、より具体化したのがこの3本柱です。現時点で当初の目標は概ね実現できていますが、営業担当者が直行・直帰できるように今もシステム開発を続けています」と増渕氏は語る。

タブレットの導入に際しては、モバイルデバイスを管理する「MDM(Mobile Device Management)製品」の選定およびテスト、VPNを経由したタブレットの接続、自社開発Webアプリを動作させるWebブラウザの選定などに注力したという。

業務効率の向上とセキュリティ強化を同時に実現

営業担当者へタブレットを支給した背景には、Google Appsとの親和性の高さ、そして一般的な業務効率化だけでなく、同社ならではの理由もあった。これは先に挙げた「3つの柱」のうち2つ目の販売促進活動にも関係するが、動画を顧客に見せながら行う製品プレゼンテーションが必須だったためだ。

同社が提供する食品製造機械は、饅頭やパンなどの食品がどのように加工されるかが肝。カタログの写真だけ見てもイメージしづらいが、食品の加工工程を動画で見せることによって、実際の動きやスピード感まで短時間で伝えられるのである。

この動画は従来、社内の専門部署が撮影から編集、DVD制作までを行い、各営業担当に配布していた。しかしGoogle Appsの導入後は、編集後の動画ファイルをGoogleビデオ(現在はGoogleドライブに統合)へアップロードするだけで済むようになった。

さらに、Google Appsの導入はセキュリティ面でも大きな改善効果を生んでいる。たとえば従来の方法でDVD自体、もしくは動画データやDVDが入ったノートPCが紛失や盗難に遭った際に、そこから社外秘の重要なデータが流出してしまう危険性がある。しかし、動画をGoogleドライブからストリーミング再生する方法なら端末に情報が残らないため、万が一の場合はGoogle Appsへのアクセスを遮断、あるいはリモートワイプで迅速に対応が可能だ。いわば、タブレットをシンクライアント端末のように利用するイメージといえる。

増渕氏も「社内全体で1TB強もの容量を使えるGoogleビデオがGoogleドライブに統合されてしまったのは残念ですが、よりセキュアな環境で手間なく動画を扱えるようになったのは嬉しい限り。Googleドライブでは、保存した動画をそのままクリックするとデータとしてダウンロードされてしまいますが、動画のURLへ直接アクセスすればストリーミング再生も行えます」と、Google Appsの有効性を語る。

また、同社では動画に限らずカタログや各種資料など、ファイル関連の管理を可能な限りGoogleドライブで実施。日報をはじめとした各種報告書に関しても、スプレッドシートへの直接入力を基本としている。

「Gmail、Googleカレンダー、Googleドライブといった各サービスがタブレットからそのまま使えるのはありがたいですね。文書管理についても、従来はExcelで作成したファイルを本部へメールで送信、文書管理サーバにアップロードし、各クライアントで参照という流れが必要でしたが、今ではスプレッドシートへ入力するだけで済みます。業務効率を向上し、なおかつセキュリティも強化できる。まさに一石二鳥です。ここまでの導入はスムースに行うことができましたが、成果を出すのはこれからです。現状に満足せず走り続けたい」と、増渕氏は表情を引き締めた。

タブレットの選定に関しては、動画を使った製品プレゼンテーションが行いやすい一定以上の画面サイズ、営業担当者の負担にならない持ち運び時の利便性、そして日報や各種報告書などが多いため文字入力のしやすさを重視。これらの要件を満たす端末として、スライド式キーボード搭載のASUS製Android搭載タブレット「Eee Pad Slider SL101」に白羽の矢が立ったそうだ。

Googleサイトによる社内ポータルサイトの構築も視野に

増渕氏は今後の予定について「まだ全部を使いこなせていませんが、今のところ機能的に不足は感じていません。今後はGoogleサイトを使って、コミュニケーション基盤となる社内ポータルサイトを構築していきたいですね。Google+のハングアウトを利用したビデオチャットについてもタブレットから使えると大変便利なのですが、Wi-Fiルータの調子が不安定ということもあり、現在は有線接続のクライアント端末で検証を行っているところです」と語る。

レオン自動機の例でも分かる通り、Google AppsはGmailやGoogleドライブなどの各種機能が充実しているだけでなく、モバイルデバイスと組み合わせることで営業担当者の業務効率を大幅にアップしてくれる。こうした点で悩みを抱えている企業は、ぜひ公式サイトやセミナーで詳細を確認していただきたい。