5,000をはるかに超える材料の組み合わせで導電性の二元合金は構成され、さらに多くの材料を組み合わせて三元合金が合成される。したがって、開発を加速し、意味のある選択をするためには、何らかのガイダンスが必要となる。たとえばバルクの抵抗率だけを見るのは狭すぎる。導体はある限られた領域(例えば厚みが極めて薄い場合)では、バルクではみられないより適切なふるまいをする可能性があるからである。
したがって、最も有望な材料を選択してランク付けするための最初のステップは、Cuに対してベンチマークする最も適切な性能指数を特定することである。imecの相互接続研究チームは、(1)凝集エネルギーと、(2)キャリアのバルク抵抗率と平均自由行程の積という2つの性能指数を提案することにした。
抵抗率×平均自由行程 - 小さな寸法での抵抗率の増加を予測する
将来の相互接続アプリケーションでは、金属のバルク抵抗率と金属内のキャリアの平均自由行程の両方を可能な限り低くする必要がある。キャリアの平均自由行程が小さいほど、スケーリングされた相互接続で発生する表面または粒界によるサイズ依存の散乱の影響を受けにくくなる。したがって、平均自由行程が小さいほど、相互接続ラインの寸法に対する抵抗率の依存性が小さくなることが予測される。
どちらのパラメータも重要な指標であるが、計算を簡単にするために、最初の選択する候補を減らすための性能指数としてバルク抵抗率と平均自由行程の積を使用することにする。将来の相互接続金属としての資格を得るには、バルク抵抗率が1.7μΩcm、平均自由行程が39nm(室温)のCuよりも優れている必要がある。
凝集エネルギー - 本質的な信頼性の指標として
2番目の性能指数である凝集エネルギーは、相互接続スキームにおける導体の信頼性を評価するための代理の指標として機能する。
相互接続配線の信頼性は、通常、2つの現象の影響を受ける。第1に、導体は、例えば大きな充電電流による金属イオンのドリフト、または熱による原子の拡散、または応力勾配を指すエレクトロマイグレーションの影響を受ける可能性がある。さらに、一部の金属は周囲の誘電体に拡散する傾向がある。バリアがないと、絶縁破壊につながる可能性がある。両方の現象は、金属原子が相互接続材料からどれだけ容易に引きはがすことができるかに依存している。これは、凝集エネルギーによって表現できる。Cuの凝集エネルギーは~4eVである。
両方の性能指数は、材料の電子構造の固体物理学の記述に基づく原子計算から導き出すことができ、これらの「第一原理」(注)シミュレーションの結果はベンチマークグラフで視覚化することができる。同等以上の凝集エネルギーとCuよりも低いバルク抵抗率×平均自由行程を持つ合金のみが、さらなる実験的な作業のために選択されることになる。
(注) 第一原理:最も基本的な原理という意味で、電子間、原子核間、および電子-原子核間のクーロン相互作用から出発し、量子力学の基本法則に立脚した電子状態理論。実験結果などを使わず、理論的に物質の諸性質を計算で求めるための原理。
この選択に進む前に、他の事柄も考慮する必要がある。たとえば、
- これらの合金は誘電体にどの程度吸着するか?
- これらの化合物は 熱力学的に 安定な相に存在するか?
- これらの安定した秩序相を可能にするためにアニーリングステップが必要な場合、その温度はBEOLプロセスと互換性があるか?
- 合金には有毒または希少な化合物が含まれているか?
- 材料費は高いか?
これらも考慮しつつ、材料科学へのさらなる洞察により、得られた候補のリストからいくつかの材料の組み合わせを選択することができる。
スケーリングの可能性をさらに評価するための実験的作業
第一原理ベースの候補合金リストは、理論的発見を検証するための300mmウェハでのさらなる実験作業の出発点である。得られたデータは、モデリング作業に使用され、小さな次元での導体の動作をよりよく理解するためにも使用される。
一連の実験では、研究者はさまざまな膜厚のブランケット薄膜を堆積させ、膜の抵抗率を測定する。2番目のシリーズでは、パターン化されたT字型構造(相互接続アプリケーションに見立てた構造)を備えたテストビークル(テスト目的の回路パターン搭載チップ)を作成して、狭い配線でのスケーリングの可能性を調査する。材料の組み合わせの中には、Cuよりも高いバルク抵抗率を持つものがある。候補リストに残るには、この値が高すぎない可能性があり、その抵抗率はCuの抵抗率よりもゆっくりと増加し、10nm(またはそれ以上)付近のクロスオーバーポイント(Cuの低効率が比較的高くなり始める寸法)を持つ必要がある。
参考文献
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[3] ‘The search for the most conductive metal for narrow interconnect lines', (invited perspectives article; also: Editor's pick: "Featured Article")' D. Gall, J. Appl. Phys. 127, 050901 (2020);
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[5] ‘Intermetallic compounds for interconnect metal beyond 3 nm technology node', J. Koike, IITC 2019;
[6] ‘Imec introduces intermetallics and airgaps in advanced interconnect metallizati on schemes', imec press release 2021;
[7] ‘Metallic ceramics for low resistivity interconnects: an ab initio insight',K. Sankaran et al., IITC 2018;
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[9] ‘Logic technology scaling options for 2nm and beyond', imec reading room 2021.
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Geoffrey Pourtois
imec フェロー。2002年にベルギーのモンス=エノー大学で化学の博士号取得学位を取得後、2003年にimecに入社し、材料の原子モデリングの分野の研究グループを率いている。ナノ電子関連材料の原子論的シミュレーションを使用したモデリングと、複雑な材料ゲートスタックに焦点を当て、相互接続、磁気メモリ、新型メモリ、2Dマテリアル用の新しい金属候補の特定などで成果をあげている。 |
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Christoph Adelmann
imecのサイエンティフィックディレクター。2002年にフランスのグルノーブル・アルプ大学で凝縮物質物理学の学位を取得し、仏CEA(原子力及び代替エネルギ―庁)を経て2006年にimecに入社。High-k誘電体、金属ゲート、不揮発性メモリの誘電体、III-Vトランジスタ、相互接続用の新規金属、2D材料解析など、多くの分野の材料とプロセス、特に相互配線(インターコネクト)材料の課題と取り組んできた。 |
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Zsolt Tőkei
imecナノインターコネクトのプログラムディレクターおよびimecフェロー。1997年にハンガリーのコシュート大学で博士号取得後、ドイツのマックスプランク研究所を経て1999年にimec入社。スケーリング、メタライゼーション、電気特性評価、モジュール統合、信頼性、システム面など、さまざまな相互配線(インターコネクト)の課題に取り組み続けている。 |