Samsungの小型有機ELパネルはシェア98.5%

IHS Markitの調べによると、2016年の携帯電話向け有機ELパネルのメーカー別の出荷数量シェアは、Samsungが98.5%とほぼ独占状態であったという。LG Displayや中国勢が参入しつつあるが、Samsungは有機ELに集中投資してライバルを寄せ付けない独走体制を敷こうとしている。Appleが今秋発売する予定である次世代iPhoneに搭載される有機ELパネルもSamsung製だが、スマートフォンとしての競合でもあることから、AppleはLG Displayやジャパンデイスプレイに開発・量産の要請を行っているといわれているものの、すでに技術開発力や生産能力で大きく先行しているSamsungに追い付くのは至難の業だ。

一方の2016年における携帯電話向けLTPS(低温poly-Si)TFT-LCDメーカーの出荷数量シェアは、ジャパンディスプレイが35.7%でトップとなり、2位のLG Displayが20.2%、3位はシャープが14.0%で入り、日韓勢が高いシェアを有している。しかし、中国勢がシェアを徐々に高めてきているのが現状であり、日本勢も安泰とはいえない状況となっている。

そして、2016年における携帯電話向けa-Si TFT-LCDメーカー出荷数量シェアは、BOEが23.3%、Tianma(天馬)が11.3%、以下、中国台湾の多数の液晶パネルメーカーがひしめき合う状況となっている。

2016年における携帯電話向けディスプレイを技術別に見たメーカーシェア(出荷数量べース) (出所:IHS)

有機ELを主導するSamsungとApple

IHS Markit Technologyディスプレイ部門シニアディレクターの早瀬宏氏

IHS Markit Technologyディスプレイ部門シニアディレクターの早瀬宏氏は中小型ディスプレイの市場およびアプリケーション動向について、「中小型FPD市場を牽引するスマートフォン市場に、2017年は新たにSamsung Galaxy S8が投入された。その特徴は、フレキシブル有機ELを採用しベゼルレス化を進めると共に18.5:9のワイドスクリーンを採用することで、従来のスマートフォンと異なるデザインコンセプトを実現した点にある。一方、Appleも次世代iPhoneにフレキシブル有機ELを採用する可能性が高いと見られており、その動向が注目を集める中、競合スマートフォンメーカーは2017年中盤にかけて新製品の投入に対し慎重な姿勢を見せている」と述べている。

つまり、スマートフォンメーカーやパネルメーカーは、今秋に発売が予定されているiPhoneの有機ELパネル搭載モデルの画質や形状や機能が人々にどのように受け止められるか(有機ELパネルが爆発的な人気を得るのか、それとも不発に終わるのか)について様子見状態だということだ。

また同氏は、「有機ELをスマートフォン市場のトップ2ブランドが採用する事で、2017年の後半は、フレキシブル有機ELが急激に出荷を伸ばす見込みであると共に、競合スマートフォンメーカーも年末商戦に向けて新製品の立ち上げが見込まれており、その点で、2017年の中小型FPD市場は第4四半期偏重になると見込まれる」と、Appleの一挙手一投足に注目が集まっていることを強調するほか、「トップ2ブランドを追撃する中国スマートフォンメーカーは、調達し易くなった高解像度のLTPS TFT-LCDの購入数量を伸ばしており、これに併せるように中国のFPDメーカーもLTPS TFT-LCDの出荷を伸ばしているほか、タッチパネルとの一体化も進む事で高付加価値化が進み、フレキシブル有機ELの出荷数量の増大とも相まって、2017年の携帯電話向けFPD市場は極めて高い出荷金額の伸びが期待される見通しである」と、市場全体としては、好調が期待できるとした。

さらに、「これまでのスマートフォン以外の中小型FPDアプリケーション市場は、は高性能かつ多機能なスマートフォンに需要を浸食されてきたといえるが、2017年は一部のアプリに復調の兆しが見えることから、着実に成長を続ける車載モニタ用TFT-LCDとともに中小型FPD市場の底上げ要因となることが期待がされる」と、スマートフォン以外の動きも好調であるとするが、その成長の多くは有機ELが担うことから、依然として有機EL市場を独占するSamsungが中小型FPD市場での主役の座を固める動きを強めることになるとする。

加えて、着実に成長を続けているとする車載中小型ディスプレイ市場については、「車載モニタ市場が安定的かつ持続的な成長を維持している。中でも2017年に発表された新型車からは、車載モニタの高精細・大画面・ワイドスクリーン化が本格的に動き始めた。これに伴い車載モニタFPDの出荷予測は、大画面化・高精細化を強めた予測修正を加えると共に、数量規模も上振れする予測見直しとなった」とするほか、「ハイエンド車でデュアルディスプレイを採用する傾向が強まり、CID((Center Information Display)やクラスタ用ディスプレイの予測を上方修正したほか、電子ミラーは本格的な立ち上がりの予測をするまでには至っていないものの、長期的には2億枚を上回るものと見込まれる」とし、車載モニタ用としての有機ELに対する需要は限定的であるとの見通しを示している。

なお、スマートフォン用FPDでは、18:9のワイドスクリーン化が急速に進むトレンドが生まれつつあり、それに比例した画面サイズの大型化も進む期待できるようになるという。ただし、同氏は、高い成長性が期待される有機ELだが、技術的な課題や急激過ぎる生産量の拡大にはリスクや反作用も懸念すべきであると指摘したほか、今後、スマートフォンで主流となる見込みの18:9ワイドスクリーンは生産性に課題があるとも指摘しており、技術的先端性を一般ユーザーがどの程度受け入れるのか、今後のトレンドを占う上でも、次世代iPhoneの動きを注視する必要があるとした。

(次回は9月14日に掲載予定です)