450mm大口径シリコンウェハおよび450mmウェハ対応プロセス・検査装置の開発を推進する国際的なコンソーシアムGlobal 450mm Consortium(G450C)が、先月、米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された半導体製造装置・材料の展示会SEMICON WEST 2015において、450mm化検討の最新進捗状況を口頭で報告し、その後8月に入り、報告文書を関係者に配布した。

G450Cとは?

G450Cは、2011年9月に米国ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)知事が地元への誘致を発表した世界最先進半導体メーカー5社(米国Intel、IBM、GLOBALFOUNDRIES(GF)、台湾TSMC、韓国Samsung Electronics)と地元ニューヨーク州/ニューヨーク州立大学StateUniversity of New York:SUNY)による国際コンソーシアムである。ニューヨーク州を世界のナノテク産業の聖地(メッカ)にしようとする州政府が主導権を握り、クオモ知事自身が陣頭指揮している。2012年から州都AlbanyにあるSUNY-Polytechnic Institute-College of Nanoscale Science and Engineering(SUNT Poly CNSE:公式な訳語はないが強いて訳せば、ニューヨーク州立大学機構・工芸大学群・ナノスケール理工単科大学)。Albany Nanotech Campusと地元で呼ばれるCNSEキャンパスのNanoFab Extension棟(図1)の450mmクリーンルームで450mプロセス装置の評価およびプロセス開発を行っている(図2)。最近、IBMが半導体事業をGFに譲渡したのにともない、製造関係者がGFに移籍されたため、G450CメンバーリストからIBMの名が消えている(図3)。

図1 State University of New York-Polytechnic Institute-College of Nanoscale Science and Engineering(SUNY Poly CNSE)のキャンパス全景(場所は米国ニューヨーク州の州都Albany郊外)。地元ではAlbany Nanotech Campusと呼ばれる。NanoFab Xtension棟(左端の白い建物)の中に450mmウェハ対応クリーンルームがある。連絡橋でつながっている中央の縦長の建物はIBM半導体研究開発センターのある300mmクリーンルーム棟 (出所:CNSE)

図2 450mmクリーンルーム内に設置された450mmプロセス装置群 (出所:G450C)

図3 2015年7月時点のG450Cメンバー。ニューヨーク州政府/ニューヨーク州立大学Polytechnic Institute、Samsung、Intel、TSMC、GLOBALFOUNDRIES。左端はニューヨーク州の紋章 (出所:G450C Webサイト)

なぜ大口径化?

半導体デバイス製造に使われるシリコンウェハの直径は、歴史的にみると。0.75インチ(約20mm、1960年)から数~10年おきに拡大しつづけてきており、最先端の半導体工場では、300mmウェハを使用している(図4)。大口径化したほうが、半導体チップ(1つの半導体集積回路を構成する小片)あたりの製造コストを削減できるからである。しかし、無欠陥で大口径の結晶を成長させるのは難しい。しかも、大口径化すると、成膜やエッチングの均一性(ウェハ面内や面間、ロット間)が悪くなりがちなので、それを技術的に克服するのは簡単ではなかったために、直径300mmまで大口径化するのに、40年以上かかった。

図4 商用シリコンウェハの大口径化の変遷(著者作成。写真の出所はSUMCO)

今世紀の初めにIntelがクロック周波数向上のための微細化促進で製造コストがどんどん上がるマイクロプロセッサのコストダウンのために製造に使用するウェハ直径を300mmから近い将来450mm化する意向を表明したが、半導体業界および半導体装置・材料業界の賛同がえられなかった。装置・材料業界は、その時点で300mm装置開発の開発費がまったく回収できておらず、しかもこれ以上大口径化することは経済合理性がないとの理由で450mm化反対を表明した。Intelは水面下で、他の先端半導体メーカーと協議を重ね、紆余曲折の後、2011年秋になってやっと他の4社とニューヨーク州州都AlbanyのCNSEキャンパス内に450nn化検討コンソーシアムG450C設立に合意した。

G450Cの組織

G450Cの現在の組織図を図5に示す。450Cの活動全体をCNSEの副学長(製造革新担当)のPaul Farrar氏がゼネラルマネージャー兼コーディネーターとして全体を監督している。Intelから出向しているErin Fria氏がVP兼ゼネラルマネージャーとして外部渉外および戦略の責任を負い、その下に計測・プロセス集積(部長はSamsung出向者)とプログラム調整(部長Intel出向者)の2つの部がある。TSMCのCC Chien氏がVP兼ゼネラルマネージャーとして内部調整および運営の責任を負う。その下にリソグラフィ、エッチング、CMP/熱酸化・洗浄、CVD/PVD/イオン注入、450mmファブ管理の5つの部があり、部長職はGF、TSMC、CNSEからの出向者に割り振られている。もともとCVO/PVD/イオン注入部門は、IBMの担当だったが、IBMの半導体事業譲渡に伴い、IBMがG450Cから抜けたために、TSMCの担当となった。そしてTSMCの担当だったCVD/熱酸化・洗浄はTSMCからCNSE担当に替わった。

図5 2015年8月時点のG450Cの組織図。黒字の企業(大学)名は責任者の出身母体 (出所:G450C)