Webメールのメリットを活かせない従来環境
レオン自動機は、包あん成形機や製パンラインなど食品製造機械の開発・製造を手がける企業だ。食品生産機械のパイオニアとして高度な技術力とノウハウを有しており、日本国内で高いシェアを誇るだけでなく世界各国にも輸出している。そんな同社では近年、社内システムに関する大きな課題を抱えていた。
社内システムに関する課題で一番大きかったのがメール環境だ。メールに関しては、約10年前から社外ホスティングのWebメールを利用していた。しかし、会社全体でわずか数百MB程度の容量しかないのがネックとなっていた。
情報管理部 次長の増渕 康幸氏も「最初はこまめに個人単位でメールをサーバから削除するよう頼んでいたのですが、実際にはほとんどやってくれません。そこで、各クライアント端末にメーラーをインストールし、サーバにメールを残さないような運用方法を採用していました」と語る。
外出や出張時など特別な場合のみWebメールの利用を許可していたそうだが、この運用方法ではWebメールの持つメリットがまったく活かされないまま。しかも、通常は各クライアント端末のメーラーがベースなのでサーバ上に送受信の履歴が残っておらず、Webメールとしてもかなり使いづらい状態だった。
また、スケジュール管理システムはオンプレミス環境で構築していたが、こちらはサーバおよびソフトウェアの保守切れが迫っていたという。そのほか、メールとスケジュールが完全に別の製品であるため、データの連携機能が皆無なのも業務効率の悪化を招いていたという。
多彩な機能に加えて大容量のGmailが魅力
こうした状況を打破するべく、レオン自動機ではシステムの移行を検討する。その移行先として最有力候補に挙がったのがGoogle Appsだ。
「2010年10月に、サテライトオフィスさんが開催したGoogle Appsの紹介セミナーを受講しました。そこでGoogle Appsの存在を知ったのですが、メール、スケジュール、ビデオ、ドキュメントをひとつのサービスで、しかも低価格で実現できるというのは衝撃的でしたね。メール容量で悩んでいた弊社にとっては、1人あたり25GBまで使えるGmailも大きな魅力です」と、増渕氏は当時の感想を語る。
このセミナー受講後、まずは増渕氏がプライベートで2011年からGmailとGoogleカレンダー、そしてスマートフォンの使用を開始。携帯電話のメールをGmailに一本化できるメリットを実感したそうだ。
「2010年当時、Android端末を導入する予定はまったくありませんでした。しかし、Google AppsとAndroid端末を組み合わせれば外出先からでもメールやカレンダーが簡単に使えることを知り、実際に試してみたわけです」と増渕氏。2011年下半期からは、経営者層を中心に社内でもクラウドやスマートフォン、タブレットなどが話題となり、まさにGoogle Apps導入の追い風ムードが漂っていたという。
ただし、レオン自動機がGoogle Appsを導入するにはひとつの大きな壁があった。この原因は、今まで使用していたケーブルテレビのインターネット回線がやや不安定だったこと。全面的なクラウド化を行うには、どうしても安定したインターネット回線が必須となるが、同社の場合はこのインフラ環境が最大のボトルネックとなっていたわけだ。しかし、この問題も2011年12月に光回線化したことで解消。晴れてGoogle Appsにシステムを移行できる状況が整ったのである。
事前説明会で混乱を抑え、データ移行もスムーズに
レオン自動機ではインターネット回線のリプレースを受け、Google Appsへのシステム移行に着手。まずは2012年の4月に400アカウントを購入し、ゴールデンウィーク明けから本格導入をスタートした。
「既存メール環境の解約手続きに際して、メールとWebサイト用のサービスが切り離せず、Webサイトの引っ越し先探しから行う必要があったのですが、それ以外の移行作業は概ね順調でした」と増渕氏。
システム移行の重要ポイントとなる社員教育に関しては、2012年4月末から5月初旬にかけて本社内での事前説明会を実施した。説明会は11回にわたって開催し、1回あたり約1時間。説明内容は毎回すべて同じだが、業務スケジュールの合間を見て全社員が参加できることを最優先し、複数回に分けての開催を行ったという。本社以外の事業所・営業所に関しては、PDFマニュアルを社内の文書管理システムへアップロードし、各社員に確認してもらう方式を採用した。
「従来のメール環境が使いづらかったため、社員たちの関心は非常に高かったです。特にGmailの添付忘れ防止機能は、社内説明会の段階から非常に好評でしたね」と、社内説明会の手応えについて語る増渕氏。Gmailには、本文中に"添付"と書かれているメールを添付ファイルなしで送信した場合、『ファイルを添付しましたか?』と確認ダイアログが表示される機能が備わっている。細かい部分ながら、添付ファイルの再送信にかかる無駄な手間や時間が省ける、日頃のビジネスに直結した実用的な機能といえるだろう。
また、いくら事前説明会を実施しても、システムの移行後はなにかと質問が多くなるもの。実際に使い始めてみなければ分からないトラブルや疑問もある。こうした問い合わせについて、同社では情報管理部のメンバー3名が電話で対応。Webメール自体に慣れていなかったこともあり、システム移行当初こそ若干戸惑う姿も見られたが、それも1ヶ月程度で収束したそうだ。
「メール、カレンダー、組織アドレス帳、組織カレンダーの順で1つずつ使い始めたので、大きな混乱がなかったのかもしれません」と増渕氏。
新旧システム間のデータ移行については、メールは旧メールのクライアント環境があるため原則として移行せず、どうしても必要という社員には手順書を配布し、自分で移行作業を行った。スケジュールに関しては、データを引き継がずにすべて新規で入力した。事前周知の成果もあり、特に大きな問題が発生することなくスムーズに移行できたという。
前編では、レオン自動機が社内システムをGoogle Appsへリプレイスした経緯や、実際の導入過程について紹介した。後編では、タブレットと連携した営業支援の取り組みを中心に見ていく。