図1 JOLED代表取締役CTO兼CQO(技術および品質最高責任者)の田窪米治氏

今回のディスプレイ産業フォーラムの目玉は、JOLED代表取締役CTO兼CQO(技術および品質最高責任者)である田窪米治氏による「JOLEDの技術開発と事業展開-RGB印刷OLED事業化の取り組み」という招待講演とディスプレイの展示であった。田窪氏は、パナソニックの出身で、JOLEDの研究開発を陣頭指揮している。

JOLEDは、2015年にパナソニックとソニーの開発部隊を統合した260名ほどの有機ELディスプレイに関する技術者集団で、研究開発に特化しており売上高はゼロである。2016年9月に石川県のJDI(ジャパンディスプレイ)工場内に第4.5世代パイロットラインを設置し。2017年4月より21.6型4Kディスプレイのサンプル出荷を開始。現在は本格的な事業化に向けた開発を進めている段階にある。

有機EL(OLED)の製造法には、真空蒸着による方法と印刷による方法の2種類がある。先行する蒸着法は、小型および大型パネル市場にそれぞれ異なる技術で製品導入がなされ、すでにビジネスとして確立している。小型高精細パネルにはFMM(Fine Metal Mask:微細金属マスク)を用いてRBG(赤青緑の3原色)有機ELをSBS(Side by Side隣接)で独立に形成し発光させる方式が採用され、Samsungが市場をほぼ独占しているが、LG Displayや中国勢も後を追って参入しつつある。大型パネルには、白色有機ELをベタ蒸着し、その白色光をカラーフィルタを通してカラー表示する方式が採用され、LG Displayが市場をほぼ独占している。東芝、パナソニック、ソニー各社が2017年前半に発売した有機ELテレビのパネルはすべてLG Display製である。また、今秋発売される予定の次世代iPhoneに採用されると言われている小型有機ELパネルはSamsung製である。

印刷方式に有機ELに賭けるJOLED

これに対して、JOLEDは、マスクを用いず、高価な有機材料の使用効率が極めて高く、サイズ拡張性に優れた印刷方式(図2の右)を選択し、リソースを集中し、世界初の印刷OLEDの実現をめざして研究を続けている。JOLEDは、印刷法の実用化に必要な4つの技術要素、つまりデバイス技術、プロセス技術、材料技術、装置技術をすべて保有しており(図3)、これらの要素の擦る合わせにより印刷OLEDの実現を目指している。

図2 OLED形成方式の比較 (出所:JOLED)

図3 印刷方式量産化に向けた取り組み (出所:JOLED)

すでにJDI石川工場石川研究開発センター(図4)内にG4.5世代(730mm×920mm)基板を用いたEL工程からモジュール工程までの一貫生産が可能なパイロットラインを2016年9月に稼働させ、10~30型製品(精細度~220ppi)の生産をはじめているほか、2017年11月より21.6型4Kディスプレイの量産出荷を予定しているとする。

図4 ジャパンディスプレイ石川工場内の石川技術開発センター (出所:JOLED)

なお、会場では、21.6型と19.3型の4Kディスプレイ、12型フレキシブルシートディスプレイの実機展示が行われていたことを補足しておく。

(次回は8月24日に掲載予定です)