第一原理シミュレーションは、Al、Cu、およびRuベースの化合物を含むさまざまな二元合金の有望な特性を示しているが、これらがそのまま最終的な候補というわけではない。

今日、これらの二元合金の抵抗率の挙動は、世界中の研究グループによって実験的に調査されている。2019年と2020年には、アジアとアメリカの研究グループが実験の進捗状況を報告した[3、4、5]。IITC 2021で、imecは、AlNiおよびAlCuを含む300mm基板を使用したアルミナイド薄膜の抵抗率に関する結果を報告した[6]。世界的な取り組みは、新しい導体の必要性を示すものでもあり、明確な進歩が見られたが、重要な材料の集積化の課題がまだ残っている。

  • いくつかの2元合金候補の抵抗挙動

    図3 – いくつかの2元合金候補の抵抗挙動

私たちのチームは、より複雑な三元化合物も検討した。ただし、三元の場合、可能な組み合わせの数が非常に多いため、第一原理に基づく事前スクリーニングでさえもはや不可能だった。ほとんどの三元化合物の特性は、金属であっても不明である。したがって、MAX相など、すでに研究されている特定の材料クラスを選択する必要がある。

MAX相は、遷移金属(M)、A族元素(IIIA、IVA、VA、VIA属元素)、およびX元素(炭素または窒素)で構成される層状構造である。これらのMAX相のいくつかは、純粋な金属元素よりも優れていると予想され、さらなる研究の機会を提供している[7、8]

  • MAX層金属

    図4 - MAX層金属(上)と配線候補となるいくつかのMAX化合物

  • 参照材料としてのCuおよびRuと安定したMAX相の性能指数

    図5 - 参照材料としてのCuおよびRuと安定したMAX相の性能指数。抵抗率スケーラビリティポテンシャル(ρ0×λ)と211化学量論(左)、ならびに312と413化学量論(右)の凝集エネルギー。薄い灰色の領域と濃い灰色の領域は、MAX相がそれぞれCuとRuに対して好ましい特性を持つと予想される領域を表している[8]

次のステップ:多層配線モジュールの開発と持続可能性評価

パターン形成した構造を持つテスト用チップは、実際の相互接続モジュールに合金を集積する複雑さを完全には把握できるわけではない。そのため、近い将来、imecの研究チームは次のステップに進む準備をしている。最も有望な配線材料候補を実際に相互接続モジュール構成材料として使ってみて、BEOLプロセスに関連する課題を見出そうとしている。

代替金属は、最も重要なローカル相互接続配線層への導入を、はるか先の選択肢として目指している。imecのBEOLロードマップでは、高アスペクト比の配線を実現するためにパターン形成が可能な金属を直接エッチングするセミダマシン相互接続配線モジュールを使用した実装することにしている[9]。上部の相互接続層については、Cuが引き続き選択される金属であると予想されることに注意していただきたい。

  • 多層相互接続配線構造の断面

    図6 - 二元合金を導体として使用し、耐熱性純金属ビアを使用した多層相互接続配線構造の断面(模式図)

これらのセミダマシンモジュールで選択された2成分および3成分化合物を実装すると、真の多層相互接続の課題が明らかになる。たとえば、フィルムの化学量論組成と表面酸化の制御が最初の課題であることがわかった。その後の実験では、金属のパターニングに必要なエッチング戦略を最適化することもできる。

将来的には、これらの研究活動は持続可能性評価とともに拡大していく。サプライチェーンのリスクとコストは探索段階の早い段階で評価できるが、プロセスフローの環境フットプリントを評価するには、さまざまなプロセスステップに関するより詳細な知識が必要である。これには、たとえば、新しい導体をエッチングするために必要な化学反応、必要なアニーリング手順、それらの形成に必要な副生成物などに関するより多くの洞察が含まれる。

結論

約5年前にimecによって開始された、将来の相互配線アプリケーションのための代替の二元および三元金属の探索は、世界的な関心を持つ新しい研究分野になった。この解説論文では、候補を絞り込んでランク付けするためのガイダンスを提供する独自の方法について説明した。この方法論は、2 つの主要な性能指数の計算から始まり、実験およびモデリング作業で補完されている。この方法を使用して探索したところ、いくつかの二元および三元 (MAX) 合金が有望な特性を示したので、これらについてさらに研究することにしている。

参考文献

[1] ‘Molybdenum as an alternative metal: thin film properties', V. Founta et al., IITC 2019;
[2] ‘Alternative metals: from ab initio screening to calibrated narrow line models',C. Adelmann et al., IITC 2018;
[3] ‘The search for the most conductive metal for narrow interconnect lines', (invited perspectives article; also: Editor's pick: "Featured Article")' D. Gall, J. Appl. Phys. 127, 050901 (2020);
[4] ‘Materials for interconnects', D. Gall et al., MRS Bulletin, October 2021;
[5] ‘Intermetallic compounds for interconnect metal beyond 3 nm technology node', J. Koike, IITC 2019;
[6] ‘Imec introduces intermetallics and airgaps in advanced interconnect metallizati on schemes', imec press release 2021;
[7] ‘Metallic ceramics for low resistivity interconnects: an ab initio insight',K. Sankaran et al., IITC 2018;
[8] ‘Ab initio screening of metallic MAX ceramics for advanced interconnect applications', K. Sankaran et al., Phys. Rev. Materials 5, 056002 – Published 24 May 2021;
[9] ‘Logic technology scaling options for 2nm and beyond', imec reading room 2021.

Geoffrey Pourtois
Geoffrey Pourtois
imec フェロー。2002年にベルギーのモンス=エノー大学で化学の博士号取得学位を取得後、2003年にimecに入社し、材料の原子モデリングの分野の研究グループを率いている。ナノ電子関連材料の原子論的シミュレーションを使用したモデリングと、複雑な材料ゲートスタックに焦点を当て、相互接続、磁気メモリ、新型メモリ、2Dマテリアル用の新しい金属候補の特定などで成果をあげている。
Christoph Adelmann
Christoph Adelmann
imecのサイエンティフィックディレクター。2002年にフランスのグルノーブル・アルプ大学で凝縮物質物理学の学位を取得し、仏CEA(原子力及び代替エネルギ―庁)を経て2006年にimecに入社。High-k誘電体、金属ゲート、不揮発性メモリの誘電体、III-Vトランジスタ、相互接続用の新規金属、2D材料解析など、多くの分野の材料とプロセス、特に相互配線(インターコネクト)材料の課題と取り組んできた。
Zsolt Tőkei
Zsolt Tőkei
imecナノインターコネクトのプログラムディレクターおよびimecフェロー。1997年にハンガリーのコシュート大学で博士号取得後、ドイツのマックスプランク研究所を経て1999年にimec入社。スケーリング、メタライゼーション、電気特性評価、モジュール統合、信頼性、システム面など、さまざまな相互配線(インターコネクト)の課題に取り組み続けている。